ローマ人の物語 (13) ユリウス・カエサル ルビコン以後(下) (新潮文庫)
- 新潮社 (2004年9月29日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101181639
感想・レビュー・書評
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「一、ローマ本国の民は、臨時税を払うという形にせよ軍務に服する形にせよ、全員がそれぞれの役割にそって、祖国の敵を滅ぼす戦役に参加するシステムにしたこと。」
オクタヴィアヌスの台頭。アントニウスが残念。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
紀元前の英雄といえば第一に名が上がるアレクサンダー大王の時代。広すぎる領土は一人の偉大な英雄ならば治められたが、死後残された数人の優秀な側近では維持することはできず、後継者戦争後の崩壊に至る。
では、大王と同様に、英雄であり、急な死でもあったカエサルの死後はどうか。遺言状により明らかになったのは、息子でも側近でもなく、当時18歳であった無名の又甥オクタヴィアヌスにその名を継がせることを決めていたという変事であった。
血縁でも側近でもなく、純粋な能力による継承は、不興を買った縁者からの攻撃を防ぐ力が備わっていてこそ成し得ることができる。オクタヴィアヌスには軍才も政才も欠けていたが、唯一残されていた人心を扱う才能こそが、カエサルが後継者に見初めた能力であったのだろう。自身の力を過信せず、アグリッパとマエケナスという右腕と左腕に役割を託すことで、仇敵のブルータス、カエサルの部下アントニウス、カエサルの息子を擁していたクレオパトラらと時に手を組み、時に対決し、事を急がず14年をかけて全ての敵を打ち倒した。
カエサルとは違い、『寛容』ではなく『平和』を掲げたオクタヴィアヌスは、反対派を抹殺することでそれを達成した。敵が一掃され、何でも出来るように成ったとき、オクタヴィアヌスは、いや、初代皇帝アウグストゥスは何を目指して何をするのか。
ついに500年の共和政が終わり、史上初の帝政が始まる。次巻、帝国の作り方。 -
クレオパトラの描き方が厳しい。しかしローマにまで影響を及ぼしていたとは知らなかった。
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前44年3月15日、ローマ都心のポンペイウス回廊で、ブルータスら十四人の元老院議員にカエサルは暗殺される。地中海全域を掌握し、迅速に数々の改革を断行、強大な権力を手中にして、事実上、帝政を現実のものとした直後のことだった。カエサル暗殺の陰で何が起こっていたのか。カエサル亡き後の帝国を誰が継承するのか。そして、カエサルの遺した壮大なる世界国家の構想は、果たして受けつがれていくのだろうか。
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カエサルの暗殺者たち、こんなにも浅はかだったのかと衝撃。
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ユリウス・カエサルが暗殺された紀元前44年3月15日から,その後の内乱を経て,オクタヴィアヌスがカエサルの後継者として内乱を集結させるまでの物語です。カエサル暗殺から,暗殺者への復讐,アントニウスとクレオパトラ対オクタヴィアヌスの戦いまでを一気に読ませます。
この巻で物語られるユリウス・カエサルからオクタヴィアヌスへのバトンタッチを,塩野さんは「世界史上屈指の,後継者人事の傑作」と評します。カエサルの暗殺と言う一瞬の惨劇により突如歴史の表舞台に登場することになったオクタヴィアヌスが内乱を平定し,後継者としての地盤を固めるまでの物語は,カエサルの描いた青写真を引継ぐとともに,持続する意思でそれを着実に実現した,オクタヴィアヌスの資質を十分に描いていると思います。 -
4101181632 269p 2004・10・1
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帝政ローマの完成を見届けることなく命を落とすとは思っていなかったであろうカエサル。しかし、彼は遺言状を残していた。それにしても、この遺言状の後継者は実に不思議だ。弱冠18歳と6ヵ月のオクタヴィアヌスだったのだから。いまだ何の実績もない上に、カエサルとの血縁からしても、彼の妹の娘の子であるにすぎなかったのである。ただし、結果的に見れば、それは見事にカエサルの庶幾した帝政ローマの体現者となるのであった。カエサルの慧眼であったのか、それとも、カエサルの後継者に指名されたことがすべてを決していったのであったか。