水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101121079

感想・レビュー・書評

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  • ある日突然、自分の部屋が他人に占領されたら…。(『闖入者』)
    まるでロシアによるウクライナ侵攻を預言したかのような作品ですが…

    どの作品も不条理な設定で、寓意に満ちています。
    読むたびに不思議な世界に連れて行ってくれますが、何かゾワゾワと落ち着かなくなる話ばかりなので通勤途中に読むのはおすすめしません。(*´д`*)

  • 安倍公房2冊同時に買った2冊目
    一冊目で合わないかもと思って
    しばらく読むのを後にしようと思ったけど
    もしかしたら、、と短編ということで
    いくつか読んでみた

    かなり文学的

    発想力がすごい

    短編だから、なんとか食い下がった感。

    同じものを見てても
    同じものを見てないような感覚なんじゃないだろうか
    興味深く感じるけど
    私には、今の私には理解できないところが多かった

    SFでもなく
    小説でもなく
    これはどういうジャンルになるんでしょう?
    なんとか文学とか言われるものだろうけど

    好みからしたら好みではない

    でも、どんな本も
    読み続けられるには、それだけの価値があるし
    読む人が少なくても
    文字になれば、誰かと共感できるものと思う
    だから、
    好き嫌いはあるけれど
    その本の良さを
    少しでもわかることのできる
    読書家になれればいいなぁと
    つくづく思いました。

    今しばらくは、安倍公房さんからは
    距離を置いておこうとおもってますが、、、

  • 安部公房の初期短編集。
    通読してみたところ、総じて”神話”(旧約聖書も含めて)の世界が通奏低音として流れている。

    主人公のコモン君が植物に変身する「デンドロカカリヤ」。これはアポロンから逃れようとして月桂樹に変身したダフネのエピソードに似ている。
    (ドナルド・キーンも解説で書いてるけど、変身というとすぐにカフカに結びつける批評家が当時からいたようだ)。
    「ノアの方舟」にはエホバとサタンが、「プルートーのわな」にはオルフォイスとオイリディケというねずみも登場。

    こういった古い物語や神話を、例の持ち前の詭弁と皮肉と散文的な見方によってドライに換骨奪胎した短編が多い。どの話もブラックでつい乾いた笑いをもらしてしまう。とくに「水中都市」と「空中楼閣」がぶっ飛んでいて好みだった。

    この頃から、赤の他人に追われるとか(「デンドロカカリヤ」)、赤の他人がいきなり押しかけてくる(「闖入者」)、わけもなく死刑宣告される(「イソップの裁判」)といった設定がしばしば使われている。
    こう書くとますますカフカっぽく思えてくるけど、あのカフカ独特の不穏に論理がねじくれた感じはなく、あくまで論理的、あるいはその逆をいくという形で物語は理知的に展開。
    (登場人物たちの多くが頭が良くて、ちゃんと会話が成り立つし、いちいち一応相手の話を聞くところが可笑しかった)

    もう一つの特徴は、時代のせいもあるのか権力や政治のにおいが漂っていること。”独裁者”のモチーフも散見される。たしか安部公房はガルシア=マルケスの『百年の孤独』が大好きだったはずだけど、本書を読むと好きにならないはずがないと思えた。

    その他、気づいたこと。

    ”詩人”という言葉がよく登場する。このモチーフ、もう少し突き詰めて考えたら面白そう。

    それから、「ナイフ」と「銃(鉄砲)」が道具としてよく出てくるな。「鉄砲屋」という短編も収録されている。

    最後に、気になる物理用語が2か所(他にもあったかも)。
    ひとつは「詩人の生涯」に出てくる”ミンコフスキー空間”。
    この語のすぐ近くの行に、たたみかけるように活字が斜め45度に改行されながらくだってくる箇所があるのだけど、これは特殊相対性理論の”光円錐”を暗示しているのだろうか。

    もうひとつは「水中都市」に出てきた”プランク常数(定数)h”。h野郎、という罵倒が笑えた。

    ε= hv(ε:光子のエネルギー v:振動数)

    の比例定数h。たしか220Hz(音の高さではラ!?)という振動数も書かれていたけどこれには何か意味があるのかな。詳しい人がいたら教えてほしい。

  • 寓意とユーモア、そしてシュールさが溢れる、安定の安部公房ワールド。
    そこには、ふわふわと水中を漂うかのような、不安定さもある。

    これを読んでると、形ってなんだろうって思う。
    自分が見ているものの形と、その実際の形には乖離があって、一体そのどちらが正しいのだろう。いや、もしかしたらどちらも間違っていて、正しいかどうかなんて、誰にも分かんないのかも知れないな、と言う気持ちになってくる。

    闖入者は読んでいて胸糞悪かった。ただ、そのじっとりとした湿度を感じる嫌な読後感は、砂の女含めて、安部公房作品に通ずるものがある…良いな…


  • 『友達』の原題にもなった『闖入者』が抜けてて素晴らしい。
    他収録作はシュールレアリスム寄りだが、安部公房作品では相対的に取っ付きやすい部類かもしれない。

  • 改めて読むとカフカとは似てるけど、根本的に違う。とりあえず佇まいが違う。カフカは陰鬱な広場であらぬ一点を見つめているけど、安部公房は暗がりにモサーと立って時々こちらに視線を投げてくる。

    収録作品の中では、江戸川乱歩味のある『飢えた皮膚』、「よく切れるナイフが欲しい、そいつで自分の頭の中を掻き回す必要があるんだ」の『水中都市』が楽しかったです。

  • 安部ワールド。唸るほど詳細で素晴らしい描写と、おぞましく突飛な物語。これをシュールレアリスムというのか前衛的というのかはわからないけれど、読み進めるほどにあぁ天才の書く小説とはこういうものだとガンガン打ちのめされる。付いていけない。

  • 表題2作。
    ひどくシュールな漫画を読んでいる気持ちになる。
    水中都市にしても、デンドロカカリヤにしても
    「ある枠」をはめて物語を一層意味深くしている。この作者、物一つ眺めてからの創造力が桁外れだ。モノづくりにとってはネタの宝庫かもわかりませんね。

  • 読書会の課題図書。表題作のデンドロカカリヤだけ読む。

    ・シュールな不条理小説。時折唐突に読者にタメ口で語りかける文体が特徴的。
    ・ほとんどの人は、コモン君に共感も感情移入もできないだろう。彼の思考はあまりに簡略化されている。よく分からない思い込みを勝手に信じ始め、ただひたすらその思い込みと状況に流されている。意志や信念といったものはまるでない。しかしその名前からして、これは大衆のことを揶揄しているように思われる。
    ・Kは、政府の代理のようにも描かれている。が、彼の本性はラストシーンだろう。つまり、コレクターなのだ。自分の所有欲を満たすために執念を燃やしているだけだ。デンドロカカリヤは、ぱっと見の派手さもなく人の目を惹くものは何もないが、実は小笠原諸島の固有種であり珍しい学名を冠するという、かなりマニアックな植物で、それを知るのはK植物園長くらいである。価値が分かる人の下、適切な環境を与えられ居場所を得たコモン君は、(彼としては不服だろうが)彼のポテンシャルを考えればまあハッピーエンドなんだろうね。

  • 現代の寓話とも言うべき短編集。主人公らは人間から変態したり、そもそも人間ではない存在を描いており、その中に著者のユーモアがふんだんに散りばめられている。不条理な展開に振り回されつつも、その中にある様で存在しない大きなメッセージを感ずるだろう。

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著者プロフィール

安部公房
大正十三(一九二四)年、東京に生まれる。少年期を旧満州の奉天(現在の藩陽)で過ごす。昭和二十三(一九四八)年、東京大学医学部卒業。同二十六年『壁』で芥川賞受賞。『砂の女』で読売文学賞、戯曲『友達』で谷崎賞受賞。その他の主著に『燃えつきた地図』『内なる辺境』『箱男』『方舟さくら丸』など。平成五(一九九三)年没。

「2019年 『内なる辺境/都市への回路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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