善人長屋

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 81
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103003144

感想・レビュー・書評

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  • 9編の連作短編集。
    善人長屋という通り名に反して、店子達はいずれも裏稼業を持つワケアリな人物ばかり。
    善人長屋でただ一人の素っ堅気でお人好しの善人、加助の持ち込む厄介事に巻き込まれる店子達。
    所々でほのぼのとしたものを感じさせながら描かれるドタバタ人情話で、どのお話も面白かったです。
    店子達それぞれが何故裏稼業に身を置くようになったのか、何を抱えているのかということも物語の中で自然な形で語られていて、読み進めていくうちに愛着がわいてくる。
    ラストは切なく、苦味を感じさせる形ですが、良い終わり方だと思います。

  • 泥棒やスリなどの小悪党が寄り集まってすむ長屋が《善人長屋》と呼ばれる矛盾。
    しかし、善は善、悪は悪と簡単に割り切れないのもまた真実なのだ。

    この長屋に住む人々は、人様には言えない裏稼業を持つ者ばかりだが、困っている人を放っておくこともまたできない。

    ここに手違いから住むことになってしまった一般人であるところの加助のおせっかいに巻き込まれてしぶしぶ手を貸すというのは事実だが、人の難儀に共感するという点においては、やはり常人には計り知れない奥深さを持っているのがこの長屋の住人たちなのだ。

  • “真面目で気のいい人ばかり”と噂の「善人長屋」。しかし陰に回れば、差配も店子も裏稼業の凄腕揃い。そんな悪党の巣に、根っからの善人、加助が迷い込んだ。人助けが生き甲斐で、他人の面倒を買って出る底なしのお人好し…。加助が持ち込む厄介ごとで長屋はいつも大騒動、しぶしぶ店子たちは闇の稼業で鳴らした腕を揮う。

  • 善人長屋という通称とは逆に、裏稼業を持つ人々が住まう長屋にお人よしの塊のような加助が仲間入りしたことにより、長屋の人々が通称通りの善行を行うはめになる。
    文吉とお縫の関係や、加助の後添い探しなど、続編を読むのが楽しみ。

  • 時代設定されているんだけど、時代背景が感じられなくて、
    棒読みに感じてしまい感情移入できない。

  • 裏稼業を持つ者たちばかりが住んでいる長屋に、一人の本物の善人がひょんなことで紛れ込み、裏稼業の腕を使って皆が人助けに奔走する羽目になる。

    普通の人情時代劇モノだが、「今春屋ゴメス」のように設定が良い。この設定だけで面白そうな読み物だと窺える。実際、文句なく面白い。長屋の住人それぞれの裏稼業のスゴ腕を見せ付けてくれるのも痛快だし、各話の人情ストーリーにも泣かされる。9話の短編集だけれど、どれも外れがない。そして、書き下ろしの最後の2編で善人の加助自身の妻子問題が解決。上手く裏稼業と絡めてあって、見事でした。
    このシリーズも続編があるようなので楽しみ。

  • 久々の時代物。ミステリと迷ったけど、とりあえずその他小説にカテゴライズ。

    長屋の住人全員が何らかの裏家業に携わっている千七長屋。そのせいか表では親切を働き、善人長屋と呼びならわされているところに、本当の善人が住むことになり、そこで起こる騒動の話。
    起きる事件や解決のしかたはまるで違うけど、ちょっとナメクジ長屋を思い出しました。
    恋を恋と気づいてないお縫と文吉が可愛い。
    続きが楽しみです。

  • 人情時代小説9編、舞台は質屋千鳥屋店主儀右衛門が差配する千鳥長屋こと善人長屋。善い人ばかりが住むと評判の長屋だが、実は長屋の住人は、裏稼業を持つ「悪党達」の巣、差配の儀右衛門は盗品を捌く窩主買(けいずか)い。髪結い床の半造は情報屋(ねたもと)。唐吉、文吉兄弟は美人局(つつもたせ)。裏稼業を知らぬ錠前職人の加助が住み始め、人助けが生き甲斐の加助が面倒を持ち込むたびに、長屋の衆は裏稼業の凄腕を活かし、しぶしぶ事の解決に手を貸すが…加助には妻子が大火事で亡くすという辛い過去が有ったのだが……実は…。
     
    悪党の住む長屋が善人長屋と呼ばれる事と、父親の裏稼業を快く思っていない一人娘お縫が、根っからの善人と見抜いた加助が持ち込む厄介ごとに積極的に加担し、長屋の衆の裏稼業の凄腕を当てにしていくのが、面白い。『抜けずの刀』が感動作。加助の終盤の心情が切ない。

  • 再読。

    表向きは善人長屋…
    でも実はみんな裏稼業持ち(小悪党)の長屋に
    何の手違いか???本当の善人、
    お人好しの錠前師・加助が越してきた。

    加助は困った人を見ると放っておけない性質で
    見ず知らずの人の厄介事でも引き受けてしまう。

    加助は長屋のみんなが善人だと信じてるので、
    困った事があっても長屋のみんなが助けてくれると思っていて
    結局、なんだかんだ言いながらも
    長屋のみんなも自分達の裏稼業がばれないように
    加助の厄介事に手をかしてしまう。

    加助が越してきて"善人長屋"の株がまた上がる!!(笑)

    それぞれ特技を持った子悪党たちが
    加助に振り回されるが…
    いかにも江戸って感じの粋な人情話。
    小悪党と言ってもみんな気持ちは真っ直ぐ。

  •  裏稼業というと、あの‘必殺シリーズ’を思い出しましたが、それはいい意味で裏切られました。
     質屋を営む儀右衛門の娘・お縫がとても素直で可愛い。
     各編に法で裁けぬ‘真の悪人’達が登場し、小気味良いほどに裁かれ(?)ます。小悪党たちの活躍ぶりには気分がスカッとしました。そしてそれぞれの人情話は温かくて、お縫と文吉の会話もテンポ良くて楽しいです。
     その行く末が気になる文吉とお縫の会話をもっと楽しみたい。
     続編がありそうな気配を感じたけれど、どうだろう。

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著者プロフィール

1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー。12年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞、15年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞、21年『心淋し川』で第164回直木賞を受賞。著書に『九十九藤』『ごんたくれ』『猫の傀儡』『銀杏手ならい』『無暁の鈴』『曲亭の家』『秋葉原先留交番ゆうれい付き』『隠居すごろく』など多数。

「2023年 『隠居おてだま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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