この世にたやすい仕事はない (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101201429

感想・レビュー・書評

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  • 津村記久子さん初読。作品紹介文を見て衝動買い。コラーゲン抽出を見守るような仕事って笑

    主人公がかなーりニッチな職業を転々としていくさまをシュールに描いている。「どれ、菅井は罠にかかっているかな」は笑った。
    ストーリーに大きな山がある訳じゃないし、途中、正直退屈だなぁとも思ったんだけど、最後の文章がストンと腑に落ちた。ここに辿り着くための読書だったのかと得心できました。

  • 仕事で疲弊し退職した主人公が、ちょっと風変わりな仕事を転々としていくお話です。
    決められた内容を、特に何も考えず淡々とこなせたら…恐らくそれはたやすい仕事なのでしょう。
    でも、働く際には色んな人の考えもあるし、自分も何かしらの考えや思いも影響を与えていきます。主人公はそれが悪い方向に捉えてしまい、仕事が続けにくくなってるのかな?と思いながら読み進められました。

    読み終わって、表題通りこの世にたやすい仕事はないよなぁ。でも、自分の捉え方次第で前に進むことも、良さに気づくこともできるかなと前向きに考えられそうです。

  • 仕事をすること。好きな事を仕事にしてもしんどいだろうなあ。勤労感謝の日があるからお仕事小説を読みたいと思って手にとりました。自分らしく生きることにつながるといいなあ。読みやすいです。

  • タイトル的に仕事が上手くいかず転々として思い悩む話しかと思った。
    主人公は割とどこでも器用にこなす上に、職場は特段悪い人がいるわけでもなかったため、思ったより平和だった。
    変わったエピソードが多かったのでそういう面では面白かったけど、抑揚がない場面もある。

  • 知らない職業のことを知れたり、仕事あるあるに共感したりできる、お仕事小説というジャンルが好きで、この本もそういう体験をさせてくれると想像していたら、かなり違って驚いた。
    まず、いろいろな職種の人が出てくる短篇集だと思っていたら、同じ主人公の続きものだった。1話ごとに違う職場を転々とするのだが、どれも一風変わった仕事ばかり。そして各話でテイストもかなり違う。ほのぼの日常系もあればサスペンスやホラーに近いものもあり、しいてまとめるなら奇妙な味の短篇集といったところか。2話なんかは世にも奇妙な物語に出てきそう。
    実際には存在しないような仕事が多いので、期待とは違ったが、これはこれで面白かった。

  • タイトルだけで共感度100%…!!

    あらすじにコラーゲンの抽出を見守るような仕事、とあったので、ものすごくニッチなお仕事の短編集なのかと思っていたら、連作集だった。

    燃え付き症候群で前職を辞め、ハローワークで短期の仕事を引き受けていく主人公。

    ミスリードさせる意図があったのか、
    前職のことや主人公について、始めは何も語られてないが、話が進むにつれて明らかになっていく。
    てっきり主人公は社会の出世争いに巻き込まれたか、酷いボスの下で働かされて燃え尽きた40代のサラリーマン男性だと思い込んでいたので、途中でさらっと話が出てきた時はビックリした。

    確かにニッチなお仕事だった。けど、一人でやれるが最低限の報連相が必要で、人や社会と関わる仕事内容。
    振り返ると絶妙な復職リハビリ内容。
    ハローワークの人侮れない。
    一番謎が深い人物かもしれない。

  • 2021/8/6
    ずっと同じ仕事してるとどうしても飽きてしまう。
    1か月ぐらい違う仕事がしたい。
    大きい声を出したいので販売でもいい。
    通販の倉庫で出荷作業とかもちょっとやりたい。
    そういう制度あったらリフレッシュになる人もいるだろうに。
    戻った時にありがたみがわかったり。
    そういう気分で読みました。
    みんなちょっと休憩しよう。おつかれ!

  • 仕事のことで岐路に立たされている時、この小説のラストシーンが読みたくなって、時折読み直してしまう。

    一年間で5つの仕事に携わる主人公。
    心身燃え尽きてしまった前職の二の舞は避けたいと言いながらも、彼女の職務への姿勢はいつも真面目で、何かの役に立とうと一生懸命だ。
    その奮闘ぶりが痛々しく感じる時もありつつ、我が身を省みるような親近感もあって、彼女を見守る。

    仕事で打ちのめされた結果、環境を変えて、今度こそ上手くやってやろうと思っても、結局いつもの自分のやり方に戻ってしまう。
    ここならやっていけると思えても、思いがけない変化はある日突然やってくるから、また順応するしかない。

    タイトルの通り、どこで何の仕事をしようが、きっと大差はないんだろう。
    そして頼りになるのは、いつも同じようなことで躓く、愛すべき自分しかいない。

    だからこの本を読むと、ラストの彼女と一緒に深呼吸して、また私の毎日を頑張ろうと思える。
    今度読み返す時は、もうちょっと上手くやれてるといいなと祈りながら。

  • 十四年間勤めた仕事を燃え尽き症候群によって辞めた主人公が、「そんな仕事あるの?」っていうようなニッチな仕事を転々としていきます。
    初めはゆるーく進んでいく感じでしたが、3話目辺りからは「あれ?何これ?面白い…?!」って感じでスルスルーっと読み終えました。

    特に気に入ったフレーズ。
    「職場の人間は、シチュエーションに応じて悪人になるので、常に悪い人というのもいない。」
    「前におった人も、前の前におった人も、本筋の仕事で何かあって公園に来た人みたいやったけど、この仕事で、まぁ働けんねやな、と思って、そんでまた自分の仕事に戻ってったらええやん」

    仕事に対する姿勢や考えでその時その時は対立するかもしれないけど、ある一面を見てその人全てを判断してはいけないし、それが互いに分かっていれば多少のこともスムーズに進むのでは?
    それに、万が一挫折したとしても、世の中にはこんなに色んな仕事があって沢山の人が働いてる、心が壊れてしまう前に逃げて自分を守っていいんだ。

    作者のインタビューでこう仰ってた、というのを他の方が書かれていて納得しました。
    『やりがいのある仕事は人から頼りにされ、誉められたりもしますから、仕事と愛憎関係にも陥りやすい。その結果、好きな仕事に裏切られると、心身ともにバラバラになってしまいます。そういう人が、やりたい仕事ではなくやれる仕事からやってみて、仕事と自分の関係を建て直す。それが、この連作の通底にあります』

  • ずっと気になってましたが、文庫になってて思わず購入。

    おもしろかった!
    前職で燃え付き症候群になった主人公が、リハビリのように仕事を始めるところから物語は始まります。
    動かなくても、単純な作業でも、やはり人の頭は何かを考えずにはいられないのかも、と思いました。
    物語は、「ちょっと不思議」「ちょっと奇妙」なことが織り込まれており、少し怖い感じもしました。苦笑
    びみょーにぞわっと、はらはらっとする感じです。

    色んな人がいて、色んな仕事があって、
    私は私でいまの仕事に発狂しそうになるときがあるから、
    なんか妙に共感してしまうところもありました。
    たまに、すっと心に入り込んでくるような言葉が入ってます。

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著者プロフィール

1978年大阪市生まれ。2005年「マンイーター」(のちに『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で第21回太宰治賞。2009年「ポトスライムの舟」で第140回芥川賞、2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、2019年『ディス・イズ・ザ・デイ』でサッカー本大賞など。他著作に『ミュージック・ブレス・ユー!!』『ワーカーズ・ダイジェスト』『サキの忘れ物』『つまらない住宅地のすべての家』『現代生活独習ノート』『やりなおし世界文学』『水車小屋のネネ』などがある。

「2023年 『うどん陣営の受難』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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