湖の女たち

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104628070

感想・レビュー・書評

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  • 老人介護施設で起きた殺人事件を発端に、過去の薬害事件や満州での少年少女殺害事件などが絡み、どう解決するのか一気読みでした。731部隊が出てきた時は、どこまで物語を広げるのだろう、と驚きましたが。刑事の人間性の歪みが全く好きになれない。それは佳代も同じでした。読後も全くすっきりせず。重い余韻です。

  • 松本清張作品を彷彿させるような人間の欲望や社会をうまく織り交ぜたミステリー、エロスなどを取り込んだ作品で、なんとも言えない重厚感を味わいました。

    100歳の男が死亡した事件。これを皮切りに様々な人間たちの渦巻く欲望が交差していきます。
    基本的には3人(途中もう一人加わります)の視点を入れ替えながら、進行していきます。

    一人目は、介護士の豊田佳代。死亡した男がお世話になっていた介護施設で働く。恋人はいるが、冷めた関係である。愛を感じない日々だったが、ある事を境に刑事と求め合う関係になっていきます。

    二人目は、刑事の濱中圭介。死亡事件を捜査する刑事。妊娠中の妻がいるが、ある事がきっかけで、介護士と不倫してしまう。

    三人目は、記者の池野立哉。最初は別件で取材をしていたが、段々と死亡事件と繋がることに。

    序盤は死亡事件の捜査なのですが、次々と予想もつかない展開が出てきたので、世界観に引き込まれました。途中まではこれって「湖の女」じゃないの?と思うくらい、題名に違和感がありましたが、後半から増えていくので、意味合いがグッと深まっていきました。

    今の状況では満たされない欲望が、これでもかと描かれていて、個人的には理解に苦しみました。
    不倫に至るまでの道のりが唐突過ぎて、これで発展するんだと衝撃を受けました。欲望の果てに見える「愛」の形は、当事者にしかわからないものであり、理解不能でもありました。
    「愛」を描くだけでなく、事件としても欲望が渦巻いていました。真実がどんどんねじ曲げられていき、あたかもそれが真実かのように変換していく。自分を守るために人間の本性が次々と表れていくので、腐っているなと思ってしまいました。
    全体的に不穏な空気感で、嫌な気分にもなりました。

    上手い具合に現実に起きた出来事や発言を取り込めながら、作品と融合しているので、リアル感もありましたし、重厚感も感じました。

    事件はどうなるの?と思いながら、読んでいましたが、最終的には・・・ちょっと残念かなと思いました。
    真相は闇で、なんとなく分かるような真相でしたが、個人的にはっきり示して欲しかったなと思いました。
    そういった意味では、同じ作者の「犯罪小説集」を読んだ後味に似ていました。

  • 人間には二種類いる。堕ちたいと望むヒトと、堕ちることを望まないヒト。後者は多分、普通に生きている多くの人々。
    なぜ、自ら堕ちていくことを望むヒトがいるのか。堕ちた先に何を求めているのか。堕ちていくときヒトは何を思うのか。

    吉田修一はいつも自ら堕ちていくことを求めるヒトの業を描く。情け容赦なく描き出す。
    業の中にある狂気。狂気のはざまにある愛。そこにはうかうかと手に取ったことを後悔するような痛みがある。

    実際に起こった二つの事件をモデルに、湖のそばで生きる女たちの選んだ道が描かれる。
    その道を選んだ理由も意味も、誰にもわからない。多分、本人たちにさえも。
    うっすらとした怖さが残る、凛としたラストの風景。そこにあるものを知りたい、でも知るのが怖い。

  • もう少し事件の方に焦点をあてて欲しかった。

  • 2人の変態プレイ随所に出てくるけど
    圭介のドSさといい、そもそも必要⁇
    731部隊やら枝話がとっ散らかって広がるけど
    まとまらず、根幹の話の筋もなんのことやら…
    読んでる最中はそこまでつまらなくはなかったけど
    なんだかなぁ…

  • 2024年5月映画化
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50233817

  • 初めて吉田修一作品で脱落しそう。入りから入り込めない。

  • ツッコミどころが多くリアリティなくてびっくり。
    おもんな!!
    作品紹介に騙されたっ!!

  • いや、ダメだよ、ダメ。と思いながらも読み進めてしまいました。

    なんというか、登場人物にツッコミどころ満載で。

    いや、それは違うって!という場面が沢山あるのですが、スッキリと終わらない的な。

  • 介護施設で100才の男性が急死し、事件性を疑った家族が警察に通報、その事件を巡り物語は展開する。事件は平凡だが、その被害者の過去が暴かれると。。この物語はいくつものテーマを扱っているのだが、いずれも中途半端で消化不良となる。本筋の最後も説得力や納得感がない。最後まで読ませる筆力はさすがだが、なんとなく輪郭がボヤケた小説。。

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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