ボクの音楽武者修行 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101228013

感想・レビュー・書評

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  • 貨物船でフランスに渡り、スクーターで旅をして、次々にコンクールで優勝して一気にスターダムに駆け上がった20代の小澤の手記。ざっくりした生活についての記述と音楽についての深いコメントに、読むと元気が出る。

  • 職場に初版年(1962年)に出た第三刷の本があり、(当然かなり時代を感じる雰囲気の本になっています)読んでみた。世界的指揮者、小沢征爾の若かりし日が書かれた本。

    今まで知らなかったんだけど、小沢征爾の留学はかなり行き当たりばったり。知り合いからもらったり、借りたりしたお金を持って、貨物船でパリへ。パリではスクーター生活(これもスクーターの宣伝をするという約束で日本企業からもらったもの)。そこから当時世界で2つしか開催されてなかったらしい指揮者コンクールの両方で1位を取り(しかも応募書類が不備で間に合わなかったのを頼み込んで何とかしてもらったり、ドイツ語が分からなくて集合時間に遅刻したので順番を変えてもらったりと、「今でもそんなこと出来るん!?」というエピソード多数。あと課題曲を間違えてて、1日でスコアの勉強したってのもあったな・・・。それで優勝できるんだから、すごい)、一気に時の人になっていきます。世界のオザワは若い頃からすごかったことがよく分かる。

    音楽の話だけでなく、当時のフランスやパリ、アメリカの話も色々あって今と比べながら読むと面白い。
    あとこの当時(1950〜60年代)から小沢は「日本みたいな小さな国は、これから音楽や芸術などに力を入れていかないといけない」と思っていたことが、印象に残りました。文化的なものを大切にしない国はダメだよ、やっぱり。

  • 今も変わらず柔軟な小澤さんの青年時代。
    まだ20代、しかもいろいろ状況も整っていなかったであろう50年も前のことだというのに、おじることなし。
    音楽はもちろん、遊びも文化も時間も空気も、とにかく何でも吸収してやろうというのびのびと向かう姿が頼もしい。

    何かと縮こまりがちな私としては、ちょっと爪の垢でも煎じて飲ませていただきたいところです(笑)

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「今も変わらず柔軟な小澤さん」
      体調を崩された小澤征爾。復帰出来るくらいに早く元気になって欲しい、、、
      「何かと縮こまりがち」
      良い音楽を聴...
      「今も変わらず柔軟な小澤さん」
      体調を崩された小澤征爾。復帰出来るくらいに早く元気になって欲しい、、、
      「何かと縮こまりがち」
      良い音楽を聴いて、心を柔らかくすれば、伸びやかになるかも←私も、頭も身体も柔らかくしたいです。
      チョッと話はズレますが、村上春樹との対談「小澤征爾さんと、音楽について話をする」が早く文庫にならないかなぁ~と願っています!
      2012/05/23
    • pponさん
      nyancomaruさん
      クラシック、あんまり詳しくないのですが、それでも小澤さんの大らかな雰囲気とか子どものようにおちゃめな笑顔とか、見る...
      nyancomaruさん
      クラシック、あんまり詳しくないのですが、それでも小澤さんの大らかな雰囲気とか子どものようにおちゃめな笑顔とか、見るといつも気持ちのなごむ方の一人です。
      早くよくなられるといいですね!
      村上さんとの対談、読んでみたいかも。
      2012/05/23
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「子どものようにおちゃめな笑顔」
      確かに、タクトを振っている時のお顔からは想像出来ないくらいですよね。。。
      「子どものようにおちゃめな笑顔」
      確かに、タクトを振っている時のお顔からは想像出来ないくらいですよね。。。
      2012/05/23
  •  先日の水木しげる「ほんまにオレはアホやろか」と一緒に買った本
     こちらも「本は人生のおやつです!」の店主に勧められたもの
     どちらも自伝的内容だというのは面白い
     将来についての悩みだったせいからかな

    ***

    著者について

     まず著者について述べる

     著者・小澤征爾は、世界的に著名な日本人指揮者の一人である
     僕はクラシックに関する知識はほとんどなく、あったとしても「のだめカンタービレ」くらいで、つまりは全くの素人なのであるが、ウィーン・フィルやベルリン・フィルの定期演奏会に毎年呼ばれる日本人指揮者が彼だけ(wikipedia出典)であることを考えるときっと物凄い人なのだろう

     きっと天才なのだと思うが、そんな人の自伝を読ませて元気なんて出るのかと正直この本に関しては「本おや」店主のことを疑っていた(すいません)

     だが、その疑念はすぐ晴れることになる

     キーワードは「どんな巨匠も若造だった」

    ***

    著者の履歴

     本書は、書名の通り、著者の武者修行時代を綴った日記風の自伝であるが、どこに修行しに行ったかといえばもちろんクラシックの本場ヨーロッパである

     話は著者の生い立ちから始まる(「そんなにオレはアホやろか」と同じだ)
     満州で生まれ、小学校入学と同時に東京に行き、中学時代にピアノを習う
     その内、レオニード・クロイツァーの指揮を見て指揮者を目指すようになって成城学園高校から東邦学園高校音楽家に再入学
     やがて、短大に進み、そのときヨーロッパで演奏できるはずが資金付属で断念したのをきっかけに自分だけでもヨーロッパに行くことを決意する

     それからが本書の本編である「音楽武者修行」のはじまりである

    ***

    著者の人間性 

     本書を読んでいると著者の人間性が素晴らしいことが分かる
     まあ、自伝なので嫌な思い出をそんなに書く訳もなく、マイペースな著者のことだろうから、他人がどう思っているかはあまり気かけてはいないのだろうけれども、全体に漂う爽やかさは素晴らしい
     どこにいっても人と仲良くなることにかけて著者は一流なのだと思う
     武者修行の出発は港から貨物船に乗って長いことかけてヨーロッパに向かうのだが、その間、船員たちや立ち寄った場所の人びとに気に入られているのだ

     指揮者ってコミュニケーション能力が事の他重要だと思うけれど、名指揮者と呼ばれる所以ってこういうとこにもあるのかなあ

    ***

    スクーター旅行と金の無心

     そんな爽やかな著者、コンクールに出て入選して、有名指揮者たちに指導されて本人の有名になっていく
     正直、コンクールの話や日本時代の友人なんかの話は才能と生まれの話でそこは全く違う世界なので、特に思うところはなかったのだが、何の当てもないままヨーロッパに乗り込んだことだけは本当に凄いことだと思う

     自分がやりたいと思ったことをただやることにかけては水木しげるとも通じると思う(小澤征爾の場合はもっと社会適合者で目的志向もあったが)
     
     当てもなくヨーロッパをさ迷って音楽を聞いていく中で、知人の紹介からたまたま出たコンクールで入選したのは、これはもう偶然なのか元々の能力なのか
     本文では能力については述べない(述べたくてもできない)のでこれ以上は書かないが、この乳腺に至るまでも、奔放な著者の性格が滲み出ているようで読んでいて気持ち良い

     著者が家族に金や物の無心をしているのは面白かった
     入選はしたものの給料を得るまでには時間がかかるため、その間の生活費が必要なのだ

     今は有名指揮者の著者にもまた苦難の時代があったのだと思うと不思議なものである

    ***

    音楽愛

     本書を読んでいると著者のクラシック音楽に対する愛を所々で感じる
     芸術を愛する人間が多いヨーロッパでなぜ戦争なんか起こったのかについて思いを馳せている「戦争は終わっていない」や日本に芸術家を遇する風土がないことを嘆くくだり、日本のクラシック音楽マーケットの小ささを嘆く場面などもある
     
     そう言う箇所を読んでいると本当に著者は音楽のことが好きなのだと感心してしまう

     また、これは音楽とは関係ないが、西洋音楽であるクラシックを愛する著者は日本を飛び出てヨーロッパに飛んだのだが、その著者に対してバーンスタイン指揮者が言ったセリフが印象的だった

     「セイジ、お前は幸福な奴だ。こんな美しい国で育ったなんて…。それなのになんでニューヨークなどに住む気になったんだい?」

     それに対して、著者は本書の中で、「西洋に出たことで日本の美しさを知る様になったので、西洋に出たことは無駄ではなく、むしろ、これからも日本の若者が外国にどしどし行って欲しい」といった内容のことを書いている
     確かに留学した知人などから話を聞くと、日本の良さを語られることが多い
     僕は今までに日本を出たことは一度しかなく、それも3泊4日のグアム旅行くらいだったので、そこまでの差は感じなかった
     だが、それなりの時間、海外で過ごした知人は口をそろえて日本の素晴らしさを口にする

     曰く人の良さとか良質なサービス、美味しい食事などなど
     それは、バーンスタイン指揮者が言った「美しさ」とは違うかもしれないが、確かに日本は素晴らしいのだろう
     本やネットで調べる限り、インフラの充実度、食事の美味しさ、そして季節や芸術など文化面において日本は本当に素晴らしい国らしい

     実感できない自分を少し悔しく思った

    ***

    最後に

     本書を読んで思ったことは一つである
     「行動しなければ何も始まらない」ということだ

     著者は何の当てもなくヨーロッパに行った
     不安も希望もあったろう
     それでも彼は動いたのだ
     「行きたい!」という衝動を抑えずに行動したのだ
     もちろんそうやって行動して失敗した若者もたくさんいるだろう
     成功者の方が少ないのは当たり前だ
     それでも行動しなければ彼は成功できなかったのであり、その行動にこそ価値があると思うのだ

     ビビリ屋の僕としては耳の痛い話なのであるが、それで行動しないで何年後かに後悔するよりは行動していきたいと思わせてくれた本であった

  • 指揮者小澤征爾さんの自伝です。

    優れた自伝を読むと元気が出るのはなぜでしょうか。

    自分が持っているのは文庫版なので棚には並べていませんが、オススメの一冊です。

  • 小澤征爾が死亡してからその追悼として紹介されているほんであった。今から45年前に出版された本であるが面白い。音楽について欧米に行く人には必携のものであろう。

  • 彼は基本的に楽観主義者

  • 前を向いて颯爽と新しい道を歩いていく小澤さんの人懐こい笑顔が見えてきそう
    何度読んでも元気になれる

  • すごく面白かった。
    あっけらかんとした語り口なのに、成し遂げたことがものすごい。
    天才が、頭角をあらわしたまさにその時に、その若き瞬間を振り返るという、希有なリアルタイム自伝。手紙の文章がとてもあたたかい。SNSの時代にあって、手紙のありがたみが、言葉の温かみが感じられる。
    ヨーロッパ、アメリカ、日本文化論としても重要。バーンスタイン、カラヤン評も面白い。つまり、名著だ。

  • 20240404読了

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