コミュニティデザインの時代 - 自分たちで「まち」をつくる (中公新書 2184)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121021847

感想・レビュー・書評

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  • コミュニティデザインを知るための導入にはよく、エッセイのようで読みやすいです。

  • 社会的課題に向き合い、自分自身も楽しむという姿勢と、第三者であることの重要性を説く著者の考え方と「コミュニティ・デザイン」という仕事に対する姿勢は、大変共感できるものである。本当の「事例主義」を訴えるところもその通りだと思いつつ、そこまで多くの引き出しを持つことは、努力だけで賄うことは難しいだろうなとも感じた。もともとは建築の分野で活躍することを見据えて学び、行動してきたようだが、建築物の中身の重要性を認識するや「コミュニティ」に着目し、福祉や教育にもその知的好奇心と生業を広げていこうとする著者の精力的で旺盛なチャレンジ精神に敬意を表するものである。
     それこそ自分に合うように組み合わせをアレンジして、今後の仕事への取組み方とスタンス(理念)を確立する一助にしたいと思う。

  • コミュニティデザインというと
    ハコ(実際の町や特定の場所)を作るイメージが強いですが
    つまりは、人と人の関係を作るわけで

    その『コミュニティ』に参加するとは
    人と人が繋がり合うこと
    それが、どんなに一人一人を力づけることになるか
    新しい何かを生み出すものになるかを
    感じさせてくれる本です


    <目次>
    第1章 なぜいま「コミュニティ」なのか
     自由と安心のバランス/まちが寂しくなった理由 ほか
    第2章 つながりのデザイン
     宣言について/まちの豊かさとは何か ほか
    第3章 人が変わる、地域が変わる
     人が育つ(中村さんの場合)
     コミュニティ活動に参加する意義(小田川さんの場合) ほか
    第4章 コミュニティデザインの方法
     コミュニティデザインの進め方/ファシリテーションと事例について ほか

  • ・屋外空間を使いこなす主体については、地縁型ではなく、
     テーマ型コミュニティーを集める。

    ・日本の人口は、3500万人ぐらいがいいのではないかという説がある。

    ・町や流域で生活できる適正な人口規模を見据え、その人口に落ち着く
     までのプロセスを美しくデザインすることが肝要。

    ・参加費をもらいながら、公園の自然回復に協力を得ている。

    ・まちの活性化とは、まちを構成する一人ひとりが活性化することであり、
     つまり「よし、やるぞ!」という活力を得ることのはず。

    ・地域の人脈図(コンステレーション(星座))を描けるように。

    ・参加者が出したアイデアを瞬時に昇華させて、その人が言葉にできなかった
     アイデアとして提示し直す。そのためには、事例の勉強が大事。

  • 日本では、まだまだ士農工商の意識が続いているのか、本当の意味で「自分たちが町を運営」している市民がいるところは少ないように思います。
    そんな新しい「市民意識」を持った人が増えていけば、コミュニティデザインもますます重要になってくると思います。

  • 人と地域とのつながりを生む事を生業とする著者は、これをコミュニティデザインと呼称して活動している。

    本書の内容とは少し逸れて、かなり個人的な話になるけれど、読みながら、学生時代に深く関わっていた学生団体での活動を思い出していた。

    「デザインとは何か。見た目が良いものを作る事ではなく、人の意識・無意識のところに働きかける何かしらの場や物や仕組みを仕掛ける事だと思う。」とか、
    「コミュニティとは何か。完全にフラットな組織はあり得ないが、ワンマンであってもならない。」
    「楽しめなければ意味が無いけれどビジネスとして成り立たなければならない。」
    「イベントやワークショップなどの場に集まりたがらない人を取り込むにはどうしたらいいか。」
    「自分達がしている事・やろうとしている事は確かな共通意識として在るのに、自分達の活動や意義を外向けに説明し辛い現状をどう打開するか。」
    そういったような事を、
    ファシリテーターが誰かを明確にした上で、ブレーンストーミング、KJ法、シナリオキャスティング、マインドマッピングなどを用いて、かなり深く濃い議論を重ね、チームごとやプロジェクトごとに動き、
    かと言ってサークル活動のような馴れ合いにはしたくないという確固たる意志があった。
    あの頃に自分達が描いてそこに向けて考え動き、けれど成し得なかった、外向きに説明する事も困難な活動やヴィジョンだった「何か」の完成形の一つが、この著者の在り方とstudio-Lという会社が行っている事なのではないか、と強く感じた。

    その事について、少し悔しくも寂しくもあり、嬉しくも有難くもある、不思議な感想を抱けた。
    今後このコミュニティデザインがさらに大きな広がりを見せる事を期待すると同時に、著者も述べているように、コミュニティをデザインする職業などが求められない社会が、本当は望ましい。

    近隣の住民が皆顔見知りで、どこかの世帯に何か変化があればすくに周囲に知れ渡るような、個人の自由が制限される窮屈なほどに、繋がりが濃い関係は暮らし辛い。田舎である地元において昔から今もずっとそう思う。
    ただ、近隣住民について何も知らず、災害など何かあった時に協力や連携がし辛いほどに、繋がりが皆無の社会もまた、孤独死や引きこもりを増加させている一因に他ならない。
    お互いに丁度良い距離感は難しい。価値観もライフスタイルも皆違うのだから。そして時代や世代によって変化し続けるのだから。
    それでも丁度良い距離感・暮らしやすい地域を、国が、個人が、模索し続けていける社会になれば、それがきっと、一番良い。

  • コミュニティデザインの仕事について興味深く読みましたが、『草の根運動』という言葉がピッタリだと感じました。
    市民が生き生きとする仕掛け、まちの活性化、等と聞くと、どうしても派手さや大きな変化をイメージしてしまい、でもまちを見渡してみても、『なんだかなぁ~』『変わらないなぁ~』と思うんです。けど、『彼らの仕事は「まちづくりに携わった市民」が生き生きとし、新たな人との交流を促進させて、心の財産を育てていくもの』だと考えれば、理解できます。派手さはないし、一般市民にはまちが良くなったのかどうか分からなくても、携わった人々が幸せになるのは素晴らしいことだし、『そういうのがコミュニティデザインによるまちづくりだ』と改めて感じました。

    コミュニティデザインの仕事をする人の資質について後半で触れられていましたが、求められる能力が多く、(『話す』『書く』『描く』『調べる』『引き出す』『創る』『作る』『組織化する』『まとめる』『数える』)『こんなにたくさん能力があれば、他の仕事でも十分活躍できるのでは?』と思いました。

    今までつながっていなかった人達を『まちづくり』というテーマの下につなげていく、接点を作る、0から1を生み出す、というのがコミュニティデザインならば、とても素晴らしい事だと言えます。しかし、僕のような『まちづくりには興味あるけど、実際に何も行動していない』人はたくさんいるはずで、
    何の取っ掛かりもない人をどうやったら巻き込めるか、言ってみれば人材発掘になるのですが、まさか『私はまちづくりに興味があります』プラカードを下げるわけにはいかないし(笑)、でもこれってコミュニティデザインだけに留まらず、転職や結婚相手探し等、『何かを求めているけど公にはしていない個人情報』をうまく扱えるような場があればいいなと常々思っています。
    僕の評価はA-にします。

  • コミュニティデザインの最新のノウハウが詰まっている。

    まだまだ十分に体系化された概念ではないが、地域社会変革において非常に役立つ考え方であることに違いない。

  • (*01)
    時代のはじまりは、21世紀に入り、5年ほどたった2005年ぐらいからと考えてみる。著者は2008年から日本の総人口が減少局面に入ったことを報告している。コミュニティデザインの時代と著者の現在の活動もこの頃から始まったとすると、2016年の現在まで10年ほど経過した。地方の人口減少は進み、ハード面でもソフト面でもコミュニティ(*02)の縮退は止まらない。しかし、徐々にではあるが、その抜けた場所、空き家のようでいて空き地のような空間に、中央からの移住者や若い者たちが移り込み、空間を占めるようにもなっている。そのような傾向は、このデザインの時代が始まっていることを思わせるものであり、本書は、空き地のような場に入るもの入られるものが読んでおきたい本として設定されているし、実際に読んでいる人も多いだろう。
    本書は、著者のいうように、これまでの著者の活動に寄せられたクエスチョンに対し、多忙な著者(*03)がまとめてアンサーするという形式を持っている。そのため空間活動の事例集にとどまらず、そのデザインの背景や活動における態度や手法のコツ(*04)が示されている。

    (*02)
    コミュニティを人類学が対象とするような伝統的な共同体としてみたとき著書の活動は、現代のコミュニティは血縁や地縁による結合が弱まっているため、個人を消費者あるいは生産者ととらえ、何を生み出し何を使っているかという系列に再組織し、似た者の同志や違う者の交換関係により擬似コミュニティを(悪い意味ではなく字義通りの意味で)捏造すること、あるいは既製のコミュニティに外部的な価値や経済をリンクささせることにあると考えられる。

    (*03)
    面白いのは、多忙な著者がその活動を伝道するのに、多くの弟子を必要としていることで、弟子は著者が主宰するスタジオのスタッフでもある。著者は移動時間を利用して本書を執筆しているが、その最中にも全国各地のプロジェクトは活動されており、つまり弟子たちも活動しているため、移動時間も弟子たちとのコミュニケーションにも割かれていると推測されもする。文章のところどころには、このデザイン手法の始祖である著者が、弟子たちをどのように指導していったらよいかという苦悩が紛れ込んでおり興味深い。多くは弟子への厳しい言葉や態度となって表出している。
    つまり、著者らもコミュニティであり、それがどのようにデザインされているかを本書から垣間見ることができるが、対外的には友好的なコミュニティが対内的には敵対的なものを含まなければ維持できないという矛盾を示唆しているようでもある。

    (*04)
    本書と類似したテーマで著者が出演するテレビ番組を見たことがある。その時に感じたこのデザインの手法の特徴として民俗学や民族学の集落調査やフィールドワークである。この様な調査は調査する対象を純粋に観察できるわけではなく、観察者の態度が観察対象から得られる結果に影響を与えることが知られている。
    コミュニティデザインは、こうした調査の延長にあり、調査が孕む観察者が及ぼす影響を意識的に増幅させて、対象を活発化させる方法であると捉えることもできるだろう。

  • とても読みやすく、コミュニティデザインの仕事が何たるかを書いてある本。
    コミュニティデザインについてWhat、Why、Howについて書かれているため、イメージがしやすい。
    Studio-Lについても触れられている。

    ーーーーーーーー
    ■地方の繋がりの衰退
    つながりとしがらみのあるコミュニティから、仕事の専門化と分担により、つながりが希薄化した。
    しかし行政の弱体化などにより、昔の様につながりが必要となって来た。

    ■街が寂しくなった理由
    ・地縁型コミュニティ:自治会や町内会などの地域密着型。
    こちらのコミュニティの衰退により、屋外(公共スペース)の活動が少なくなり、街の活気がなくなった。
    ・テーマ型コミュニティ:福祉・環境・趣味など、テーマ別に集まる人々。
    デザイナーは公共スペースのデザインが古くなり、且つかつてのコミュニティスペースのユーザーだった地縁型コミュニティが衰退したことにより、活気がなくなったとしている。あらたな公共スペースのユーザーとなりえるのがテーマ型コミュニティ。
    テーマ型コミュニティは定住している必要はないため、「活動人口」と言える。
    ただ、よそ者が入ってくる事になるため、公共スペースのマネジメントが併せて求められる。
    屋外の活動が減ったのは、室内で出来る活動が増えたことも要因としてある。

    ■住民参加型のデザイン
    住民参加型の地域デザインは、色や雰囲気のデザインを決めることではない。
    そうした専門的な部分は建築家・デザイナーに任せておく。(収拾がつかなくなるので)
    住民にはその空間をどう使うか、というコンセプトデザインに参加してもらうこと。

    ■住民参加の良い事例
    ブライアンオニール。クリッシーフィールズの行政職員。
    国立公園の来園者にワークショップを通じて金銭をもらいながら、自然回復をさせる取組。
    植物を植えたら成長が気になりリピーターとなる。

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著者プロフィール

山崎亮(やまざき・りょう)
コミュニティデザイナー。studio-L代表。関西学院大学建築学部教授。主な著書に『コミュニティデザイン』(学芸出版社)、『ソーシャルデザイン・アトラス』(鹿島出版会)、『コミュニティデザインの時代』(中公新書)、『コミュニティデザインの源流:イギリス篇』(太田出版)、『ケアするまちのデザイン』(医学書院)などがある。

「2024年 『新版 生きのびるためのデザイン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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