流転の海 第2部 地の星 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (494ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101307510

感想・レビュー・書評

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  • 五十歳をすぎてようやく授かったわが子は非常に身体が弱かったので、大阪での事業を処分して、故郷愛媛の南宇和に戻った熊吾。
    それから2年、伸仁は健康になり、妻の房江もまた田舎の生活になじんでいるようで、このまま南宇和で生涯を過ごしてもいいと思いはじめる熊吾。

    しかし、そこに現われたのが、子ども時代の熊吾との相撲のせいで片足に一生残る障害を負った「わうどうの伊佐男」だ。
    特別に残虐な極道となった伊佐男の執拗な嫌がらせに、不穏な空気が全編に渡って漂う今作は、しかしなかなか読みごたえのあるものだった。

    一年の間に熊吾の周辺にいくつもの死が訪れる。
    それは悪いことが起きる予兆のようでもあり、運命の動く転換点のようでもある。

    主人公である熊吾は、器が大きく、先見の明があり、情に篤い人間であるが、反面、短気で暴力的な面もあり、一言では言えない複雑な人物造形はとても魅力的である。
    第一部で、学のないのがコンプレックスと言っていたが、その割には古典や漢文の造詣も深い。
    今は、一人息子の伸仁を無事に成人させることが生きる目標となっている。

    南宇和では人々は貧しく、狭い人間社会の中で、息苦しかったり足を引っ張りあったりもするが、最終的には助け合わねば生きて行けないのだ。
    熊吾はそれを踏まえながら、故郷の人々に金を貸し、力を貸し、知恵を貸す。
    そのことがまた、新たな物語を創り出していく。

    いろんなことにけじめをつけて、時間は熊吾がまた大阪に戻ってくる。
    波瀾万丈な物語はまだ続く。

    仏教では法華経以外の経では、二乗とと女人も成仏を説かなかったのだそうだ。
    女人はさておき、二乗とはインテリのこと。
    なぜ二条は成仏できないのかについての熊吾の見解。

    ”インテリは、他人のことに無関心なやつが多い。他人のために自分の心を傾けたり、他人の苦労を思いやって、何かを行動するっちゅうことがない。いっつも傍観者で、そのくせ屁理屈を並べて、自分よりも知識のない人間を腹の底では見下しちょる。まあ、つまりエゴの塊みたいで、そういう手合いは成仏できんちゅうんじゃ。”

    最近はインテリじゃなくてもそういう手合いはいるなあ、と思った次第。

  • 2018年6月23日、読み始め。
    2018年7月7日、読了。


    ●2023年9月11日、追記。

    5年前に読んだ本か。
    レビューが簡単すぎるので、追記します。

    本作の内容は、次のとおり。

    ---引用開始

    五十歳で初めて子を授かった松坂熊吾は、病弱な妻子の健康を思って、事業の志半ばで郷里に引きこもった。再度の大阪での旗揚げを期しつつも、愛媛県南宇和の伸びやかな自然の恵みのなかで、わが子の生長を見まもる。だが、一人の男の出現が、熊吾一家の静かな暮らしを脅かす…。熊吾と男との因縁の対決を軸に、父祖の地のもたらす血の騒ぎ、人間の縁の不思議を悠揚たる筆致で綴る。

    ---引用終了

  • 主人公のまわりではいろんな事が起こり、ストーリーはどんどん進んで行く。人間の内面を深い考察でえぐって行くところは興味深い。また、ストーリー展開が早く目まぐるしいため、感想というより次の展開が気になる。一つ上げれば、伊佐男からの恨みがどんな風に熊吾に襲いかかり、熊吾はどう対応するのどろうか?と重いながら読み進めたが、以外な結末を迎えた。

  • 第一部を読んですごい小説だなぁと思い、第二部を読んでもやっぱりすごい小説だなぁと思った。一冊、一冊読み終わるたび、一回り人間が大きくなれるような気がする(ほんとになれたらいいんだけど…)。それほど人生訓や印象に残る言葉が数多くちりばめられている。

  • 久々に追いかけている作品‼️
    勿論完結編まで読み続ける‼️

  • 第二部
    舞台は南宇和郡一本松村。
    愛息・伸二の五歳までの成長を軸に熊吾が己の人生の意味を模索する。

    異常な執念で熊吾への恨みをぶつける地元のヤクザ・増田伊佐男との再会。

    伊佐男の画策した闘牛をキッカケに出会った深浦港の網元・和田茂十の、県議選出馬に伴う選挙参謀としての活動。

    茂十の罹患…そしてその死。

    妹・タネとその情夫・政夫の為にお膳立てしたダンスホール。
    政夫の転落死。

    ついに、長きに渡って絡み続けた伊佐男の自死を経て大阪へ戻る決意を固める。

  • 読了

  • 熊吾の人間としての魅力

    男としての魅力により引き込まれる

  • 話を追うごとに、主人公に共感できず、この辺でよいかなと…

  • 病弱な息子のために大阪の事業を畳み、故郷の伊予に帰った松坂熊吾。
    彼と妻の房江、彼らを取り巻く人々。
    そして40年前の熊吾への恨みを晴らすために現れたやくざ者の伊佐男。
    熊吾は彼とどう対峙していくのか。
    圧倒的なキャラクターの熊吾が、美しい伊予の景色の中で描かれる。

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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