ローマ人の物語 (13) ユリウス・カエサル ルビコン以後(下) (新潮文庫)
- 新潮社 (2004年9月29日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101181639
感想・レビュー・書評
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カバーの銅貨について
「三月十五日」 Idus Martiae 紀元前四四年三月十五日~前四二年十月
アントニウスとクレオパトラ対オクタヴィアヌス 紀元前四二年~前三十年
著者:塩野七生(1937-、北区、小説家)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ポンペイウスを破り、ローマの終身独裁官として事実上の「帝政」を確立したカエサルが、紀元前44年3月15日に殺される。
権力者の暗殺は、その地位を簒奪し自らが新たな権力者になるために行われることが歴史の常ではないかと思うが、カエサル暗殺者たちの目的はそうではなく、共和制への復帰だった。
誰か特定の人物が権力を握るという明確かつ具体的な構想があるわけではなく、「元老院を中心としたかつての政体に戻る」ということが目的の行動だった。
しかし、歴史が元に戻ることは決してないし、「元に戻る」というのは、具体的な構想があるようで、実際にはそうではない。そのため、ブルータス、カシウス他のカエサル暗殺の実行グループは、暗殺当日から迷走を始め、ローマ市民の支持を失う。
少なくともローマの現状は、カエサルがはるか以前に見抜いていたように、共和制によって統治できる時期をすでに通り過ぎていた。
未来へ向かった構想を持たなかった元老院の集団に代わって権力闘争の前面に立ったのは、ポンペイウス亡きあとのローマ軍の最大の司令官として地方を転戦していたアントニウスと、カエサルから後継指名を受けたオクタヴィアヌスの二人だった。
当時18歳で無名のオクタヴィアヌスを後継に指名したカエサルの慧眼には驚くばかりだが、その後のオクタヴィアヌスの行動も、とても18歳の青年とは思えないような、強い意志としたたかな戦略と粘り強い意志の組み合わさったものだった。
オクタヴィアヌスがアントニウスとクレオパトラの連合軍をアクティウムの海戦で破り、最終的に唯一の権力の座に座るまでには、カエサルの死から14年を要するが、その期間、決して無謀な策をとらず、しかし確実に力を蓄積していく。
カエサルの後継者であるということを最大限に活用し、ローマ兵やローマ市民の多くを味方につけ、元老院でも自らの支持者を固めていく。
一方でアントニウスに対しては、いきなり対決をするのではなく、まず第二次三頭政治という形で共同歩調をとりながら、元老院派の粛清をアントニウスの力も借りて進めていく。
最終的にオクタヴィアヌスがアントニウスに勝った理由は、オクタヴィアヌスが持続的な意思とカエサルから引き継いだローマの政体に対する明確なビジョンを持ち続けたことが大きな理由であり、さらにはアントニウスがそのような確固たるビジョンに支えられた意志を持ち続けるよりも、東ローマ世界の皇帝として生きることに満足したことがもう一つの理由であろう。
結果として、パルティア遠征に失敗し、アレクサンドリアに引きこもったアントニウスが、その力を徐々に落としていったのに対して、オクタヴィアヌスは、西ローマ世界を基盤に着実に力をつけていき、当初は圧倒的な力を持っていたアントニウスを破る。
この後継闘争の期間中、カエサルの構想した新しいローマ帝国の姿の実現が停滞したことは事実である。一方で、この闘争の結果、オクタヴィアヌスが名実ともに権力基盤を固めるとともに、元老院派の退潮が誰の目にも疑うことができないものになった期間ということも確かである。
結果としてオクタヴィアヌスによるローマ帝国の建設は、着実に進んでいくことになった。
カエサルが生きていたとしても、彼の生存中に新しいローマ帝国の建設は終わらなかったであろう。そのことを考えると、オクタヴィアヌスが権力を握るまでのプロセス自体も、意味があったということもできるように思う。 -
カエサル死後の話
内容はオクタヴィアヌスがどのようにして、カエサルの後継者として認められたかとアントニウスがいかに敗れて行ったかを書いている。
これを読んでいるとクレオパトラが時節を全く読めていなかったように書かれている。自分が考えるにクレオパトラは自分を支援してくれたカエサルが死んだ事で自分の立場が失われる事を恐れたのだと思うけど、味方する相手を間違えたために負けた感じなのでは? -
カエサル暗殺から帝政以降までの軌跡。
反カエサル派によるカエサル暗殺の理由は、後に帝政となる専制君主制への移行の阻止であった。
しかし、民衆やカエサル兵はカエサル暗殺に激昂し「父殺し」とされた暗殺者たちの家に向かって押し寄せる暴徒と化する。
移行を阻止するどころか、自身たちの身を守ることで精一杯の暗殺一派は、結局はカエサルの遺言状に残されたそのままの形での政治継続を容認する。
なんの意味も為さなかった、無益どころか有害であったカエサル暗殺。
先見性のない懐古主義の人間達によるカエサルの暗殺。
「寛容」というメンタリティを大事にしていたカエサルに許された人間達の手によって暗殺されたカエサル。
カエサルの後を継いだオクタヴィアヌスはこの暗殺一派を根絶やしにした。
学歴、教養、地位があれども、それはイコール先見性には結びつかない。
人間のアホさ加減がよくわかる一冊。 -
ローマ人の物語〈13〉ユリウス・カエサル―ルビコン以後(下) (新潮文庫)
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内容 :
前44年3月15日、ローマ都心のポンペイウス回廊で、ブルータスら十四人の元老院議員にカエサルは暗殺される。
地中海全域を掌握し、迅速に数々の改革を断行、強大な権力を手中にして、事実上、帝政を現実のものとした直後のことだった。
カエサル暗殺の陰で何が起こっていたのか。カエサル亡き後の帝国を誰が継承するのか。
そして、カエサルの遺した壮大なる世界国家の構想は、果して受け継がれていくのだろうか。
著者 :
1937年東京生まれ。学習院大学文学部哲学科卒業。
「ルネサンスの女たち」でデビュー、70年以降イタリア在住。
著書に「海の都の物語」「わが友マキアヴェッリ」など。 -
カエサル亡き後のオクタヴィアヌスとアントニウスの対決。ローマの内政混乱にクレオパトラが参加し、混乱が深まる。
最後にはオクタヴィアヌスが勝利し、初代皇帝アウグストゥスとして、帝政が始まる。 -
先輩に薦められ手に取った作品。
教養として古代ローマ史を学びたい方の必読書です。
ハンニバルからカエサルまで一気に通読してしまったぐらい面白かったです。 -
カエサルのまったく無意味としかいえない暗殺劇と、そのあとに続く不毛な政争の日々( ´ ▽ ` )ノ
が、それがまた、立ちキャラオールスターの観で、めっぽう面白い( ´ ▽ ` )ノ
アントニーとクレオパトラ、オクタビアヌスにキケロ、その他もろもろ( ´ ▽ ` )ノ
まるで、後のドラマ化のためだけに存在したような14年間( ´ ▽ ` )ノ
しかし、「お前もか」のブルータスが、二人いるうちのどっちだかはっきりしてない、という話には驚いた(゚д゚)!
西洋におけるラテン語というものが東洋の漢字みたいなもんだ、ということが学べた( ´ ▽ ` )ノ
さて、ブックオフにはいつもこの13巻までしか並んでないので、自分もここでローマ人の物語から離脱……(´ェ`)ン-…
源氏物語でいうと、須磨明石? かなりの人がここで挫折しちゃうんだろうね(>_<)
それも分かるなあ……とにかく長いし、薄ペラ本を延々と片付けていくのは根気がいる……(´ェ`)ン-…
悪い意味で「区切り」が付きすぎちゃうだよなあ……小分けパックのお菓子みたい。大袋ならいったん開けたら湿気ちゃうけど、小分けされてると「残りはまた今度でいいや」って気になっちゃうからね(>_<)
まあ、14巻以降は、いずれまたご縁がありましたら、ということで……グッo(´・3・`)ノ))バァーイ
2018/04/30 -
13巻まで読んできたが、さすがにカエサルが長すぎ離脱することとした。
ものの最後に少し姿を見せたオクタヴィアヌス。どうやらカエサルより自分はこちらが好きらしい。
また、クレオパトラについての、絶世の美女かつ才女というような印象も揺らぎ、面白い。