- Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094087642
作品紹介・あらすじ
作家自身が「秘密」を語る。待望の新訳刊行
「われわれ三文文士の多くもまた、及ばずながら言葉に意を注ぎ、物語を紙の上に紡ぎだす技と術に心を砕いている。本書のなかで、私はいかにして『書くことについて』の技と術に通じるようになったか、いま何を知っているのか、どうやって知ったのかを、できるだけ簡潔に語ろうと思っている。テーマは私の本業であり、言葉である」(本文より)
ベストセラーを次から次へと生み出す、アメリカを代表する作家が、自らの「書くことについて」を解き明かしした自伝的文章読本。作家になるまでの苦闘物語から始まり、ドラッグとアルコール漬けの作家生活を語る半自叙伝の回想。書くために必要となる基本的なスキルの開陳。いいものを書くための著者独自の魔法の技。そして「書くことと」と「生きること」を重ね合わせる作者自身の人生観まで。ひとりの作家の「秘密」がそこかしこに語られるドキュメンタリー。
2001年に「小説作法」として翻訳されたスティーヴン・キングの名著を、新たに平明で簡潔な文章で訳した新訳版。新たに巻末には著者が2001年から2009年にかけて読んだ本の中からベスト80冊を選んだリストを掲載。
【編集担当からのおすすめ情報】
本書のカバー写真は、作家カート・ヴォネガット夫人でもあるカメラマン、ジル・クレメンツさん撮影によるもので、ひじょうに貴重な著者の執筆風景。
感想・レビュー・書評
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小説執筆の技術書として読み始めたので最初の「履歴書」(自身の人生の振り返り)になかなか入り込めなかったのだが、「小説を書くための道具箱」(作法や技術、心構え)を説明する章での他作家への言及に笑い、だんだん読むペースが上がっていった。
その後自身の直感的な部分の言語化に苦労し執筆を止めた章「書くことについて」と、止めている間に命を落としそうになった事故についての章「生きることについて」を読み
「履歴書」から読んできた著者のモノを書くことへの姿勢に繋がり、心が震えた。
キングが生きててよかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ベストセラー作家・スティーブン・キングが、題名どおり「書くことについて」書いた半自伝+文章読本。
何年も前から読みたいと思っていながら後回しになっていた本書を読んだのは、先日読んだミチコ・カクタニの『エクス・リブリス』で取り上げられていたから。冒頭から、同書で高く評価されていたメアリー・カーの『うそつきくらぶ』が出てきたり、巻末のブックリストにも重複する本が結構ある。
ホラーが苦手なので、キングの作品で読んだことがあるのはホラーではない『スタンド・バイ・ミー』や『刑務所のリタ・ヘイワース』などの中編が何編か。読んだ作品はいずれもこなれていて、面白かった記憶がある。
アメリカの労働者階級の母子家庭で育った恵まれた環境とはほど遠い幼少時代や、人気作家になるまでに経験した職業の過酷さ、そして具体的な文章指南まで、充実した内容が詰まっている(本書執筆途中に交通事故で負った大怪我についての記述が痛ましい)。
ただ、やはり特に好きな作家が書いたものではないからか、心を動かされるとまでは言い難く、星1/2はおまけです。 -
資料を兼ねて駆け足で読んだので、感想をメモ書き程度に。
スティーヴン・キングが「小説を書くことについて」の原稿をまとめて発表した本。もともと小説作法的なものを書く気はなかったそうだが、親交のあるエィミ・タンに勧められたこともあり、出版する運びとなったとのこと。
前半生を紹介する「履歴書」からいきなり強烈である。悪意に満ちたシッターや、トラウマ必至の思い出をさらりと語ってのけるお母様など、キング作品に登場するようなキャラクターに彩られている。もっとも、これはリアルにそういう感じだったのではなくて、キング先生のフィルターを通して語られているものだから、余計そう見えるのかもしれない。「物書きは実際に知ったものしか書けない」といわれることもあるが、本当にこんなキャラクターに囲まれていたのなら、書くのが好きなことに加えて、ネタとしてはけ口にするというサイクルに組み込まないとやってられないんじゃないかとも感じる。
また、小説を書くにあたって必要なことを記した「道具箱」と表題の「書くことについて」は、前述のとおり、小説作法について書く気のなかったキング先生の悪態が炸裂する小説指南ではあるが、「語彙を増やせ」「使いこなせない副詞ならやめておけ」など、意外にも実践的で的確だった。語り口はべらんめえ調だけど、小説家をはじめ著述業の人がほぼ間違いなく口にする王道のアドバイス「たくさん読んで、たくさん書け」のほかも、そんなに無茶なことは書いていない。そのうえ、ご自身が初めて書いた地元新聞のスポーツ記事や実際に書いた小説の原稿直しについても、実例を挙げて実に親切にご教授いただける。
キング先生がひどい交通事故に遭って重傷を負ったことについて書かれた1編もなかなか強烈だった。キングを轢いた運転手は累犯で事故慣れしている結構な難物なのだが、先生のフィルターを通っているので、これまたキング作品的にまともじゃない感じが激増している。それにしても、復帰できたのはかなりの幸運ではないのか。
巻末には、先生おすすめのブックリストもついているので、キング作品を作ったものを知りたいかたにはおすすめ。 -
私は書くために生まれてきたのだ。
(中略)
ものを書くのは(略)読む者の人生を豊かにし、同時に書く者の人生も豊かにするためだ。立ち上がり、力をつけ、乗り越えるためだ。幸せになるためだ。おわかりいただけるだろうか。幸せになるためなのだ。本書のかなりの部分は私がどうやってそれを学んだかということに費やされている。そして、その多くはどうすればもっと巧く書けるかということについての記述である。残りは(ここがいちばん大事なところだが)許可証だ。あなたは書けるし、書くべきである。最初の一歩を踏み出す勇気があれば、書いていける。書くということは魔法であり、すべての創造的な芸術と同様、命の水である。その水に値札はついていない。飲み放題だ。
腹いっぱい飲めばいい。(本文抜粋)
とても熱いエールです。キングさん。 -
巨匠スティーブン・キングによる小説のお作法について書かれた本。
前半はキングの自伝、中盤以降から文章の書き方などに言及しているが、いまいち頭に入ってこない(おそらく私自身がキングの著作を読んだことがないのと、英語と日本語の違いによるものだと思われる)。
巻末にはキングオススメのブックリストが付いており、日本語訳されている作品も多くあるので、興味がありそうな本から読んでみるのも良いかもしれない。 -
先日読了した『読んだら忘れない読書術』で紹介されていたため、興味を持ち読んでみました。
スティーヴン・キングの半生が、様々なエピソードを通して、面白おかしく書かれていました。また、主題の『書くことについて』も実際の文章などを例にあげ、分かりやすく解説されていました。
中でも1番感銘を受けたのは、『作家になりたいのなら、絶対にしなければならないことがふたつある。たくさん読み、たくさん書くことだ。』というところ。キングでさえ、行き着くところはそこなのかと驚きました。
作家になりたいわけではありませんが、たくさん読み、たくさん書いて、これからの人生を豊かなものにしたいと思います。 -
スティーヴン・キングがスティーヴン・キング節で語るだけで既に読み物として面白いのでズルい。
巻末には多分読み物として面白い本としてだろう、私も面白いと思う本のリストがズラリと並んでいるので殿堂入りである(アバラット入らないの?) 。
前にヴォネガットの文章教室の本を読んだ時に「コネを利用したくない物書き志望者」の話を聞いて、そんな奴がいるのか⁈と思ったのだが、案外いるのかもしれない。
ル=グインの文体の舵を取れを投げているのだが、あの高みからヴォネガットのある種のねじくれである職業としての売文の話の、丁度間をとった、情緒的に優しい小説教室がこの本だと思う。
個人的に沢山読むこと、沢山書くこと、「犬は存在しない」、が為になった。
文書をこねくり回して芸当をやってみせるには、私は適度に歳をとりすぎてしまって、自分の歌を歌うしかない。まあスティーヴン・キングもある程度はそういう意見かと感じたが、彼なら「丁寧に、真面目に、簡潔に」とか言うのだろうと思った。 -
「小説を書くためのハウツー本ではない
よく読んでよく書いて、極力無駄を省いて装飾を取り払った言葉を連ねて文章を紡ぐだけ」
そう嘯くスティーヴン・キングの、創作に対する取り組みを読めるだけでも価値がある本と言える。
本人は「自叙伝の類ではない」とことわっているが、前段は幼少期から青春時代と小説を生業にするようになった頃、次から次へと創作を続けながらアルコールとドラッグに浸るようになった壮年期まで、キングらしいシニカルでユーモアのある筆致で描かれていて興味深い。
小説を書く上での各論というか具体的な作法についての解説の後、不慮の事故で大怪我をして復活するまでのは生々しい顛末も記されており、前段の履歴書的な記述と最後の怪我の顛末に小説作法が挟まれたスティーヴン・キングの半生バーガーといった趣きの、味のある本になっている。
しかし、何か大きなことをしでかす人には見えない力が働くのだなぁと思わざるを得ない。そんな感想を持った。 -
スティーヴン・キングの作品を一つも読んだことがない自分が最初に手に取ったのがこの一冊。スタンドバイミーの映画とかは観たことあるから……。
村上春樹のエッセイを読んだときにも思ったけど、このレベルの著名人になるともう「書くこと=人生」だから、作中で生い立ちを語ることはごく自然なことなんでしょうね。でもって、作者がすぐ側にいて語りかけてくれているように感じるから、なんだか親しみが湧いてしまうところも似てる。この人は物言いがハッキリしてるからちょっと怖いって印象だったけど…笑
小説家として生きていきたいのなら、とにかくたくさん読んでたくさん書くこと。それに尽きる。シンプルでいてクソほど難しい。けど、やり甲斐ありますからね。きっと。とにもかくにも歯応えがあって、全てを噛み砕ききれなかったんでいつか必ずまた読み返します。