海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001555

作品紹介・あらすじ

四国の図書館に着いたカフカ少年が出会ったのは、30年前のヒットソング、夏の海辺の少年の絵、15歳の美しい少女-。一方、猫と交流ができる老人ナカタさんも、ホシノ青年に助けられながら旅を続ける。"入り口の石"を見つけだし、世界と世界が結びあわされるはずの場所を探すために。謎のキーワードが二人を導く闇の世界に出口はあるのか?海外でも高い評価を受ける傑作長篇小説。

感想・レビュー・書評

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  • ずっとずっとカフカ少年の孤独な魂を追いかけながら読んでいた。15歳の少年が本当の意味で強くなり、これから自分の旅を続けるために、必要だったこと。それがダイナミックな小説を通して語られていた。
    自分を捨てたと思い込んでいた母を求めるカフカ少年。母には母の、姉には姉の、そして父には父の選ばなくては行けない道があった。
    大島さんが男性に見えたり、ナカタさんが空っぽに見えたりしても、本質とは異なる。お椀山事件で、記憶と読み書き能力を失ってしまったのだ。人にはそれぞれの意思があり、背景があり、血が流れている。独断的偏見の目をクリアにするために、森に行き、内省的な時を過ごすべきなのかもしれない。

    一番好きな場面は最後に佐伯さんと出会う場面。
    自分が愛されていたことを感じ、自分の中に流れる血を実感すればきっとこれからも生きていける。

    この小説の面白さを際立たせたの、ナカタさんと中日ドラゴンズファンのホシノさんだろう。ホシノさんが仕事をほっぽり投げて、ナカタさんに尽くし、ナカタ化していくところがいい!
    アロハシャツのホシノさんが、大公トリオを聴き、ベートーヴェンに傾倒して、自分の半生を振り返り、石や猫に話しかけるさま。想像するだけで可笑しい。

    真っ直ぐなカフカ少年の人生に幸あれ。
    そう思いつつ、最後の頁を閉じた。

  • 後半は、作品の伏線回収の中で、主人公が自分探しを閉じていきます。重いテーマの物語ながら、エディプスコンプレックスをを乗り越えて、次の世界に旅立つカフカくんの姿が、悲劇で終わらず、読後の充実感に繋がります。

    カフカくんの重いテーマとは対照的に、ナカタさんとトラックドライバーの冒険がコミカルで面白いですね。最後は、重さが逆転し、思わず「ナカタさ〜ん」と叫びたくなってしまいました。

    あっちの世界の真骨頂が現れ、入り口が閉じられるとともに、物語世界も静かに閉じていきます。長編ながら、一気に読んでしまう作品でした。

  • いちいちオシャレでした。少しメタファーが強い
    印象を持ちました。佐伯さんと田村カフカの絡みの
    部分が少し私的には、あまりしっくりこない場面がありました。でも理解できないこそが文学なんだなと改めて認識できた作品でした。感じることが大事なんだと、特に村上春樹の作品は、そういったカテゴライズされない作品が多いので、「海辺のカフカ」は特にカテゴライズするのが難しい作品だと感じました。登場人物がユニークでしたね、ジョニーウォーカー、カーネル・サンダースなど、特に下巻での、ホシノ青年と、カーネル・サンダースの絡みが、印象的でしたね。

  • 苦手な描写がチラホラ。
    “タフになること”の意味あいも、なんとなくわたしと合わなくて。
    そして、やっぱりわたしはナカタさんの章の方がすき。
    ってことは、やっぱりハルキストではないわけで。
    あっ、でも兵隊はすごくすき。

    こちらの付箋は16ヶ所。
    やっぱり全然、前とは違うところに。

    二つの物語が一つに重なっていく感じは少し、1Q84に似ている。
    物語の収束は、とても美しい。

    • naonaonao16gさん
      sinsekaiさん

      コメントありがとうございます!
      いや~、だいぶ前のレビューですね(笑)

      初めて読んだのは「アフターダーク...
      sinsekaiさん

      コメントありがとうございます!
      いや~、だいぶ前のレビューですね(笑)

      初めて読んだのは「アフターダーク」か「ノルウェイの森」です。
      デビュー作から「ねじまき鳥」も「世界の終わりの~」も有名どころは読んでいるのですが、うーん、好きかと言われるとそうでもなく。
      ではなぜ読んでいたのか。
      まさに、「村上春樹を読んでいる自分が好きだった」という状況でした(笑)
      今は本棚にはいくつか春樹氏の作品があるものの、いつも棚卸の時に悩んでしまいます…春樹さんごめんなさい。
      2021/08/01
    • sinsekaiさん
      「村上春樹を読んでる自分が好きだった」
      わかります!
      俺も最初の動機はそんなもんだと思います。
      サブカルクソ野郎全開ですね!お互い…笑
      「村上春樹を読んでる自分が好きだった」
      わかります!
      俺も最初の動機はそんなもんだと思います。
      サブカルクソ野郎全開ですね!お互い…笑
      2021/08/01
    • naonaonao16gさん
      sinsekaiさん

      爆笑…!
      というか、かなりの割合でみんなそうではないかと思ってます。
      でもある時ふと気付いたんですよ、「ちょ...
      sinsekaiさん

      爆笑…!
      というか、かなりの割合でみんなそうではないかと思ってます。
      でもある時ふと気付いたんですよ、「ちょっと何言ってるかわからない」ということに…(笑)
      それに気づいてからの脱却は早かった…
      2021/08/01
  • 狭量さ、非寛容さ、全ては想像力の問題… 僕らの責任は想像力の中から始まる…
    との視点、その想像力を育むために少しでも多くの小説に触れたいなと。先日読んだ奈倉有里さんの夕暮れに夜明けの歌をにもあったけど納得。

    父の呪に対峙すべく15歳の僕は家を出る…

  •  村上春樹は読んだことがなかった。別に食わず嫌いだったわけでもなく、ただ何となく。そこへ、先日友人からのこの本を薦められ、読んでみた。初春樹だ。
     先が気になってやめられず、一気読みしてしまった。時間は計ってなかったけれど、ものすごく速かった。ストーリーが面白かったのもあるけれど、話の密度が低いのも速く読めた一因ではないか。一見深いことを言っているようなシーンも多いのだが、その背景にあるのは著者の感覚に過ぎないように思える。論理的な説得力が感じられず、全体的に話が軽い。なので、どんどん読み飛ばしてゆける。
     軽いと言えば、登場人物も軽い。性格が軽いのではなくて、存在感が軽い。まず人が存在して 彼らが動いてストーリーが生まれるのではなく、まずストーリーがあって それに基づいて人物が動かされている感じがする。それぞれ葛藤があり悩みがあって、その中でもがきながら動くのが人間だろう。しかし、この本では「あ、台本にこう書いてあるから次はこう動かなきゃ」みたいな感じで登場人物は行動する。だから、存在感が軽い。俳優が舞台の上で役を演じてはいるが、それはあくまで舞台上だけの役割で、舞台を降りたら別の生活がある。その、舞台の上の部分だけを描写しているような感じ、とでも言おうか。人物に厚みがなくて、こっち側から見えている面は人間だけれど、それは皮一枚で、裏に回れば空っぽではないかとさえ思う。これはぶっ飛んだストーリーのせいではなくて、著者の問題だと思う。もっとぶっ飛んだストーリーでも、実在感にあふれた作品を書く人もいるのだから。
     軽さに拍車をかけているのが、ブランド志向な描写だ。レヴォのサングラスとか、VWのゴルフとか、トミーヒルフィガーとか、クルマやガジェット・ファッション関係で妙にブランドにこだわった描写が目につく。それが、ブランド物ばかり置かれた住宅展示場の生活感のない空間のようなイメージで、作品全体の実在感をさらに希薄にしている。
     何だかボロクソに書いてしまった。まぁ、ストーリーはよく出来ていた。

  • 文庫で上下巻合わせて1000ページ以上ある割に読み易い….そういうことも作家の人気を左右する重要な要素なのかもしれない。

  • 小説の理論的な書き方を解説しながら、あるいは種明かししながら物語が進んでいくので少し笑える!!
    「ロシアの作家アントン・チェーホフがうまいことを言っている。『もし物語の中に拳銃が出てきたら、それは発射されなくてはならない』ってな。」

    でも、まぁ話は面白かった。

  • 上下巻一気読みの一冊。

    こちらの作品も好き。

    正直全てを読み解くことはできない。
    結局…という疑問符も残る。
    でもそんなことさえも気にならない、不思議な世界に引き摺り込まれた一気読みの時間だった。

    波にさらわれた砂浜で貝殻を見つけるように、美しい言葉、いきなり心の深部に届くような言葉にたくさん出会えた。

    そして一番印象的だったのはナカタさんと星野青年との入り口の石を見つけようという時間。  
    ナカタさんとの交流で彼の世界が輝き出すのが涙ながらにとても心に響いた。

    哀しみも払拭するぐらいの清々しさが持続する読後感がまた良い。

  • 上下まとめて。
    主人公の一人「田村カフカ」は中野区野方に住む、高名な彫刻家の息子で家出少年。母と義理の姉が幼い頃に出て行ったことが、ずっと心の重りになっている。
    もう一人の主人公、ナカタさんも野方在住の60歳の老人。幼い頃のある経験で、影が濃さが半分になり、読み書きの能力を失い、猫と話せるようになった。

    呪われた予言を受け、「世界でいちばんタフな15歳になるため」、カフカ少年は家を出て四国・高松へ向かい、姉のような”サクラさん”と出会い、甲村記念図書館の一部となり、大島さん、そして佐伯さんと出会う。図書館の一室に住むことになったカフカ少年は周囲と不思議に交わっていく。
    一方ナカタさんは猫探しの依頼から事件に巻き込まれ、「入り口の石」を探しにヒッチハイクをし、途中で出会ったトラック運転手・星野の力を借りて高松へ向かう。

    ナカタさんストーリーとカフカのストーリーが並行して進んでいくも、二人とも高松へ向かい、それがだんだん一点に集約していく。
    ギリシャ神話「オイディプス」をベースにしている通り、父を殺し母と交わる描写がある。
    基本的にはカフカ少年の成長物語であり、ミステリー要素もあって、村上春樹作品としてはわかりやすかった。
    「ジョニー・ウォーカー」氏による猫の惨殺シーンはかなりグロテスクで、読み飛ばした方がよかった。ああでもしないと、なかなか”殺人”という行為をニュートラルに描けないのでしょうが。
    猫はきっと”読み書き=記録のない世界”の象徴なのでしょう。図書館とは対をなす。

    人は現世で生きている出来事にのみ関わるわけでなく、去った人たちの記憶の世界や、夢の世界とも関わり、ときにそこにも責任が生じる。
    カフカ少年は心の友人「カラス」とともに旅立ち、高松でサクラさんと大島さんと出会った。予言を終え、最後に東京へ戻るとき、「新しい世界の一部に」なる。
    傷を抱えて、旅をするとはこういうものかもしれない。少しノスタルジックになるが、「ジョニー・ウォーカー」氏を除けば登場人物がみんな優しい人で、結構すきな作品でした。またいつか読み返そう。

  • 上巻で持っていた謎は多くが謎のままだった(笑)ナカタ・佐伯の影が薄いのは何かを喪失してしまったからということ。入り口の石は現実世界ではない、向こうの世界の入り口だったのかな。森の奥深くは向こうの世界とこっちの世界の分水嶺なのかなあとぼんやりと思いながら読み進めていった。
    ナカタさんとホシノくんの章を楽しみに読んでいた。ナカタにはホシノがいて、僕には大島がいて本当に良かった。
    個人的にはホシノ、あんたがMVPだよ。

  • なんだか深い人間の感情が交錯していて夢中になって読んだ。
    これら複雑な状況が最後どうまとまっていくんだろうと引き込まれていった。
    少年はずっと孤独だったけど佐伯さんはじめ周りの人に助けられて愛されることがわかって現実世界に戻るのだからきっとこれからの人生は強く生きていける。
    星野さんがいい人すぎる。

  • 様々な古典文学を抽象化しエッセンスを複雑に混交させ具体化的物語へ昇華する、村上春樹氏の凄さが作品からは伝わってくる。が、読み終えてもこの物語が一体何であったかの総括は難しい。村上春樹氏の他作品と比べてより現代小説的であり、所々差し込まれる残酷的であり肉感的であり直接的な描写が不思議な感覚を与える。カフカ少年の新たな旅立ちを感じさせる終わり方も特徴的であろう。本作品はカフカ少年を軸とした並行世界のようでありながら、ひょっとすると全てカフカ少年の幻想もしくは可能性であった世界なのかもしれない。最終的には各自の喪失を持って大人へ脱皮したカフカ少年に収斂し現実社会へ復帰する形で幕を閉じる。

    但し本作品は現実と非現実との区切りが比較的はっきりかつ唐突なところがあり、村上作品の持つ浮遊感みたいなものは少なめであったように感じる。

  • かなり昔に多崎つくるを読んで以来の村上春樹作品。
    序盤はしんどかったけど、上巻半ばからずっと面白かった。また読みたい物語だったし、ノルウェイの森なんかも読みたくなった。
    写真、本、音楽、映画、絵画など、それに触れた後世界が少し変わって見える様な創作物に出会う事があるけれど、この本は間違いなくその一つ。読んでよかった。

    世界はメタファーと言っているように、この物語で登場する突飛な設定たちもそうゆうものとして受け入れたら世界観に入りやすいし、楽しめた。
    作中で語られる哲学や歴史の話や、生死にまつわる話(仏教など?)をより理解していればもっと楽しめたかも。

    カフカ少年もナカタさんも数奇な運命を背負っていて、それによって愛を受け取ることなく生きてきていたのだと思う。
    カフカ少年は大島さんや佐伯さん、さくらと出会っていろんな形の愛を貰えてよかった。
    ナカタさんもホシノさんと出会って、親子のような親友のような2人旅をして楽しそうだった。

    ホシノさんがとても好きで、ナカタさんに振り回されながらも絶対に見捨てたりしない。ナカタさんとの旅や出会った本や喫茶店の音楽から自分の今までを振り返り、当時気づけなかった事に気付く。

    私はあらゆる創作物の本質はここにあると思う。創作物をきっかけとしてこれまでの人生経験を思い出し、当時の事を振り返り現在の自分に新たな視点を与える。それを繰り返して行く事がより良く生きていく事なんじゃないかと思う。
    昔に読んだ本も今の自分が読めば違う感想が出てくるだろうし、新しい発見を楽しんで読書していきたい。

    好きな文章はカーネル・サンダーズの
    「宇宙そのものが巨大なクロネコ宅急便なんだ。」
    と、カーネルが引用したチェーホフの
    「もし物語の中に拳銃が出てきたら、それは発射されなくてはならない。」

  • ミステリーではないので、結局謎は謎のまま謎として残る謎の終わり方だった。

    つぎの3つの大きな問いだけでも答えをはっきりさせたくて、いろんなひとの意見を覗いてみた。
    問1 佐伯さんは、カフカの母親なのか?
    問2 さくらは、カフカのお姉さんなのか?
    問3 ジョニーウォーカーとカフカのお父さん(有名彫刻家)は同一人物なのか?

    『読者の自由な解釈でよい』が作者の公式見解のようだが、たぶん、No, No, Yes, っぽい。

    ナカタさんと星野青年の漫才風珍道中は、読んでてホッと出来た。佐伯さんの『必要以上に内省的』な姿勢とは対照的に。(『 』内の表現は、鳴らない電話機の描写として登場。妙に記憶に残ったので使ってみた。)

    『入り口の石』とかナカタさんの学級の集団催眠とか、理由がよく分からない部分は、たくさんあるけれど、物語としては非常に面白くて、すいすい読めた。

    カフカ君は、どんなふうにタフな大人になるのか。登場人物の中でいうと、大島さんのお兄さんが、一番近そう。なんといっても、脱走兵二人に入り口へ案内して貰う、という共通の経験があるし。

  • 主人公二人のエピソードが交互に綴られる構成。読み終わって、私自身の読み込む力不足なのかもしれませんが、解決できない部分もあるのですが、面白く読めました。村上春樹さんの文章が、好きなので疑問が残っても楽しく読めてしまいます。

  • 台詞の掛け合いがやっぱりとても良い。ナカタさんとホシノ青年、大島さんとカフカくん。
    「あるいは」「かまわないよ」「もちろん」とか使いたくなった。

    大島さんすごい好きだなぁ。。。絶対大島さんとは喋れないなって思うくらい終始言ってることが難しいんだけど、なんか温かい。正直、この本が面白くて好きなのか大島さんが好きだからこの本が好きなのかわからないくらい。カフカくんが東京帰る別れのシーンとか最高。ネクタイ姿の大島さんたまらない、、

    ホシノくんも結構喋る子でナカタさんとの掛け合いがとても良かった。ナカタさんのことをわかってくれてるかんじとか。

    一人一人にたいしての感想はあるんだけど全体についての感想と言うとなんだか難しくて書くことが出来ないな、、なにかを感じて、色々思ったんだけどそれがなんなのかよく分からないというか。
    だけどなんだかとてもたまらない気持ち。

    Tシャツの血についてはどうなったのか、、あれは昔先生の生理の血が着いた布拾ってきたナカタ少年を思い起こさせた。
    三途の川的な世界?が森なところが神秘的で素敵だった。
    あのままカフカくんが15歳の佐伯さんと離れられなかったらカフカくんも死んでいたのかな…でも戻ってこれて東京に帰るなんてタフになったんだなぁ!!
    本当のお母さんお姉さんはわからなくても本人がお母さんお姉さんと思える人と出会えて、大事なのは真実ではなくてそう思えることなんだろうなと思った。

    伏線は回収されたのかされてないのか、、というかんじだけど、何でもかんでも解決、回収というかんじじゃないふわっとした感じも悪くないなぁと思えた。ミステリーとかでは伏線が回収されないのって気持ち悪いし、え?は?となっちゃうけど。

    勧めてくれた人に前もって、伏線が回収されるわけではないと言われてたから色々謎な点はあるんだけどそこを気にせず世界観を楽しめたのは良かったかも。

  • 15歳の家出少年の話か…と軽く読み始めたけど、村上春樹さんですもの。ただの家出少年の話のわけがないよね。

    今回も村上春樹ワールドにどっぷり引き込まれました。
    好きだー本当。

    アートだなぁ、この不思議な感覚。
    文章の美しさ、世界観が病みつきになる。
    彼の作品は物語を読んでいるというか、美術館の中に迷い込んでるような感じになる。(アートにも美術館にも全くもって縁はないのだけれど。笑)
    考えるより感じるというか。

    上巻を読み終わった後に、こちらで上巻のレビューを色々と読んでしまい(もちろんネタバレじゃないものだけだったが)、「ナカタさん」についてのネタバレを喰らってしまって、チクショー!レビューなんか読むんじゃなかった!と後悔しながら、そしてナカタさんに何が起こるのかをずっと頭の片隅に置いたまま読んだので、それだけが後悔…。

  • 「何かを経験し、それによって僕らの中で何かが起こります。・・・自分自身を点検し、そこにあるすべての目盛りが一段階上がっていることを知ります。」

    当たり前のことを言っているように見えるけど、自分が経験したり、挑戦してみたり、感じたりしたことで、その後の自分の人生が大きく変わるということを改めて痛感した。

    仮説を否定するものがないことは仮説を証明したことにはならないように、世の中は実際に起きたことが全てである。
    カフカの仮説が証明されたのかされてないのかは内容からはわからないけど、その後の人生でカフカ自身が経験して答えを見つけるんだろうなと感じた。

    自分の人生においても推論や仮説でそのことを理解した気にならず、起こったことを自分で感じて考えて生きていこうかなと思った。

  • 話の筋が面白いというよりは文体や表現、世界観にとても引き込まれた。文学というものは芸術にもなりうるということを初めて体験した。音楽や絵画が人の心を震わせるようにこの作品にはそういう部分がある気がする。逆に言えばある人が良いと感じた音楽でも別の人が聴くと全く感動しないというケースがあるように、芸術としての文学にもそういう側面があると思う。だからこの作品を読んで面白いという人がいる一方で面白くないと思う人がいるのは当然のことであるような気がする。芸術とは、おそらくその人が今まで何を感じ何を経験しどんなものに価値を感じているかによって感じ方が変わってくるのだと思う。自分も10年後にこの作品を読んだら感想がまた違ってくるのかもしれない。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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