夜空に泳ぐチョコレートグラミー (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101027418

感想・レビュー・書評

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  • これが町田そのこさんデビュー作?!
    作品のものすごいクオリティの高さに、読みながらおののいてしまいました。
    それくらい、衝撃的な1冊です。
    どれくらい衝撃だったかというと、ブクログ登録に「町田そのこ」フォルダを即座に作ったくらいの衝撃でした。

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    本書はR-18文学賞大賞を受賞した「カメルーンの青い魚」(デビュー作)を含む短編集です。

    「大きなみたらし団子にかぶりついたら、差し歯がとれた。しかも、二本。私の前歯は、保険適用外のセラミック差し歯なのだ。」(8ページ)

    このたった2行でもう、つかまれました。
    こんな出だし、あります?!(いやあります。)
    そしてこの前歯の話、読者を掴むためだけではなく、ちゃんと物語のなかで重要な意味をもってきます。

    どうしてさっちゃんの前歯は差し歯なのか?
    それは高校生の頃、ヤンキーの喧嘩を止めようとして飛び込み殴られ、歯が折れてしまったからなのですが、ではどうしてさっちゃんはそのケンカを止めようとしたのか?止めなくてはならなかったのか…?
    高校時代のさっちゃんの話と、今のさっちゃんが織り混ざり、そしてさりげないけれど衝撃的なラストへとつながっていきます。
    34ページと短いお話ながらその内容は鮮烈的で、それはもう、読み終えたら忘れることができなくなっていました。すごい。本当にすごいです。

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    この短編集は前から順番に読むことを、強く強くオススメします。

    どの短編の登場人物も、それぞれの傷を抱えています。
    読んでいるとその傷のうずき、どうしようもなさが伝わってきて、痛々しくなる…でも、その人たちは生きています。涙も血も流しながら、それでも生きている。
    目に見える傷も、目に見えない傷も見せてくれる、伝えてくれる短編たちだからこそ、こんなにも「寄り添ってくれてありがとう」という気持ちになるのでしょうか…?

  • 町田そのこさんの作品を手に取るのは初めてです。
    『52ヘルツのクジラたち』が本屋大賞に選ばれたと聞き、読んでみたいなと思っていました。

    北関東の田舎町を舞台に、主人公の異なる5つの短編が含まれており、少しずつお話がリンクしています。

    それぞれの悩みや生きづらさを抱えた登場人物たちが、新しい出会いを通してちょっぴり前向きになっていく様子が素敵でした。

    「波間に浮かぶイエロー」を読んで山に登りたくなったし、「海になる」を読んで海に行きたくなっちゃいました。
    なかなか遠出ができないこのご時世ですが、、、なんだか自然とふれあいたいなぁ。
    ゆったりした空気感が漂う優しい小説でした。

  • 凄いなぁ…。
    涙とため息の出る一冊。
    同じ世界線に住む、それぞれの哀しみを抱えた人々の優しくて切ない連作。

    物語の一行目からして凄い。
    一行目からその先が気になってしょうがない。
    (以下、本文引用になります)

    ・恋人が死んだ。
    ・名も知らぬ小さな駅で、父と別れた。
    ・今日は私の誕生日で、とても良いお天気の日曜日だから、死ぬにはぴったりの日だなと思った。

    どうですか。笑
    町田さんの物語に出てくる人たちは基本みんな優しい。
    自分ではどうにもならない哀しみを抱えた人たちが優しい人たちに支えされ救われ生きるさまは美しい。

    新美南吉さんの「でんでんむしのかなしみ」という絵本があります。
    読まれたことがない方はぜひご一読いただきたい絵本です。
    ーーー哀しみは誰でも持っているのだ(中略)私は私の哀しみをこらえていかなきゃならない。

    ふと、思い出しました。そう、誰もが何かをこらえて生きている。何もない人などいないってことをひとり1人が己の自我、エゴだけでなく他者の哀しみを慮ることができたなら世界はもっと…
    いや、そんなかっこいい理想論を述べられるような生き方なんかしちゃいない。

    ただ、優しい物語を読んだ時くらい、そんな気持ちに寄り添うことを許してほしいなと思う。

    今年の21冊目

  • 恐ろしい本を手に取ってしまった、という感覚。
    何と言えばいいか分からないけど。
    一つの短編を読み終える度に、深い息をひとつ吐いて、現実に引き戻していく。

    これ、ひと月前に読んでいなくて良かった。
    手に取ったタイミングが今で良かった。

    なんなんだ、町田そのこさん………
    凄い作家さんだ。

    キラキラと透明感のある、小川糸さんのような文章の紡ぎ方でとても好きなんだけれど、
    想像もし得ない真逆の闇を感じる登場人物とその世界観。このギャップに振り回される心地良い感覚?
    もうとにかく的確な言葉が思い浮かばない!笑

    とにかく衝撃なのが、どのストーリーも、初っ端一文目のインパクト。
    「カメルーンの青い魚」の一文目は思わず声出るくらい笑っちゃったし、かと思いきや
    「海になる」の一文目は一瞬で現実世界が反転したぐらいの衝撃があるし。

    共感?なのか、思い当たる節があるからなのか、泣けて、安堵して、願って、感情移入しすぎた。




    「教わるもんじゃなくて、体で覚えていくもんだよ、そんなの。人から叩かれたら痛い。だけど同じことができる手のひらを、自分も持ってる。こう言う気づきの繰り返しだろ」

    「わたしのことを好きだって言ってくれるひとがいるだけで、頑張れる」

  • とても、とても好き♡
    町田そのこ作品はまだ3冊目だが、全て好み。
    冒頭の一文から心をキャッチされ、文章がすーっと脳に滲み渡る。

    本書は『生きていく場所』がテーマの5話連作短篇集。水槽の中や、波間でしか生きられない魚もいれば、狭いところに留まれない魚もいる。
    元々は海が生み出し育んできた命…作品の構成も素晴らしい!

    デビュー作の【カメルーンの青い魚】、表題、【波間に浮かぶイエロー】の3作が特に良かった。
    仕掛けも施され、大いに物語りを押し上げている! 
    私は『仕掛け』に弱いので(๑'ᴗ'๑)

  • 心に傷や闇、影を抱えて、それでも一生懸命、生きづらさを感じるこの世界を生きている。泳いでいる。
    彼、彼女たちのそんな強さ、正しさに勇気をもらって、背中を押されて、私も強く生きたい、泳ぎたいと思う。

  • 最後に繋がりもある短編集。
    子供達が大人びいていてそして可愛い。
    でもそれぞれが抱えているものは重たい。
    子供達の方がよっぽど大人の事情に配慮している。
    そんな子供達のおかげでもう少ししっかりして欲しいと思う大人達も憎めない。
    短編集の中で題名どおり読んでいると息苦しくなる話には、納得いかないけれども理解は出来てでもやっぱりと思うこの話が心に残った。

  • 『カメルーンの青い魚』『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』『波間に浮かぶイエロー』『溺れるスイミー』『海になる』の5編から成る連作短編集。

    東北地方のすり鉢状のとある小さな街が舞台。そこに住む人々が抱える葛藤や生きづらさと、それを乗り越えていく強さも描く。

    5編の主人公たちの関係性がゆるく繋がっている。すり鉢状の街全体が大きな金魚鉢のようで、その中で必死に泳ぐ者がいたり、海に向かって泳ぐ者がいたりする。人々が葛藤を乗り越える様子を、魚が泳ぎ生きていく様子に繋げるような構成がとても良かった。大きな金魚鉢の中に暮らす魚たち皆んなが物語の主人公になっているようで、心が温まる。

    町田そのこさんの本は初読みだったのだが、5編とも最初の一文のインパクトが強烈で、物語にグイグイと引き込まれた。
    予想を裏切る切ない結末の『溺れるスイミー』が特に心に残った。

  • 可愛い表紙が目に留まり、この本が町田そのこさん初読みでした。

    読み始めて、1文目から物語に引き込まれます。
    町田そのこさん、読者を物語の世界に引き込むのがほんとにお上手。

    「大きなみたらし団子にかぶりついたら、差し歯がとれた。」(カメルーンの青い魚)
    「夏休みに入るちょっと前、近松晴子が孵化した。」(夜空に泳ぐチョコレートグラミー)
    「恋人は死んだ。」(波間に浮かぶイエロー)
    「名も知らぬ小さな駅で、父と別れた。」(溺れるスイミー)
    「今日は私の誕生日で、とてもいいお天気の日曜日だから、死ぬにはぴったりの日だなと思った。」(海になる)

    冒頭の文章で引き込まれた方にはぜひ読んでもらいたい。

    そして、それぞれのお話が少しオーバーラップしている部分があるので、短編でありながら繋がっていくのも魅力です。
    どのお話も大好きですが、特に好きなのは波間のイエローです。最後の展開、驚きと感動が止まりません。

  • 読み切る気力がなくなり途中リタイアしたので、参考にはなりません。ご了承ください。

    短編集ではあるが、登場人物の背景(境遇)や人間関係の描写について細かい説明がなく、一つ一つの物語が不完全燃焼で終わってしまう。最後まで読み切れたら読後感は変わるのかもしれないが、ちょっと読者は作品に置いていかれる気持ちが次第に高まり、私は断念してしまいました。申し訳ない。

    読破した方の感想(コメント)を頂けると幸いです。

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著者プロフィール

町田そのこ
一九八〇年生まれ。福岡県在住。
「カメルーンの青い魚」で、第15回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。二〇一七年に同作を含む『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』でデビュー。他の著作に「コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―」シリーズ(新潮社)、『うつくしが丘の不幸の家』(東京創元社)などがある。本作で二〇二一年本屋大賞を受賞。
近著に『星を掬う』(中央公論新社)、『宙ごはん』 (小学館)、『あなたはここにいなくとも』(新潮社)。

「2023年 『52ヘルツのクジラたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

町田そのこの作品

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