復活(下) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102060193

感想・レビュー・書評

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  • 本作が上梓されたのは1899年。描かれた時代も同じく19世紀末だとすれば、ロシア革命は、ネフリュードフとカチューシャの生きた時代から30年ほど後、ということになる。カチューシャら刑事犯の他に、政治犯の存在も描かれ、社会の不条理に異議を唱える者たちがいたことが伺える。だが、まだ、貴族階級が社会をおさえる体制に、揺るぎや綻びは表面化していないように思われる。その後、革命の機運がどのように高まり、拡がって行ったのだろう。そうした歴史への興味関心もまた、募るのであった。そして、激動のロシア革命をトルストイに書いてほしかった、と夢想。ネフリュードフらのその後の30年も、トルストイの大作で読みたかった。

    「復活」の下巻では、シベリアへの旅が始まる。徒刑囚カチューシャの道行きを追い、ネフリュードフも旅を続ける。道中、宿営地や監獄の情景がこと細かに描かれ、飽きさせない。
    終盤、カチューシャは、ネフリュードフの思いを受け取ることを拒む。カチューシャは、同行の政治犯シモンソンに添いとげる人生を選ぶ。その場面、ネフリュードフは、カチューシャは、私の人生に負担を強いることをさけるために、自分の求愛を斥けたことを直感した、と描かれる。だが、そうだろうか?という疑念を抱いた。カチューシャは、ネフリュードフを選ばず、同行の政治犯シモンソンへを選んだ。それだけのように思われた。
    また、私には、この場面はあっさりと感じられた。「戦争と平和」におけるナターシャの熱情の描写のような、真実味も臨場感も感じられなかった。そのためもあり、2人のロマンスとしては、少々の失望を味わった。映画なら、もっとドラマチックに描いてくれるだろうな、との思いもよぎった。

    ネフリュードフ公爵は、カチューシャを追ってシベリアへ出立。それに伴い、地主階級の彼は、土地や財産を手放すことも決意する。カチューシャの運命への贖罪、という思い、信念があったことはわかる。それでも、ネフリュードフそこまでするか? という疑念は、終章まで拭いきれなかった。
    また、物語の後半、監獄制度に犯罪抑止の効果は無く、逆に犯罪者予備軍を新たに生み出しているだけだ、とする批判にも紙幅が費やされる。かように筆者トルストイの、ロシア社会のありようへの批判がときおり噴出。その結果、ネフリュードフの行動や人生観を彫りこむ、説得力ある肉付けが追い付かなかったのではないか、という気もしている。

  • ネフリュードフ侯爵はカチューシャが堕落するきっかけを作ったのが自分であったことを悔い,彼女を救わんと奔走するのだが,その過程でロシアの社会の矛盾に気がつき,最後にはキリスト教の教えの立派さを心から納得する,という話.最後,話の終着の全てをキリスト教に丸投げしてしまっているようで,ちょっと不満が残る.ネフリュードフが右往左往する間に,心が正義心,道徳心と,一方,貴族としての快適な暮らしの間で揺れ動いているのが丹念に描き出されるのと一方,カチューシャの方は今ひとつ,その心情の動きが読めないところがあり,彼女がネフリュードフに「あんたはあたしをだしにして,救われようとしているのよ」といったが,彼女はまたこの物語の中でだしにされているように思い,ちょっと残念.

  • 疲れたー。ぶあついが全体としては最後がダメだ。意外にもまるくおさめたった的な感じはトルストイにもあったらしい…個人的にはトルストイ最低の作品。遊びがない。

  • なんとか年内に読み終えることができた。思ってたのとは違うエンディングだったな。当時の社会情勢や不条理がよく伝わってくる作品だった。結局は地位とかお金とか…なのかな。『復活』というタイトルが素晴らしいね。2011/639

  • 4102060197 375p 1992・9・5 21刷

  • レビューは上巻でまとめて。

  • 時代の移り変わるとき、それがひしひし感じられた。
    20世紀の始まりを告げる…

  • 時代背景的に仕方ないとはいえ…。所詮はやんごとなき人々から見た…傍観者的視線を拭い去ることが出来ない…という印象でした。

  • ラブロマンスとしての側面はごく一部で、19世紀ロシアの非合理性・封建制の告発の厚みの方が強い印象を残す。それと戦う手立てがキリスト教の教えと非近代主義というのはいささか違和感があるが。

著者プロフィール

一八二八年生まれ。一九一〇年没。一九世紀ロシア文学を代表する作家。「戦争と平和」「アンナ=カレーニナ」等の長編小説を発表。道徳的人道主義を説き、日本文学にも武者小路実らを通して多大な影響を与える。

「2004年 『新版 人生論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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