- Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101119106
感想・レビュー・書評
-
政治家としても文学者としても高く評価する気にはなれないんだけど、時代を生き抜いて生き抜いて死んでいった1人のおっちゃんとしては、親しみに似た気持ちが彼に対してあるのを自覚する。ひたすらチャーミングなんだよなこの本に出てくる石原慎太郎というおっさんは。「海蛇がホテルの部屋に出たらウケるよなーただし俺の部屋は除く」みたいなことマジメに考えてるんだもん。なにかと幽霊みたいのに遭遇してそのつどクソ真面目にビビらされてるし。
かわいげのあるおっさんの与太話なんだよ。ヨットに乗って、海に潜って、山に登ってさ。あんたやりたいことやって死んだんだろうね、と声をかけてやって、おもしれーホラ話をありがとよっつって酒の一つでも飲んでやりたくなるよね。
話盛ってない?って感じるエピソードも多少はあったけど、なんとなく弟を看取った際のことは、このおっさんが感じたままを100%に近い純度で書いたんだろうなと思った。そのことはよく伝わった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
死を間近にしたときに意識される生の感覚。まるで白黒写真の黒と白の関係のようだ。黒だけでは(そしてもちろん白だけでも)だめ。では、この短編集には描かれていない、死がちらつかない時の生は石原慎太郎にとってどういったものなのだろうか? と気になってくる。志賀直哉「城の崎にて」、村上春樹「蛍」との対比も面白い。ちなみに英訳で出版されたときのタイトルは「Episodes from a Life on the Edge」。(作中にはたしか1回だけ出てきて、タイトルにもなっている)「時の時」をどう訳すのだろうと思ったが、なるどそうか。
-
氏の政治思想をどう考えるかはいったんカッコの中に入れるとして、描かれた多数の情景のイメージがもたらす甘美さ、それをもたらす日本語表現の巧さは、やっぱり評価されるべきものという印象を持った。特に氏が傾倒するヨットの経験を通じた海での様々な航海体験や、その中での自然の脅威などの表現は、氏でなければ書けなかった世界だと思う。
文芸評論家の福田和也が、全ての作品に100点満点での点数を付けた「作家の値打ち」で村上春樹と古井由吉と並ぶ96点を付けたことには同意しないけど、一読に値する読書体験を与えてくれることは間違いない。 -
ほとんどが海とお化けにまつわる話。意外なことに著者はオカルト好きらしい。ゲイと戦争の話も出て来たり、石原慎太郎の本質を掴むにはいい本かもしれない。
-
石原慎太郎最高傑作のひとつと思います。