忍ぶ川 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 62
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101135014

感想・レビュー・書評

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  • テーマは暗いのに、人間の強さを感じさせる短編小説群であった。日々の生活の厳しさに家族で向かい合いながら、一方で、自殺してしまった家族の存在が負い目となる。豊かさの中で、共同体や家族の崩壊が進んでいる二十一世紀の日本との違いが際立っていた。

  • 表題作だけ読む。お互いの不幸や苦労を乗り越えた上でのハッピーエンドが心地良かった。こういうカップルにありがちな、依存心も見当たらず、明るい未来を想像させてくれる。
    ただ一点、主人公の口説き方が拙速過ぎて、『モテ力』や『婚活』の参考にならないことは、文学上の重大な瑕疵と言わざるをえない(嘘です…)

  • 表題作は、芥川賞受賞作。
    明治から昭和戦前までの古臭い空気をまとった様な作風だが、本作はそれがしっくりとして良い。メロドラマっぽくもある。
    「初夜」なんかも、続作に当たるのだと思うが、とても良かった。ただ、それまでで、他の短編は、「忍ぶ川」に散りばめられた要素を主題に書き下ろしたためか、味気無いというか、既視感に近い引き伸ばしを感じた。
    そのためか、本作で独立した短編「驢馬」は、とても良かったと感じた。

  • 2015/08/02 読了

  • 7つの短編集。6つは連作、でいいのかな。

    『忍ぶ川』数奇な運命の6人の兄弟姉妹の末っ子が
    ある女性と付き合って結婚するまで。
    結婚式での両親がとても嬉しそうで微笑ましい。
    連作はその後の生活と過去を綴ったもの。
    昭和のつつましく暮らしている夫婦が清々しい。

    『白夜を旅する人々』(1985年)を以前読んでいたので
    その印象が強くスピンオフのように感じつつ読みました。
    『白夜を旅する人々』は6人の兄弟姉妹の上の5人
    (メインは次女、長男、長女)
    『忍ぶ川』は末っ子が登場人物。

    末っ子が上5人と比べると普通の人なので
    『白夜を旅する人々』のほうがインパクトはあった。

  • 再読したい。

  • 【本の内容】
    貧窮の中に結ばれた夫婦の愛を高らかにうたって芥川賞受賞の表題作ほか「初夜」「帰郷」「団欒」「恥の譜」「幻燈画集」「驢馬」を収める。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    8月末、79歳で死去した作家の三浦哲郎さんには伝説がある。

    30年ほど前、小説の原稿を編集者がなくしてしまい、再度書いた。

    間もなくして元の原稿が出てきて、編集者が照らし合わせたところ一字一句同じだった――。

    真相は、書き直す直前、元の原稿は見つかっていた。

    クビを切られることを覚悟して謝りにいった編集者に、「見つかったのは残念。句読点すら同じに復元する自信もあったのになあ」と語った三浦さんの言葉が誤伝されたらしい。

    とはいえ、伝説には説得力があった。

    「小説は文章」と思い定め、とことん推敲する短編の達人だったからだ。

    妻との出会いから結婚までを描いた初期代表作「忍ぶ川」も文章が端正で、〈読むたびに心の中を清冽な水が流れるような甘美な流露感をたたえた名作〉である。

    1988年の「文芸春秋3月号」に発表された読者アンケート「思い出に残る芥川賞作品」では、「太陽の季節」に次ぐ第2位。

    新潮文庫は86刷162万3000部のロングセラーになっている。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 表題作だけ、時々無性に読み返したくなる。

  • 第44回(1960年下半期)芥川賞受賞作。この回はなかなかに豊作で、候補作の中には倉橋由美子「夏の終り」や、柴田翔「ロクタル管の話」などもあった。ただし、選考委員のほとんどは本作を推している。作品の文体は私小説風であるが、そのようなタッチを意識して書かれた小説なのだろう。したがって、年代以上に古いタイプの小説という感じを受ける。第44回といえば、安部公房や大江健三郎よりも後なのだから。また、小説全体は、モノトーンに覆われ、ハッピーエンドであるにもかかわらず、ヒロインの志乃には薄倖そうなイメージが付き纏う。

  • 図書館で。この作品で芥川賞取られたんですね。

    昭和初期のお話と言うことをあまり意識しないで読み始めた為、なんとなく最初から違和感を感じました。忍ぶ川だけならこういう純愛話も良いね、で終わった気がするのですがその後を読んでしまうとあまりいただけない感じが。

    なんというかこんな理想的な奥さんいないんじゃない?みたいな感じがします。大体夫の方が子供がいらないと言っておいたくせに。奥さんもサバサバと掻把しましょうって辺り違和感が。喧嘩も口論もしないでその結論ですか?女性ってそういうところもっと悩む気もするんですけどね。大体奥さん側は子供欲しがってるわけだし…
     
    という訳で無職の彼を否定しないで意見もせず、別居中は旦那実家で義父母姉と仲良く暮らし内職で生活費も稼いでくれる男性の理想のような奥様すごいなあと思いました。

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著者プロフィール

三浦哲郎

一九三一(昭和六)年、青森県八戸市生まれ。早稲田大学文学部仏文科を卒業。在学中より井伏鱒二に師事した。五五年「十五歳の周囲」で新潮同人雑誌賞、六一年「忍ぶ川」で芥川賞、七六年『拳銃と十五の短篇』で野間文芸賞、八三年『少年讃歌』で日本文学大賞、八五年『白夜を旅する人々』で大佛次郎賞、九一年『みちづれ』で伊藤整文学賞を受賞。短篇小説の名手として知られ、優れた短篇作品に贈られる川端康成文学賞を、九〇年に「じねんじょ」、九五年に「みのむし」で二度にわたり受賞。他の著作に『ユタとふしぎな仲間たち』『おろおろ草紙』『三浦哲郎自選全集』(全十三巻)などがある。二〇一〇(平成二十二)年死去。

「2020年 『盆土産と十七の短篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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