- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101010069
感想・レビュー・書評
-
1910年 漱石前期三部作
主人公宗助は、かつて友人であった男の妻を奪い、その妻と二人、世間を転々としながら、二人ひっそりと暮らしていた。
二人は、多くを希望せず、穏やかに、仲睦まじくしている様子が、描かれていく。
貧しい、子供ができない(亡くなってしまったり)、社会との繋がりが乏しいなど、二人の生活が、寂しさを伴うものであることが影をおとす。
宗助達は、妻の元夫と再会しそうになり、心乱れる。その乱れを、鎌倉で参禅することで、取り直そうとするが、悟りを得ぬまま帰宅する。
結局、友人とは、すれ違いに終わるが、その怯えは、生涯続くのであろう。
こちらは、日常生活が多少、動きがあるので、読みやすい。
誰かを傷つけた過去からは、逃げられないということなのかな。
「こころ」の、先生が、「それから」と「門」の両面を持っているように思う。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
-
今晩は。ダイちゃんと言います。いいね!ありがとうございました。夏目漱石の本は、学生時代によく読みました。Macomi55さんは、音楽と古典に...今晩は。ダイちゃんと言います。いいね!ありがとうございました。夏目漱石の本は、学生時代によく読みました。Macomi55さんは、音楽と古典に造詣が深いですね。参考になります。2021/08/25
-
ダイちゃんさん
こんばんは。いつも有難うございます。
「造詣が深い」だなんて、お恥ずかしい!死ぬまでに読んでおきたい名作を必死で読んでい...ダイちゃんさん
こんばんは。いつも有難うございます。
「造詣が深い」だなんて、お恥ずかしい!死ぬまでに読んでおきたい名作を必死で読んでいるだけです(^^)。ただ、とても遅読でレビューがなかなか書けなくて、モヤモヤしていたところ、家に沢山あるクラシックのCDを家事をしながら聴いてレビューを書くと、どんどん書けることを発見し、最近は音楽の感想のほうが多くなってしまいました。本のレビューも沢山書いていきたいと思います。ダイちゃんさんのレビューも楽しみにしています。今後とも宜しくお願いいたします。2021/08/25 -
2021/08/25
-
-
三部作の最後の作品。「それから」の二人はどうなったのだろう・・・と思いながら読みました。大きな波のある話ではありませんでしたが、宗助と御米の、何気ない会話がなんとなく良いなぁと思いました。二人の中で、二人の仲で、二人をつなぐものがあるのだなぁと感じました。それは、御米の「そのうちにはまたきっと好い事があってよ。そうそう悪い事ばかり続くものじゃないから」という言葉から思いました。また、宗助の弟の存在が、色んなことを抱えながら二人でやってきた宗助と御米と対比になり、彼のこれからの人生がどうなるのかも気になりました。
-
すげぇぇぇぇ。夏目漱石ってすげぇぇ! と、思った一冊。
私は漱石のいい読者ではなく、「漱石で一番好きな本は?」と聞かれたなら、「うーん、『夢十夜』かなぁ?」ぐらいしか答えられないような人間であった。
この本を手に取ったのも、『三四郎』『それから』は読んでいるのに、そう言えば『門』は読んでいなかったなぁ、というおかしな貧乏性がきっかけだった。
それがいやはや、どうしたことだろう。読めば読むほど、え、漱石ってこんなに凄い作家だったんだ、やばい、私全然漱石の本を読めていなかったんだ、と過去の自分の読書を疑いたくなったのである。
なんという生きることのナイーブさ、そして日常というものの怠惰さ。脆くて柔くて甘えているのに、図太くてそっけなくて突き放している。
自分自身ですらままならないのに、自分一人では生きていけない。社会では生きていけないと思っているのに、社会がないと生きていけない。
つまりこれ、膨大にして矮小な、圧倒的にして視野狭窄な、矛盾。普段は何気なく過ごしている、あるいは見ないふりをしている「矛盾」というものを、漱石は実に丁寧に、それこそ悲しくなるくらいリアルに描いている。
その手腕のなんというブレのなさ、確実さ。凄すぎる。常人じゃない。何しろ、物語にどんな事件らしい事件も起こらないのである。むしろ、主人公が体験した一番の山場(切迫シーン)は、もう遠い過去へと過ぎ去っているのだ。
それなのに、漱石はその淡々と過ぎ去るだけの、あまりに怠惰で茫漠とした日常を、あくまで堅実に着々と書く。そこには妥協も安定もない。ぐらぐらとして脆弱で、哀しいセンチメンタルな気持ちを、一切の同情を切り捨てて書く。
これじゃ、漱石が神経症に悩まされたのも当然だ。こんなに微に入り細を穿って人間を描写する目と頭と腕があるんだもの。そして、そんなものを書く自分にどんな甘えも許していないんだもの。辛いに決まっている。
少なくとも、この本を読んで私は漱石のことをそう思ったのだった。 -
「三四郎」「それから」から続く三部作の最終巻。登場人物や物語はそれぞれ異なるものの、共通店はいずれも三角関係を描いているということ。本作でもそれがテーマになっているが、恋愛、結婚というのはいつの時代も答えがなく、難しいものだと感じさせる。
-
夏目漱石の本を読みはじめる時、毎度この作品を面白く読むことはできるだろうかと不安になるのだが、必ずその心配は無用だったとあとで気づく。この作品もそうだった、そして今まで読んだ何作かの中でも特に好きになった。
ストーリーに特別な事件は何も起きず、書かれているのは平凡な日常とその日常をうっすらと覆う灰色の陰(彼らの過去)だけである。
この本はその平和な内容にもかかわらず強く印象に残った。やはり歴史に残る作家は素晴らしい…。
今年読んだ心に残る作品の一作目に数えられる。 -
過去を背負った中年夫婦の日常というのが正確なプロットか。いろんなことを抱えて生きている。思い出したくないことはたくさんあるし、会いたくない人だっている。なにも解決しないまま時間は過ぎていき、はた目にはそれが日常となる。
沁みました。私のことが書かれているよう。