- Amazon.co.jp ・本 (434ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093861625
感想・レビュー・書評
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結婚とともに東京から田舎に越してきたツマとムコ。
ツマは草や木や動物の声を聞き、幼い頃に〝置いてきた〟ことのある小さな心臓のためにものすごく驚かないように気をつけながら、少女のように世界の輝かしさに振り回されて生活していた。
ムコは作家をしつつ、田舎の老人ホームしらかばで事務などの仕事をして、恐ろしいくらい毎日変わらないのに全然違う景色の鮮やかさにたじろぎながら、そこに溶け込むツマに更に眩しさを感じながら自分の書くものに向き合っていた。
二人の生活には優しくお節介で癖のあるご近所さんとの関わりも加わり、幸せで楽しくて、そうして過ぎて行くのだと思い込むようだった。それに水をさした一通の手紙。
二人はお互いの過去に、これからのための覚悟を持つために、向き合いきれなかったものと見つめ合うことになる。
ご近所さんの一人の不登校でお婆さんのお家に厄介になっていた少年が学校に戻るとき、ツマに渡した手紙に繰り返された〝わかる?わからないよね。〟の言葉の優しさと切なさがとても好きだと思った。-
初めまして。素敵なレビューなのでコメントさせてください。
大地君の手紙、よかったですねえ。「わかる?わからないよね」と何度も書かれているあの...初めまして。素敵なレビューなのでコメントさせてください。
大地君の手紙、よかったですねえ。「わかる?わからないよね」と何度も書かれているあの手紙。
実際に東京でムコさんと出会ったときも、彼はその言葉を繰り返す。
耳に残って、そして切なくなる言葉でした。2013/05/29 -
akitukiyukaさん。こんにちは。こちらこそ、コメントありがとうございますー。
アレチさんも切なかったですねー。いつもチャック開けて...akitukiyukaさん。こんにちは。こちらこそ、コメントありがとうございますー。
アレチさんも切なかったですねー。いつもチャック開けているじいさんなだけじゃなかったっていう・・・
すれ違うけれども、元に戻っていく。それも1Q84の世界と似ているなあと感じました。私はタマルさんがすきです。2013/05/31
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「色」のイメージがすごく鮮烈で、読んでいて感激のため息が出てしまうような描写がいくつもありました。脳裏にというよりページ上の文字という記号自体に強烈な「色」があって、それにつられて匂いや感触が呼び起こされてくる感覚。絵本を読んでるみたい!こんなの初めてでした。
次々と溢れてくる庭の草木の緑や、虹色の鳥や、クレヨンのオレンジ、熟れたトマトの赤。
同じ青でも夏の海の青、秋の海の青、ツマが着るカーディガンの青、蚊帳の青、全部が違うことがありありと解る。
同時に、ムコとツマという夫婦が季節の移り変わりと共に魂をゆっくりと再生してゆく、その大きな愛がとても尊く静かな海のようで美しい。泣きそうになりました。
ムコさんが最後に大きな字で書いたことがとても、とてもよかったです。 -
スキンヘッドで、背中に鮮やかな錦の鳥の彫り物を持つ小説家「ムコ」さんと、人よりも小さい心臓を持ち、月が満ちると心配になる、動植物の声がきこえる「ツマ」。
最初は田舎暮らしをはじめた夫婦の、少し奇妙でのんびりとして日常生活を描いた物語なのかと思った。
いつもズボンのチャックが全開の老人「アレチ」さんや、登校拒否児の「大地」くん、野良犬の「カンユ」さんやチャボの「コソク」など、ユーモアたっぷりの人々が織り成す田園風景は不思議な彩りに満ちている。
平坦な物語が、途中から、ムコさんとツマの関係が痛々しく、ひどくせつないものへと変化していく。
自分の居場所を模索しあっていく互いの姿は、それぞれちょっと度が外れているのに胸に迫る。
ラストのファンタジーに、なんだか泣きたいような気分になった。
言葉のひとつひとつ、エピソードのひとつひとつが美しい。
繰り返し詠われる一篇の詩が、特に沁みた。 -
大切に思う人があなたにもいるならば、その人を思って読んでみてください。
お互いこんな風に思いあえる人に出逢えたら素敵だな。 -
心にシンと染みてくる本でした。
やるせない気持ち。
279ページから280ページのやりとりが、とても痛々しくて印象的です。 -
再読。
この本を読むと村の情景が驚くほど心にすとん、と降ってきて 心が穏やかになる。
目の前にいる人を愛そう と、心から思えるのです。