ひとりでカラカサさしてゆく

著者 :
  • 新潮社
3.29
  • (27)
  • (106)
  • (142)
  • (41)
  • (12)
本棚登録 : 1800
感想 : 137
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103808114

作品紹介・あらすじ

ほしいものも、会いたい人も、ここにはもうなんにもないの――。胸に迫る長編小説。大晦日の夜、ホテルに集まった八十歳過ぎの三人の男女。彼らは酒を飲んで共に過ごした過去を懐かしみ、そして一緒に猟銃で命を絶った。三人にいったい何があったのか――。妻でも、子どもでも、親友でも、理解できないことはある。唐突な死をきっかけに絡み合う、残された者たちの日常。人生におけるいくつもの喪失、いくつもの終焉を描く物語。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ブクログの皆さま、新年明けましておめでとうございます。
    今年もどうぞよろしくお願いいたします。
    そして本年も皆さまにとってよき1年になりますように!


    久しぶりに江國さんの単行本を買いました。
    大晦日の話しらしいので年末に読みたいと思ったのです。

    篠田完86歳、重森勉80歳、宮下知佐子82歳の三人の老人が大晦日の夜に都内のホテルの一室で猟銃自殺をする話です。
    三人の関係は1950年代の終わりから同じ美術系の出版社に勤めていた仲間でした。

    久しぶりに読んだ江國さんの新作ですが、やっぱりディティールは好きでした。
    三人が最後に摂るホテルの食事のステーキとフレンチフライ、特製ミートパイは本当に美味しそうで、最後の晩餐にふさわしいのかと思いました。

    完爾たち三人の話より、遺された家族や係累たちの話の方が長いのですがやっぱりなぜ三人は一緒に死んだのかが一番気になるところでした。
    三人三様の理由も語られていますが本当にそんな理由で三人集まって、次の日のニュースになってしまうようなことを人間はするものかと疑問に思いました。

    印象的だったセリフ(メイルの文章)があります。
    葉月「そんなふうに思える人が、私には全然いないので」
    朗子「いないほうが断然健全です。あの三人だってたぶん。一緒に逝きたいと思い合って、逝ったわけではないと思うのです」

    三人の仲がこれほど親密でなければ、このようなことは起こらなかったかもしれないと思いました。

    • まことさん
      naoちゃん。

      私は、年齢ははっきり言えませんが、やっぱりnaoちゃんと呼ばせていただきますね。
      これからもよろしくお願いいたします!
      naoちゃん。

      私は、年齢ははっきり言えませんが、やっぱりnaoちゃんと呼ばせていただきますね。
      これからもよろしくお願いいたします!
      2022/01/01
    • くるたんさん
      まことさん♪
      あけましておめでとうございます。

      すごく惹かれるレビューです。
      江國香織さん、ほとんど読んでいないだけに興味津々です。
      図書...
      まことさん♪
      あけましておめでとうございます。

      すごく惹かれるレビューです。
      江國香織さん、ほとんど読んでいないだけに興味津々です。
      図書館すごい予約だろうな〜。

      今年もよろしくお願いします✧*。(ˊᗜˋ*)✧*。
      2022/01/03
    • まことさん
      くるたんさん。
      新年明けましておめでとうございます。

      江國香織さんは、私は、童話や詩、エッセイの方が好きです。
      まだ、読まれていないのなら...
      くるたんさん。
      新年明けましておめでとうございます。

      江國香織さんは、私は、童話や詩、エッセイの方が好きです。
      まだ、読まれていないのなら、おすすめです。

      今年もどうぞよろしくお願いいたします!
      2022/01/03
  • 大晦日の夜、ホテルに集まった八十歳過ぎの三人の男女。
    三人はホテルで猟銃自殺する。

    とても衝撃的な出来事で、残された者が右往左往するのかと思いきや、そうでもない。
    苦悩する、激昂する、罵詈雑言を浴びせる、呆れる、いろいろな想いはあれど、皆まるでそんなことあったか⁇という感じで淡々と日常を過ごす。

    何の感情の変化も無いようである。
    そういうものなのか…
    いや、そうするしかないのだろう。
    彼らのことばを聞くことはできないのだから。

    1950年代の終わりに知り合った三人が、一緒に終わりを迎えるということの理由…。
    それがどうしてもわからなかった。

  • ◆一人一人の日常と孤独[評]重里徹也(聖徳大教授・文芸評論家)
    ひとりでカラカサさしてゆく 江國香織著:東京新聞 TOKYO Web
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/157055?rct=book

    江國香織 『ひとりでカラカサさしてゆく』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/380811/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      大晦日の夜、80歳過ぎの男女3人がホテルの一室で「猟銃自殺」…決行する直前、彼らは何を話したか | 文春オンライン
      https://buns...
      大晦日の夜、80歳過ぎの男女3人がホテルの一室で「猟銃自殺」…決行する直前、彼らは何を話したか | 文春オンライン
      https://bunshun.jp/articles/-/51851
      2022/02/08
  • 大晦日に、3人の老人(勉、完爾、知佐子)がホテルで猟銃自殺し、それを機に知り合ったそれぞれの家族や近親者のその後の様子を描いた物語。

    近親者たちは皆、衝撃を受けるが、生前疎遠になっていた人たちが、却って故人のことを身近に感じたり考えたりしながらも、日常が過ぎていく様子が描かれる。
    個性的なというか、翻弄なタイプの登場人物が多いのは、猟銃自殺という奇抜なことをやり抜いた人たちの何かを受け継いでいるからかなぁなどと思ってしまった。

    一方で、残された人たちの日常の合間に、勉たち3人の最後の夜の描写が入るので、自殺に至った経緯なども明かされるかと期待したが、そこは曖昧なまま終わり。少しモヤモヤもするが、それも含めて江國ワールドっぽい。

  • 大晦日の夜、ホテルに集まった八十歳過ぎの三人の男女。彼らは酒を飲んで共に過ごした過去を懐かしみ、そして一緒に命を絶った。三人にいったい何があったのか。とインパクトのある紹介文が掲げられているが、内容は三人に関わりのあった人々の故人への思いで構成されている。静かに綴られた語りから「三人にいったい何があったのか」への答えは描かれていない。
    そういうものなのだろう。子どもでも親の全てなど分かっていない。自分に向けられる親の顔しか知らない。
    その上、あんな死にかたをされたら、残された人々は悩むだろう。
    りゅうとした三人の老人像から、こんな人騒がせな死に方はイメージに合わなくて、違和感が残ってしまう。

  • 出版社で同僚だった80代の三人の男女が、特に悲壮感もなく一緒にこの世を去る。末期癌の一人と共に思い出の幕を閉じるためなのだろうか、理由は分からない。
    物語は不可解な死への痼りを抱いた家族や縁のある人々のそれぞれの胸中と日常を綴る。奇抜なプレリュードに戸惑いながら、その後は静かにレクイエムが流れているような物語でした。

  • 誰もみな、雨の中「ひとりでカラカサさしてゆく」しかない、ということなんだろう。そこにはすごい諦念があるように思うのだが、荒んだ感じではないところが、著者の小説の特徴なのかもしれない。

    長年の友人であった老人三人(男二人女一人)が一緒に死のうとするのは、まあ全くわからないわけではないけれど、なぜここまでショッキングな形(ホテルで猟銃自殺)なのか、納得できるような説明はされない。その波をかぶる周囲の人たちがいろいろ登場するが、特に誰かに焦点があたることはなく、共感を誘うような人もいない。断片的とも言える描写は、人生はそうそうわかりやすく変わったりしないという意味合いなのだろうか。もやもやふわふわとした読後感が残った。



    オマケ
    自死する三人のうちの一人知佐子さんが、「雨ふりお月さん」の歌詞について「子どものころ、お嫁にゆくのはお月さんだと思ってた」と話すくだりがある。そう!私もずっとそう思ってた。お嫁になんか行くはずのないお月さんをちょっとからかってる歌なんだと。曲調も詞も好きな歌で、この本もタイトルにひかれて読みました。

    • niwatokoさん
      この作品すごく気になっているのですが、タイトルを見て、まったくたもひさんと同じく『誰もみな、雨の中「ひとりでカラカサさしてゆく」しかない、っ...
      この作品すごく気になっているのですが、タイトルを見て、まったくたもひさんと同じく『誰もみな、雨の中「ひとりでカラカサさしてゆく」しかない、ってことなんだろう』と想像したら、なんだか怖すぎて手が出ないでいます。『荒んだ感じではない』ときいて、読んでもいいかなと思えてきましたが。やっぱりもやもやしそうな気もします…。
       そういう世代なんでしょうが、なんだかもう諦念というか、終わりが見えるような話が多い気がして、ちょっと気が滅入ります。しかたないんですが。
      2022/02/25
    • たまもひさん
      ほんとにねえ、小説とか読む人もどんどん高齢化しているせいか、自分がそういうのばっかり目に入るせいか、たそがれた雰囲気のものが多いような気がし...
      ほんとにねえ、小説とか読む人もどんどん高齢化しているせいか、自分がそういうのばっかり目に入るせいか、たそがれた雰囲気のものが多いような気がします。別にむやみに明るいのがいいとは思わないけど(むしろイヤだけど)、少しだけ元気になるようなのも読みたいかなと思ったりします。
      江國さんのはやっぱり独特の世界で、淡々と乾いた感じ。ウェットな寂しさや悲しさはあまりなくて、そこが持ち味なんだろうなと思いました。
      2022/02/25
  • 江國香織さんが大好きだ。
    新しい作品を読むたびそう思うし、再読の度にも思う。おなじことを思うのだけど、毎度のその思いは深くなるし、自由に軽くなる気もする。


    新年を迎える前に、ホテルの一室で三人の男女が猟銃で自殺をした。
    このお話はその三人の、家族、友人、教え子の感情の混乱からの収縮、その中に編み込まれていく新しい物事が描かれていく。
    病魔にあらかた体をとられた男性。やり残したことがなくなってしまった女性。お金がすっからかんになった男性。三人は収束に向かってどんな会話をしたのか、と、その出来事から周りはどう変質したのか。


    物語の登場人物はなかなか多い。最初はどの人が誰の親族だったか、どんな家族構成だったか、ふわふわしてしまった。でも流れで思い出したり、思い出さなくてもいいかと、読み進めたり。
    それぞれの物語も当たり前のように途中ではじまり、そのままこの本は終わってしまう。
    知佐子さんの孫の獣医さんは身重の妻と一緒に暮らすことにしたのか(意外に家に迎えてしまえば肩の荷が降りるかもしれない。産んだ方だけど、わたしはそうだった)、藍洙の息子の問題なんてラスト間近で湧いてはその泡が壊れはじめる瞬間でフェードアウトしてしまう。物語の説明にコロナとはいらなくても、自然にこの日々の描写が織り込まれるようになったんだな、とも思った。
    何となく、江國さんの懐かしい文章の書き方が、さらに磨き上げられている、と感じる文章だった。
    読み初めから(物語のセンセーショナルさは置いといて)気持ちの上がる文章で、いつもはこんな大事件があまり起きないお話が多いから驚きつつも、事件が起きても起きなくても、この作家さんの世界は変わらないんだなと嬉しくなった。

    今年初の読了。相変わらず遅いなあと思いつつ、今年も好き勝手に読んでいたい。
     

  • 三人の老人の人生の終焉と、残された人達の日常。
    物語は江國さんらしく淡々と綴られ、猟銃自殺という衝撃的な出来事もすんなりと受け入れてしまう。

    結局のところ、人は生まれてから死ぬまでずっと一人だけれど、それは決して嘆いたり悲しんだりするべきことではないと思う。

    2021年最後の1冊。大晦日の1日で一気に読んだ。
    私は江國さんの描く女性(特に老女)が好きだと、あらためて思う。

  • 大晦日、東京駅近くのホテルのバーラウンジに集合した、垢抜けて知的な三人のシニアたち。
    幼い頃には戦争を体験し、高度経済成長期も、バブル期もその崩壊もくぐり抜けてきた世代。
    一時期同じ出版社で編集者として働いた縁で、その後も「勉強会」を続け、生涯を通じて友であった。ちょっと男女の関係もあった、男二人、女一人。
    まあ、なんて素敵、シニアのトレンディドラマ?・・・なんて思っていたら・・・
    やらかした。
    結構な衝撃である。

    シニアたち三人の大晦日の一日と、家族たちの「その後」が交互に描かれる為に、時間軸が行ったり来たりするが、それでも自然で読みやすい。

    逝く人たちには「今まで」があり、それを大切に守るために、巾着の口を閉じるようだ。
    残された人たちには「これから」があり、まだまだ蜘蛛の糸のように紡がれていくから、結末は描かれない。

    老人たちが投じた一石により、澱んだ水面に波紋が広がっていくような感じがする。
    連絡を絶っていた家族がまた縁を取り戻しつつあったり、意外な顔合わせで新しい関係が生まれたり。

    「もう十分生きました」そう思っても、あっさりと死なせてくれないのが人の世の倫理観であり、現代の最先端の医療である。
    最高のタイミングで死ぬことはとても難しい。

    三人のシニアが選んだやり方が、正しいのかどうかは分からない。
    しかし三人は、生き方として、その死に方を選んだのだろう。

全137件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

江國香織の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×