- Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
- / ISBN・EAN: 9784098253456
作品紹介・あらすじ
20世紀最強の劇薬を世界は再び飲みこんだ
効能バツグン、だからあぶない、やめられない。
20世紀の劇薬ファシズムを「正しく恐れる」ための白熱対談!
◎“産みの親”ムッソリーニは何した人?
◎ヒトラーは日本人を蔑んでいた?
◎戦前日本でファシズムが「未完」に終わった理由。
◎官僚制と折り合いがいいのはなぜ?
◎ジブリ映画『風立ちぬ』に隠されたファシズム。
◎安倍政権はファシズムなのか?
日本人にとってファシズムは、ヒトラーのナチズムだけでなく、民族主義や純血主義、全体主義、ナショナリズム、独裁などとも混同されてしまっている――佐藤優
いまの時代は石原完爾風にいえば「資本主義最終危機」。ファシズムの本当の出番はこれからだ――片山杜秀
【編集担当からのおすすめ情報】
『平成史』に続く、「知の巨人」対談の第二弾。今回のテーマはファシズムです。かねてより佐藤優氏は、片山杜秀氏の『未完のファシズム』を絶賛していました。
資源に乏しく、周囲を海に囲まれた「持たざる国」である日本を、「持てる国」にするために、一部の軍人や指導者はファシズムという劇薬を手にとった。しかし、天皇制や明治憲法という枷(かせ)によってそれは「未完」に終わってしまう――同書の大筋なあらすじです。
では、「未完」に終わったファシズムは、戦後どうなったか。それを培養した精神は、日本人に内在し続けているのではないか。本書では、そうした見立てが語られます。佐藤氏は、災害時に自発的に集うボランティアたちを見て、日本にも何かの拍子に「翼賛体制」が成立しうる可能性を説きます。
資本主義が崩壊したとき、ファシズムは姿を現します。片山氏は、第二次世界大戦前と現代の国際情勢の相関を指摘しています。「ファシズムの出番はこれからだ」と片山氏は、本書で警鐘を鳴らしています
危機の時代という意味では、もちろん日本も例外ではありません。ただし、日本人はあまりに理解が乏しい。ファシズムとナチズムを混同する方も多い。憂いだけはあっても、正しい知識がないと備えにはなりません。ファシズムを正しく恐れるためにも、手に取ってほしい一冊です。
感想・レビュー・書評
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「プラグマティックでとてもいいかげんなものがファシズム」という片山先生の説明がとても説得力がある。これに尽きると思う。
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ファシズムとナチズムを同一視していたため目から鱗だった。日本史でしか触れてこなかったファシズムという言葉の意義を正確に知ることができた。体制ではなく情況を表す言葉という説明はわかりやすかった。世界的に資本主義の行き詰まりを実感している状態でファシズムの出番がこれからやってくるかもしれない。来るべき時代に備えるための知識を身につけられる一冊
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h10-図書館ー2/19 期限3/5 読了2/27 返却2/28
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これまで「ファシズム」なるものをいかに曖昧に理解していたのかを痛感しました。ファシズム朋全体主義とナチズムとがごっちゃになっていました。行きすぎた資本主義を是正する劇薬として、また、日本は未完のファシズムであったことなど、新たな知見を多く得られました。
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●マルクス経済学とマルクス主義経済学。イタリア型ファシズムとドイツのナチズムを区別すること。ナチズムは荒唐無稽なイデオロギー。
●ファッショは杖。複数形でファッシ。単数では折れるが複数なら折れない。まさに三本の矢。
●日本は束ねとしての天皇制
●官僚に幻想を持ちすぎた城山三郎。
●2001年に内閣府ができた。各官庁の上に立つ全体の代表。ただし、権力者に全権が集まり好き放題される恐れがある。
●民主的な政権を求めて安倍政権を否定したのに、立憲民主党にもファシズム的な傾向が強いように感じる。
●プロレタリアートは、資本主義社会で、生産手段を持たず、労働力だけを頼りに生きる階級。
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何となく知っている気になっているファシズムという言葉が持つ意味について、ファシズムについての知見のある2人が対談する形式。
ただ、我田引水というか、自分のフィールドにおいては饒舌になるものの、専門でない部分についてはただの進行役に徹してしまい、話が広がっていかないのは不満。
片山氏はファシズムについては知見があるものの、現在の世界情勢についての理解が佐藤氏に及ばない部分が見られ、すぐにサブカルの概念に逃げてしまい、お互いの意見を戦わす所まで行っていないのが残念である。もう少し自国についての勉強を求む。
とはいえ、ムッソリーニに関する部分についてはさすがに片山氏も専門であることもあって中々読み応えがあった。
寧ろここに焦点を絞って話をしても良かったのでは?
オール沖縄がリベラルだとはわかっていても、経済エリートという認識はあまり持っていなかったのではないだろうか。
尤もそれは沖縄の人も含め、極一部のエリート左派以外には気づいていないのかも知れないが。 -
この2人の対談集では、少し前に読んだ『平成史』がとてもよかった。今回も質の高い議論が展開されていて、読み応えがある。
広い分野のたくさんの人と対談集を編んでいる佐藤優さんだが、その中にあって、片山杜秀氏とはとくに相性がよいのだと思う。
「ファシズムとは何か?」と改めて聞かれたら、あなたは何と答えるだろう? ファシズムの本質は、わかっているようで意外にわかっていない。
《現代の日本では、ファシズムという言葉に手あかがついてしまって、ほぼ無定義に使われてしまっていますね。
ヒトラーのナチズムだけでなく、民族主義や純血主義、全体主義、ナショナリズム、独裁などとも混同されてしまっている。あるいは、ファシズムを自由主義や共産主義と対立する極右の国家主義的な政治形態と考える人もいる(佐藤さんの発言)》
そうした現状をふまえ、本書は「そもそもファシズムとは何か?」というところから説き起こされる。ゆえに、「ファシズム入門」としても役に立つ。
また、戦前・戦中の日独伊三国のファシズムを比較検討し、その違いを浮き彫りにする。
そこでは、軍国日本のファシズムを分析して司馬遼太郎賞を得た片山氏の著作『未完のファシズム――「持たざる国」日本の運命』が、対話の〝導きの糸〟となる。
そして、戦後日本社会に潜むファシズムの残滓や、プーチン、トランプらに象徴される、21世紀の国際社会に見るファシズムの萌芽についても論じられる。
というと、「戦前の〝軍靴の響き〟がいまそこに……」と、危機感を煽り立てるサヨ的論調を想像するかもしれない。が、両対談者のパーソナリティからして、そのような通りいっぺんの内容にはならない。
なにしろ、第1章が「ファシズムは悪なのか」という挑発的タイトルになっているくらいで、ファシズムのプラス面(!)にも触れられているのだから。
とはいえ、ファシズムが危険な劇薬であるのは確かで、世に警鐘を鳴らす一書ではあるのだが……。 -
大変勉強になった。
平成史を読んだ後だったので、平成史の方が面白く感じはしたが。 -
p160の「念力主義」は、確かにねぇ、と笑ってしまった。
頭が足りない奴に限って、他人に向かって「気合いが足りん」とか言うんだよな…
そこで一言、「だったらお前がやって見せろ」は、未完のファシズムでは最大の禁句だ、と…