きいろいゾウ

著者 :
  • 小学館
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感想 : 367
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  • Amazon.co.jp ・本 (434ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093861625

感想・レビュー・書評

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  • 田舎で暮らすツマとムコさん。
    二人ののんびりで、暖かな毎日。
    でも、ムコさんには、背中に大きな鳥の絵があった。

    クスッと笑って、ぷっと吹き出し、
    そして泣いた。

    前半の二人の暮らしぶりが、ほのぼのとしていて、とっても魅力的でした。
    ツマの不思議っぷりが微笑ましく、それをまるごと受け止めているようなムコさんの様子が、いいな~と思っていました。

    後半に、大きな展開があることは知っていて、ちょっと覚悟して読み進めていたのですが、
    切なくて、悲しくて、でもあったかくて。
    誰にでもあるのかもしれない秘密、それを乗り越えて、また二人がたどり着いた、もっともっと暖かな日々。
    鼻の奥が、何度も何度もツーンとしました。


    前回読んだ西加奈子さんの『炎上する君』
    今一つ入り込めず、今では内容も覚えていないという。
    でも、これは、ホントに良かった。
    また別の作品も、読んでみようと思います。


    映画も見たいな。

    今回は、図書館で借りた本ですが、手に入れようと思います。
    そして、近いうちにまた、読み返そうと思います。

    とてもいい本でした。

    お気に入り本ベスト3、更新決定です。

  • 最初はちょっと入り込みずらくて、ちょっともしかしたら最後まで読むのはしんどい感じかも・・・・
    と、思っていたのが、何故か途中からたんたんと進む日常の描写に個性的な登場人物と、関西のりな面白さが加わって自然とページをめくる手が止まらなくなていた。

    そして中盤から最後にかけて漂う切なさに胸が締め付けられた。
    タイトルからは思いおよばなかったけど、この本って究極の恋愛小説って言っても過言じゃないよね??

    沢山いる個性的な登場人物の中でも大地君が好き。
    あの語尾に「わかる?わかんないよね。」という癖が好き。

  • 結婚とともに東京から田舎に越してきたツマとムコ。
    ツマは草や木や動物の声を聞き、幼い頃に〝置いてきた〟ことのある小さな心臓のためにものすごく驚かないように気をつけながら、少女のように世界の輝かしさに振り回されて生活していた。
    ムコは作家をしつつ、田舎の老人ホームしらかばで事務などの仕事をして、恐ろしいくらい毎日変わらないのに全然違う景色の鮮やかさにたじろぎながら、そこに溶け込むツマに更に眩しさを感じながら自分の書くものに向き合っていた。
    二人の生活には優しくお節介で癖のあるご近所さんとの関わりも加わり、幸せで楽しくて、そうして過ぎて行くのだと思い込むようだった。それに水をさした一通の手紙。
    二人はお互いの過去に、これからのための覚悟を持つために、向き合いきれなかったものと見つめ合うことになる。

    ご近所さんの一人の不登校でお婆さんのお家に厄介になっていた少年が学校に戻るとき、ツマに渡した手紙に繰り返された〝わかる?わからないよね。〟の言葉の優しさと切なさがとても好きだと思った。

    • HNGSKさん
      初めまして。素敵なレビューなのでコメントさせてください。
      大地君の手紙、よかったですねえ。「わかる?わからないよね」と何度も書かれているあの...
      初めまして。素敵なレビューなのでコメントさせてください。
      大地君の手紙、よかったですねえ。「わかる?わからないよね」と何度も書かれているあの手紙。
      実際に東京でムコさんと出会ったときも、彼はその言葉を繰り返す。
      耳に残って、そして切なくなる言葉でした。
      2013/05/29
    • HNGSKさん
      akitukiyukaさん。こんにちは。こちらこそ、コメントありがとうございますー。
      アレチさんも切なかったですねー。いつもチャック開けて...
      akitukiyukaさん。こんにちは。こちらこそ、コメントありがとうございますー。
      アレチさんも切なかったですねー。いつもチャック開けているじいさんなだけじゃなかったっていう・・・
      すれ違うけれども、元に戻っていく。それも1Q84の世界と似ているなあと感じました。私はタマルさんがすきです。
      2013/05/31
  • 「色」のイメージがすごく鮮烈で、読んでいて感激のため息が出てしまうような描写がいくつもありました。脳裏にというよりページ上の文字という記号自体に強烈な「色」があって、それにつられて匂いや感触が呼び起こされてくる感覚。絵本を読んでるみたい!こんなの初めてでした。
    次々と溢れてくる庭の草木の緑や、虹色の鳥や、クレヨンのオレンジ、熟れたトマトの赤。
    同じ青でも夏の海の青、秋の海の青、ツマが着るカーディガンの青、蚊帳の青、全部が違うことがありありと解る。
    同時に、ムコとツマという夫婦が季節の移り変わりと共に魂をゆっくりと再生してゆく、その大きな愛がとても尊く静かな海のようで美しい。泣きそうになりました。
    ムコさんが最後に大きな字で書いたことがとても、とてもよかったです。

  • スキンヘッドで、背中に鮮やかな錦の鳥の彫り物を持つ小説家「ムコ」さんと、人よりも小さい心臓を持ち、月が満ちると心配になる、動植物の声がきこえる「ツマ」。
    最初は田舎暮らしをはじめた夫婦の、少し奇妙でのんびりとして日常生活を描いた物語なのかと思った。
    いつもズボンのチャックが全開の老人「アレチ」さんや、登校拒否児の「大地」くん、野良犬の「カンユ」さんやチャボの「コソク」など、ユーモアたっぷりの人々が織り成す田園風景は不思議な彩りに満ちている。
    平坦な物語が、途中から、ムコさんとツマの関係が痛々しく、ひどくせつないものへと変化していく。
    自分の居場所を模索しあっていく互いの姿は、それぞれちょっと度が外れているのに胸に迫る。
    ラストのファンタジーに、なんだか泣きたいような気分になった。
    言葉のひとつひとつ、エピソードのひとつひとつが美しい。
    繰り返し詠われる一篇の詩が、特に沁みた。

  • だいぶ前に観た実写映画の、風景と、宮崎あおいの演技が忘れられなくていまさら原作を読む。著者の西加奈子さん本人のことは好きなんだけど、著作が独特の文体であまり得意ではないなとかねてより感じていて、本作を読んでもそれは変わらなかった笑
    とはいえ面白くなかったわけではなくて、感情的でぐわぐわ押し寄せるようなツマのパートは、ムコ(が書く日記の)パートよりも日記のようで、「面白い」と評するのも違う感じ。映画のほうがお話として一本通っているというか伝わってくるものが多かったので、「いまさら」読む形で別によかったな、という感想。

  • 大切に思う人があなたにもいるならば、その人を思って読んでみてください。
    お互いこんな風に思いあえる人に出逢えたら素敵だな。

  • 東京からやってきた若い夫婦。ムコは作家、ツマは感受性豊か。
    田舎ならではの動物や植物のおしゃべり、近所づきあいを楽しむ彼ら。のんびりと過ごすようで、彼らは影のような過去を抱えている。

    もろくてこわれそうになる関係だけど、二人は繋がっていられる。出会う前から二人は同じ絵本が好きで、過去を超えてお互いを想い合う。

    ------------------------------

    何度も読み返してる作品。
    なぜだろう。今回はツマさんの感受性がとてもメンヘラチックに映ってしまったというか、ムコさんとツマさんのキケンな共依存のように思えた。それが愛だ、と言われればそれまでなんだけど(愛って便利な言葉だ)、とても危うい気がした。

    ムコさんはない姉ちゃんの自死を見たトラウマで、危うい女性に惹かれるようになったのかもしれない。鳥を描く女性しかり、ツマさんしかり。
    ツマさんもツマさんで、心臓が悪いのにそんな生活していて大丈夫なのかと唸ってしまった。
    まあ、大丈夫なんだろう。きっと愛の力なんだろう。パワーオブラブ。

    前に何回か読んだときはお気に入りの作品だったはずなのに。ひねくれてしまったのだろうか。
    大地君がすごくいいひと。卓越してる。

  • 心にシンと染みてくる本でした。
    やるせない気持ち。

    279ページから280ページのやりとりが、とても痛々しくて印象的です。

  • 再読。
    この本を読むと村の情景が驚くほど心にすとん、と降ってきて 心が穏やかになる。
    目の前にいる人を愛そう と、心から思えるのです。

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著者プロフィール

1977年イラン・テヘラン生まれ。2004年『あおい』で、デビュー。07年『通天閣』で「織田作之助賞」、13年『ふくわらい』で「河合隼雄賞」を、15年『サラバ!』で「直木賞」を受賞した。その他著書に、『さくら』『漁港の肉子ちゃん』『舞台』『まく子』『i』などがある。23年に刊行した初のノンフィクション『くもをさがす』が話題となった。

西加奈子の作品

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