硫黄島に死す (新潮文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784101133164

感想・レビュー・書評

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  • 9784101133164 322p 2007・1・25 29刷

  • 戦争の悲しさがみごとに表現されている。西騎兵中佐の最後は凄惨そのものである。

  • 終戦直前~自衛隊初期の話をまとめた短編集。

    やはり一番読みたかったのは,硫黄島に死すだ。既に結論が見えている戦いに挑む日本人兵たち。負けると分かっていても,女々しい戦い方はしない。力の限り戦ってみるまでである。硫黄島は帝都守護の最後の防砦である。軍人として選ばれてその戦場に赴くことは名誉・光栄以外の何ものでもなかった。硫黄島への米軍の攻撃はすさまじく,島の最高地の摺鉢山は砲撃と爆撃で形が変わったと言われる。そこへ栗林中将を司令官とする日本軍が送られたわけだが,それ以上の増援部隊を送り込む余裕は日本にはもはやなく,唯一の応援といえば,毎夜1時間放送される「硫黄島将兵を激励する夕」で流れる軍歌,わらべ唄,家族の読む詩文であった。2月19日に米軍は硫黄島に上陸を開始し,3月17日には,日本国民の祈りもむなしく,2万人の日本人兵たちをが玉砕した。

    特攻隊の短編も掲載されている。若き特攻隊士を育てる士官の中には,戦争の先が見えるに従い,14~5歳でしかない隊員を戦場に送り込まなければならないことに,疑問を感じる士官もでてきた。日本はとても勝てない,それより,何とかお前たちは生き延びて,生き延びることで祖国の役に立つんだよと,どれほど彼らに話してみたかったか分からない。そんな特攻残りの彼らを待っていたのは,頭脳労働者が生き延びれる世界だった。生き延びた上に恵まれた生活をしては申し訳ない。出世とか金儲けとか微塵もない世界で果てるのが許された生き方だと感じていた。生き残りは長生きしては申し訳ないんだという思いで生きてきたという。

    その他,淡路島沖で敵機の攻撃に遭い,沈没した若き兵隊たちの話などが収録されている。

  • ロサンゼルス五輪・馬術の金メダリストにして、当時としては型破りな国際人でもあった「バロン西」こと西竹一中佐が、どのような経緯で、陸軍の軍人として硫黄島に送られ、そこでどのように戦い、どのように亡くなったかを描く「硫黄島に死す」ほか、戦時中の出来事を題材にした短編が収められている。戦争が日常であった時代を少年兵として体験した著者ならでは描写が生々しい。

  • 10/07/26 西中佐の意外な一面を知った。

  • 城山三郎の短編集を初めて読んだ。

    城山三郎の文章は常に簡潔である。それは砂漠に水を注ぐかのようなのに、気付けば洪水が起こっているような、そんな感じ。

    ここに載せられている全ての話が、そんな読後感をを味あわせてくれた。

    そんなに深く何かを投げかけるかのような感じでもないけど、心に何かを残してくれた7つの短い話に乾杯!

  • なかなかオチがいい作家だなぁ

     この作家は初めてに近い(キングスレイ ウォードの訳は読んだことがある)。

     「著者の戦争体験と深くかかわった作品7編を集めた短編集」といわれる本書を読んだ感想はなかなかいいものだ。

     なんというか、淡々としていて説教くさくなく、しかも余韻がある感じ。いいワインを味わう感じもしくは後から辛さがきいてくるインデアンカレーの感じだろうか。
    (なんちゅうたとえや・・・)


    作品は以下の通り。
    硫黄島に死す
     まさに表題作。硫黄島で有名な栗林ではなく西から見た戦記かな。かたくなに「勝たなくては」と思う日本の狭さがよく表現されている。

    基地はるかなり
     銀行頭取・死刑囚二人のそれぞれの生き様。二人の運命は戦争時の一点だけで交わっている。日常の中で戦争と戦友である死刑囚をさくっと振り切るラストが気持ちいい。

    草原の敵
     遙か異国での少年兵の話だが、イマイチ感情移入ができずに終わった。

    青春の記念の土地
     なんとなくいい感じがするんだが、戦争を知らない我が身にはイマイチ伝わらないものがあるのかもしれない。

    軍艦旗はためく丘に
     淡路や宝塚が出てくるので親しく読むことができた。しかし、これも少年兵の頓死がテーマになっており、ピンとこない雰囲気かな。

    着陸復航せよ
     米人航空技術教官の姿が描かれるなんか一風変わった作品。帰国直前に頓死させる必要があるのか? 伝えたいことが伝わってこないいらいらが残るな。

    断崖
     前6作とは趣が大いに異なる作品。エッセイのような感じ。便利さ、快適さとかいったものへのアンチテーゼか。より深いテーマがあると思うのだが、この短編からは読みとれない。でも、この伏線はどこかで明らかにされるような気がする。そのときが楽しみだ。

  • 戦前も原材料はアメリカに頼っていたのでやっぱり
    日本は戦争はしちゃいかんな。。

    でもアメリカが対日輸出禁止とかしたから
    踏み切らざる得なかったんだけど。

  • バロン西の「硫黄島に死す」(表題作)と、ローリー大尉の「着陸復航せよ」が印象的でした。

    どの物語にも、戦争を生き、死んでいく人々の姿がどこか淡々と描かれていて、
    それが一層戦争の非情さを際立たせている印象です。
    救いがなくて、1話読むたびに休憩をいれたくなってしまいます。

    登場人物が皆とっても魅力的なだけに、余計つらい。

  • 「散るぞ悲しき」から始まった硫黄島への関心から、バロン西の話が読みたくて購入。いくつかの短編から構成されている。

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著者プロフィール

1927年、名古屋市生まれ。海軍特別幹部練習生として終戦を迎える。57年『輸出』で文學界新人賞、59年『総会屋錦城』で直木賞を受賞。日本における経済小説の先駆者といわれる。『落日燃ゆ』『官僚たちの夏』『小説日本銀行』など著書多数。2007年永眠。

「2021年 『辛酸 田中正造と足尾鉱毒事件 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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