流転の海 第2部 地の星 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (494ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101307510

感想・レビュー・書評

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  • 感想は最終巻に。

  • この手のおじさんは苦手なはずなんだが…

    何故か今のところそれほどしんどくない。

    そしてさらに、本を読まない旦那に
    「読んでみたら?」
    と薦めてしまいそうだ。
         まだ教えてあげないが。

    なんでだろう?

    第3部へ

  •  体の弱い妻と息子のために大阪での商売をやめ、神戸御影の家も売り払って、故郷愛媛の南宇和へ帰ってきた熊吾。ここでも存在感あるキャラを発揮する。暴れ牛ややくざも恐れぬ獰猛さを持ちながら、涙もろく人情深い。裏切ったやつでも、あの野郎と思いながらも手をさしのべずにはいられない。会社の金を猫ばばして逃げた男が見つかった。しかもそいつは仲間の女にも手を出していたと聞き、怒りに震えながら会いに行ったはずなのに、不治の病で臥せっているそいつの顔を見るや情がわいて、高額な薬を送ってやるとか、恋人を裏切ってそいつの愛人になった女にも援助の手を差し伸べるとか、なんせ助けが必要な人をそのままにはしておくことができない、困った人だ。
     しかし、このおっさんの長ーい話にあと7話分もつき合うかどうか……それほどワクワクするような話でもないしなぁ。3話めからはまた大阪に戻って新しい商売を始める。うーん、もうどうでもいいなぁ。

     でも南宇和の昭和の情景はとっても良かった。海、川、畑、山、豊富な自然の中で、熊吾が怒りに燃えながら自転車をこいだり、息子とのんびり歩いたりしている光景が映画のように目に浮かぶ。5歳の息子が肥溜めに落ちてフンまみれになった。嫁の房江は素手で鮎をつかみ取りできる。そんなちょっとしたエピソードも心に残る。とりわけ、親子3人で星空を眺めに夜風吹く野原を歩くシーン。熊吾は5歳の息子を肩車し房江と手をつないで歩く。暗い中、花の香りが漂ってくる。その後は息子ひとり家に帰らせ、夜空の下でコトに至るわけだが……。もう故郷に戻ることはないだろうと決心した後の田舎の風景はキラキラ輝いている。


     熊吾は時々哲学的になる。例えばこうだ。
    子は親を選べないのではなく、子は親を選んで生まれてくるのだ。ならば、その二人の男と女を両親にしなければならなかった理由とは何だろう。…とかね。


     もうひとつこの話に入り込めない理由のひとつは、作者の女性蔑視的な視点が垣間見えること。熊吾が狙った女は必ず落とせると自信を持ってることもそうだが、例えば第二部では「釈迦は、生涯にぎょうさんの経を説いたが、法華経以外の経では、二乗(インテリ)と女人の成仏を説かんかったそうじゃ。どんな女も本質的に嫉妬深くて、愚痴っぽくてどろどろの欲望につつまれとるそうな。しかし、もっと掘り下げて女の特徴を見ると、どうも女っちゅうもんは、非はいつも相手にあり、何か事が起こると相手のせいにし、自己反省っちゅうことをせん。」などと言わせてる。えらい言いようだ。釈迦の説法でそういう言葉があるのかもしれないが、解釈はまったく作者のねじ曲がった考え方だと思う。

     

  • 第三部へ。

  • ・2/10 読了.第二部はまるまる愛媛でのエピソードで終始した.それにしても昔の田舎って今の常識からしたら無茶苦茶でこういう雰囲気だったというのが垣間見えて興味深かった.

  • シリーズ第二部。今の私と同じ年齢の熊吾が病弱の妻と幼子を思い、野望を捨て郷里に戻る。剛腕で時には衝動任せに自分を制御できない危うさもありながら、子どもの成長や妻への温かな眼差しや想いが、熊吾の人物造形の骨となる。戦後の秩序が成り立たない地方の煩雑な風景が、幾人もの登場人物たちの肖像によって際立つ。差別、ムラ意識、生まれや生い立ちの不幸や不道徳、人々の無学等々、当時の日本を陥りがちな懐古主義ではなく淡々と描く。熊吾が酸いも甘いも噛み分けて、導き出す抽象度の高い知見が滋味深い。妻房江の寂しさと不安に益々興味。

  • 後書きで北上次郎さんが主人公松坂熊吾について記述して言い得ているのでメモする。『やくざも恐れぬ獰猛さを持ちながら涙もろく、事業の才覚は鋭いくせに自ら進んで人に騙されるお人好し。さしたる学歴はもたないのに古今東西の書を引用し、妻を愛しながら次々に愛人を作り、さらに嫉妬深く、真摯で、知的で、ひとことで言えば、野放図ないかさま師』

    田舎に引きこもったので物語としては静かなものになるかと思ったら、増田伊佐男というヤクザが彼の邪魔をするし、横領した井草を尋ねたり、ダンスホールをつくったり、選挙参謀をしたりいそがしい。動くたびに周囲の人が亡くなっていく。

    松坂熊吾の造形がとにかくスゴイのだが、出てくる人物、事件、風景とも魅力的で細かく小説家見てきたような嘘をつきの嘘のクオリティがとにかく高い。なんというリアリティ。

    『いなかというところは、保守性とか閉鎖性などという言葉でひとくくりにしてしまえない底意地の悪さがうごめいている。思いも寄らぬ陰湿な噂話はたちまちひろまるが、耳に痛い真実は頑固に拒否し、つねに数の多いほうに味方し、体制におもねり、権威に平伏し、人々の顔と腹はいつも異なる。熊吾は、四国の辺鄙な地にある己の郷里を決して愛していなかった。それどころか、ほとんど憎悪していたと言ってもよかった。』

  • 前巻から少し間が空いたが、読み出したらすぐに同じ世界に引き込まれた。サスペンスでもなく、謎解きでもなく、不思議と世界に引き込まれるのはなぜだろう。松坂熊吾は、50を過ぎて初めての子供を授かってから、色々と思い悩み、自分自身のことを見つめながら、物語が展開していく。

  • 2018 1/28

  • 熊吾の南宇和での生活。
    暴力的で、嫌な一面もあるけど、町の人たちからの信頼もあつい熊吾。
    人間は見えているところだけが全てではないと、登場人物皆が教えてくれている気がする。

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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