論争 関ヶ原合戦 (新潮選書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106038877

作品紹介・あらすじ

通説・俗説・珍説を徹底論破! 「天下分け目の戦い」の真相を解明する。「淀殿や三奉行は三成派」「直江状は偽書」「小山の評定は後世の創作」「戦は一瞬で終わった」「関ヶ原は戦場ではない」「問い鉄砲はなかった」……。四百年を経た今も日本史上最大の野戦について激しい論戦が繰り広げられている。そのうち、注目を集めた新知見を、第一人者である著者が吟味し、総合的な歴史像を構築する。

感想・レビュー・書評

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  • 関ヶ原合戦に関する最近の新説を丁寧に覆していく。小山評定はなかった→あった、関ヶ原合戦は開始すぐに終了→夜明けから昼頃まで続いた、直江状は偽書→実在、など。ただ、ポイントはスタンスの違い。さまざまな新説は、史料を読めてなかったり、二次史料を一律に排したり、よくできた話は史実ではないと切り捨てた地点に立脚してるとし、二次史料も史実をあらわしてることがある、よくできた話だからと切り捨てないとして立論。ただ、この二次史料は真実らしい、というさじ加減は専門家でないと判断つかない感触で、一読者には是非を判断できない。ある説をとるとらないは、そのさじ加減に左右される印象を持った。西軍二段階決起説は著者の立論の肝で、鮮やかな手つきの論証と見受けられた。最終的には、家康に協調するスタンスをとりつつ、他方では秀頼と豊臣家に対する忠誠心にゆるぎない豊臣系武将こそが、東軍の主戦力であるというところに関ヶ原合戦の壮大なパラドックスが存していた、それが徳川幕藩体制260年に大きな刻印を残した、と。また自分のKindleに入れていた白峰旬編「関ヶ原大乱、本当の勝者」、渡邊大門「関ヶ原合戦は「作り話」だったのか 一次史料が語る天下分け目の真実 」とあらためて見比べると違いも際立っておもしろかった。

  • 大変面白い、というか興味深い。

  • 関ヶ原合戦について、これまでの研究成果を踏まえ関ヶ原合戦の全体像を描き、著者の見解とそれへの異論を中心として論点が整理されている。合戦前後の複雑な事態推移が分かりやすい。ただ論拠の明示が少ないので、他とも読み比べてみたい。

  • 今までのイメージとは違う点がいくつもある。
    小山評定にしろ、合戦後の論功行賞知行替えなど。
    小山評定の時点で豊臣恩顧の大名は「内府ちがひの条々」についてまだ知らなかったというのも見逃せません。
    そしてこの合戦が完全に東西雌雄を決する合戦とは一概には言えない。
    秀忠遅延の件も家康からすると頭の痛い問題だった。
    徳川主力の本体が不在なのである。
    遅延が無ければもっと早く雌雄が決していたかもしれないし、豊臣恩顧の大名の知行が大きく増える可能性が低かったかもしれない。
    しかしそれでもほぼ一日で雌雄が決するとは家康も三成も思っていなかったことであろう。
    この勝利により家康の天下統一が完全になったとまでは言いがたいというとこ。
    合戦後の知行替えも公式文書はなく口頭伝達であったという点。
    そして、外様(豊臣恩顧)だから遠方に配置されたという思考も見直す必要がある。
    (秀忠遅参ゆえ豊臣恩顧大名が活躍するしかなかった)
    島津と毛利についてもっと大きな処断ができていれば幕末はもっと違った歴史になったかも?
    佐幕派としてその点もとても気になります。

  • これぞ日本史のダイナミニズム。最新の知見から振り返る関ヶ原の戦い。

    講談、映画、ドラマから歴史小説など定説となっている部分も多い戦国時代。実際のところはどうだったのか、それを一次資料を基に見直していくのが歴史学。本書は三成襲撃事件の実態、直江状の真贋、三成と兼続の事前通謀の有無や最近出てきた関ヶ原合戦は瞬時に終わった説などを検証する。

    400年以上たっても覆ることの多いのが歴史の面白いところ。ただしフィクションにもそれなりの面白さがあるので、うまく割り切って楽しんでいきたい。

  • 史料を解釈して論理を繋げるってのはこうやってるんだ、というのがわかる本であった

  • 東2法経図・6F開架:210.48A/Ka73r//K

  • 書評はブログに書きました。
    https://dark-pla.net/?p=3668

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著者プロフィール

国際日本文化研究センター名誉教授、大阪学院大学法学部教授。博士(文学)(京都大学)。専攻は日本近世史・武家社会論。主な著書に『主君「押込」の構造』(平凡社)、『士(サムライ)の思想―日本型組織・強さの構造』(日本経済新聞社)、『武士道の精神史』(ちくま書房)、編著に『徳川社会と日本の近代化』(思文閣出版)、『徳川家康─その政治と文化・芸能』(宮帯出版社)ほか多数。

「2020年 『信長の自己神格化と本能寺の変』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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