- Amazon.co.jp ・本 (458ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102085011
感想・レビュー・書評
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妻は平凡な暮らしに気が狂いそうなほど不幸を感じているのに、夫は妻の気持ちにまったく気がつかないばかりか、これ以上幸せな夫婦はないと思っている。…悲劇だわ。
エマにとってのシャルルのような、存在そのものがイラつく男って確かにいる。仕事できない、デートもつまらない、ゴミの捨てかたがヘタで、脱ぎっぱなしの服をそのまま洗濯に出すような男。
そんな存在に対する感情が、気持ちよく辛辣に言語化されていて痛快だった。
解説によると、フローベールは反面教師的な意味で、エマにシャルルを批判させていたようだ(解釈違いかな? でもそう感じた)
風雨をしのげる家があるだけ、神に感謝すべき。ごもっともな説教だが、それだけでは救われないのも人間の性。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
フローベールは前から読みたかった作家の1人だ。
リアリズム文学と言われるこの作品は悲劇のような気もするが退屈な感じもした。
人生というものは退屈だ。
退屈に甘んじることができない人生もまた退屈で平凡なのかもしれない。
そこにリアルがある。
それこそが人生の味わいだと思う。
そこを書いているこの作品はやはり面白い。
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よく思うのですが、女性が妻となり、家庭を守るという行為は、外に出て荒波にもまれながら、家庭を同じく守る夫とは対照的な苦痛があると思うのです。
さまざまな変化を社会という人ごみの中で体験する変化への苦痛と戦う夫と。
何も変化が無く、単調な家事を繰り返し、黙殺されそうになっている妻。
対極に居るから「だから男は」「だから女は」と、口論が絶えないんだと思います。
まあ、根本はそういう所が男女の相いれない原因の一つなのでしょうが、最終的には人間的な性格の問題ですよね。
大げさにそんな事を言っておいてなんですが、エマは私と違って、外界からの刺激を好む女性で、生活に圧迫されて年をとっていくのが耐えきれない、旅人気質を持っていました。
だからこその不倫と発狂、自己中心的な自分の理想とする世界を、現実に花開く事が出来ない事へのジレンマは、まるで子供がだだをこねているように見えました。
時代が違うので、その時の時代の習慣や、当たり前の事を私はよく理解していないのですが、あまりにもシャルルがいい夫でいたので、エマのその自由奔放な生き方が更に浮き彫りになってしまっているように思えるのです。
やっぱり、死んだ後に、残された人の気持ちを考えるっていうのは難しいんでしょうね。特にエマなんて、絶対にかんがえる暇も、機会も全て死ぬ直前に花火のように、気まぐれに光って後は消えてしまう。
シャルルの魂を、エマが自ら滅ぼした手でつかんで、引きずり上げてしまい、娘一人が生きる事になりましたが…
どうか頑張って生きて欲しいです。
自分自身だけではなく、自分を大切に思っている人も不幸にしたエマ。
誰かを思う事は、誰かの為に痛みを我慢し、耐える事が必要なんだと思いました。 -
何はともあれ読み切った。
何だこの小説、不愉快なやつばっか出てくるな。
不倫をする人の自分勝手な理論が目白押しである。
貞淑との間で迷ったりするけど、それも含めて自分に酔っていて楽しそうだ。 -
面白かったー!
話の内容としては美人な妻が夫とのありきたりな生活に飽きてしまい、不倫を繰り返すと言う
単純なお話なのですが、もう描写が凄い!
細かくて丁寧で、それでいて飽きない。
長く読まれている理由がわかります。
ボヴァリー氏、滑稽ではあるけど、愛すべき人だと私は思うけどなぁー。 -
古典なので当然ですが、話の筋は実に古典的な不倫モノです。しかし精緻で目の前に情景を広げさせ、人物を浮かび上がらせる描写が光ります。恋する乙女のまま妻となり、結婚の理想と現実の落差と凡庸な夫に苛立ちを覚え、背徳に身を崩す作中のエマが実に人として最低で、実体のある生々しい存在感を放ちます。今では凡庸といえる筋書きでも文章で読者を離さない作者(翻訳者も含めて)のテクニックに驚くばかり。好きか嫌いかではなく、凄いと感じる作品でした。趣味で小説を書く人はもちろん、読むだけの人でも一度触れておいて損はないと思います。
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いいひとなんだけどすごくつまらない人っている。
善良すぎて毒気がないというか。
そういうひとと結婚したら退屈だろう。
エマのように、刺激が欲しくなって、
異常な量の贅沢な買い物に走ったり、
舞踏会に繰り出したり、不倫愛に狂ったり。
そういう気持ちもわからないではない。
けれど人生のほとんどは舞踏会とか熱い恋愛で
構成されているわけではなく、
生活で構成されているわけであって。
その生活を人々は愛し、あたたかな気持ちを持つ。
そういう気持ちがわからないと
ずっと現実逃避を続けることになるのかなと思った。
でもエマは逃避しきって終わったから
それはそれでいいかと思う。
哀しいけれど、一貫性があって、
やりきった感のある人生。あっぱれ。