新書で入門 ジャズの歴史 (新潮新書 203)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106102035

作品紹介・あらすじ

書斎のジャズ、酒場のジャズ、演じるジャズに語るジャズ-ジャズって何だ?百人いれば百通りのとらえ方があり、定義するのも難しい。奴隷制度から禁酒法、二度の大戦、黒人運動、ベトナム戦争、そしてポスト・モダン-。誕生からほぼ一世紀、アメリカ現代史とともに、ジャズは人種、文化の衝突と融合のなかで、自在にその姿かたちを変えてきた。ジャズ評論界の第一人者による、ジャズ入門書の決定版。

感想・レビュー・書評

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  • 『ジャズの歴史』

    ジャズの歴史について、南部奴隷の時代から歴史的な事象や当時のスーパースターに絡めてストーリーを語る本。ジャズ喫茶でジャズに詳しいおじさんが、延々と話しているイメージ。
    個人的に面白かったのは、ジャズの文化はそれ即ちアメリカの歴史でもあるということ。
    ジャズの起源という観点では、アフリカン・アメリカンが奴隷制度の下に南部アメリカでコミュニティを形成する中で、ある種のクレオール文化的に生まれたのがジャズである。
    南北戦争で北軍が勝利した際に、奴隷から解放された多くの黒人が、南部から引き揚げたマーチ隊が質屋に売り払った楽器を手に取り、土着的な音楽から、ある種の編成的な規律を持った音楽性を獲得する。
    最初のジャズの都はニューオーリンズであり、ニューオーリンズの売春宿の近くに位置する繁華街で音楽を提供するところから始まる。その後、第一次世界大戦が始まり、兵士の性病感染リスクが考慮され、売春宿が閉まると勢いを失ったニューオーリンズからシカゴに拠点を移す。ミシシッピ川を北上した先にあるのがシカゴだが、当時のシカゴはギャングの巣窟であった。禁酒法が施行されたのち、違法で酒を提供するギャングたちと、その酒にありつく人々でシカゴは賑わっており、その中でジャズメン達はさらなる進化を遂げてゆく。サッチモと呼ばれるルイ・アームストロングもニューオーリンズからシカゴに拠点を移して活躍しているメンバーであった。一方、戦勝ムードと失望感が募るニューヨークにもジャズ文化が押し寄せ、多くのジャズバーが出来る。
     世界恐慌により、一時はジャズバーも閉店するが、恐慌後のアメリカではやっと禁酒法が撤廃され、ニューヨークのジャズバーは息を吹き返す。戦間期と呼ばれるアメリカでは中産階級の文化がじわじわと形成されるが、そこにジャズも含まれる。しかしながら、ジャズという言葉のニュアンスに黒人文化的なところや奴隷的なイメージが付きまとう為、人々には「スウィング」として親しまれる。
     その後も、ナチスドイツから亡命してきた世界的なクラッシック奏者等がジャズに影響を与えていく。ジャズはその中でクラッシック的な要素も内包してゆき、その深みは増してゆく。
     ざっとあらすじを書いたが、このように、ジャズの歴史を語ることが、同時にアメリカの歴史を語ることに他ならないことが良くわかる。

  • 自分自身の感覚にスっと入ってくる様な文体でした。どの側面から歴史を見るかはそれぞれかとは思いますが、1つの視点として楽しく読ませて頂きました。

  • 奴隷としてアメリカに連行されたところから、アフリカの要素とヨーロッパ的要素のせめぎ合いとして発展してきたものとしてジャズ史を読み解く。

    とくにポストマイルス時代の歴史はあまり描かれることがないので、大いに参考になった。

    何度も折に触れて読むことになりそう。

  • 2007年2月初版。再読。

  • ジャズというジャンル、特に商業印刷には詳しい人が自意識をこねくり回して書いた気取った文章が多いなか、本書は平易な言葉で歴史を語る。ジャズというのは相反する要素のせめぎあいから生まれるものである、というところからコルトレーンの死までを語るところは面白い。

    逆にそれ以降についてはどうも「ポストモダン論」に縛られた感じがしていてマイナスの印象だが、その辺りはむしろインターネットに良い書き手が多いので補そうだ。

  • サクッとジャズの成り立ちからピーク時までが学べたのと、知らないジャズマンたちを知れて面白かった。

  • ジャズという言葉は多くの人が知っていると思うが、説明してくれと言われると難しい。その難しさはジャズという音楽が歴史によって複雑に変容した様ゆえのものであることがよくわかる本。

    詳細は下記
    https://note.com/t06901ky/n/nd419b56d8f92

  • 私はジャズは聴いてもよく分からないので、ならば歴史から入ってみようと言うことで読んでみました。

    ジャズというのは、特に日本人ではモードジャズのような音楽をイメージするようで、私も例にならってその一人でした。
    しかし、ジャズってものは1900年辺りからフワッと生まれて、色んな形に変化して行ったようです。
    なので私がイメージしていたジャズっていうのは割と後半のもので、前半のものとは異なるんだなと感じました。

  • これは本当に良書。今までジャズを系統的に勉強しようと手に取った数々の類書の、なんとわかり辛かったことがむしろ露見してしまった。金返せと言いたい。
    こんなに薄くて言葉も平易なのに長年喉につかえていた、特に用語の理解があっという間に進んだ。歴史が直線的ではなく、行きつ戻りつ広がりつつ狭まりつつ真似して逆らって出来ていくものだという至極当たり手法で教えてくれる。

    そして当然公民権運動やポストモダンの興隆など、実社会との対比が不可欠で、だがそれすなわち膨大な文章量もどうしても強いられる。そこをミニマムな必要最低限で記述してあるため、却ってわかりやすくなっている。

    今では本書に記述あるそれこそ歴史的なアーカイブ音源がサブスクリプションのおかげでほぼ網羅できたのも良かった。

    教条的な解説でないのは入門書を意識したというより、音楽への愛情の深さゆえと感じるのだ。

  • 【歴史をさかのぼっていって、いつかどこかで創世記のジャズ、一〇〇年まえのニューオリンズ・スタイルにたどりつけば、それは「ジャズ」なのです。つまり、ジャズの定義はそうした歴史とのからみでしか成立しないということです】(文中より引用)

    誰もがその単語を聞いたことがあり、同時にその言葉が指し示す音楽について何となくイメージすることができる「ジャズ」。ではその「ジャズ」とはいったい何なのかについて、歴史と共に探求していく作品です。著者は、音楽評論家として知られた相倉久人。

    肩の力を抜いた表現でジャズについてわかりやすく解説してくれているため、演奏者や楽曲名について詳しくない人が手に取る上でも最適な作品。ジャズが影響を受けた社会情勢にも筆が割かれているため、歴史好きにもオススメできる一冊でした。

    文字から入る音楽っていうのもありかも☆5つ

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著者プロフィール

1931年東京生まれ。東京大学文学部(美術史)在学中からジャズ評論を執筆。その後、ライブの司会などを通してジャズの現場に深くかかわった。1970年代以降はロックやポップスを論じ、日本レコード大賞の委員も務めた。主な著著に『新書で入門ジャズの歴史』(新潮新書)、『相倉久人のジャズ史夜話』(アルテスパブリッシング)、『されどスウィング』(青土社)のほか、『モダンジャズ鑑賞』『ジャズからの出発』などがある。2015年没。

「2016年 『相倉久人にきく昭和歌謡史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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