平和主義とは何か - 政治哲学で考える戦争と平和 (中公新書 2207)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121022073

感想・レビュー・書評

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  • 戦争と平和についての政治哲学的考察。いわゆる正戦論の議論だけでなく、平和主義から出発して、功利主義と義務論的な議論の検討や、リアリズムや人道的介入などの立場からの議論が広く検討されている。読書案内も包括的でよい。よく勉強しよう。

  • 「愛する人が襲われても無抵抗で良いのか?」という命題に対して,古今東西の各種考え方を提示.すこし読みづらいが考え方の整理にはなる.最終的な結論は自ら出すしかない.

  • 日本国憲法の三大原則の一つである「平和主義」とは何か?

  • 安倍晋三が言う「積極的平和主義」の概念がよく分からない。
    これまで「積極的平和主義」と言うのは戦争や紛争がなく、
    貧困や差別が存在しない社会を作ることだと思っていたのだ
    けれどね。

    どうも安倍晋三が口にする「積極的平和主義」は私が思っていた
    概念と相当のかい離があるらしい。てか、よく分からないんだな。
    安倍の言う「積極的平和主義」が。

    教えて~。エライ人。

    という訳で、「積極的平和主義」は脇に置いておいて「平和主義」
    について考えてみた。

    本書では平和主義を「絶対平和主義」と「平和優先主義」に2分類
    している。これは非暴力の平和主義と条件付き平和主義ってこと
    でいいのかな。

    戦争や紛争がないに越したことはない。ただ、人類の歴史は
    戦争の歴史でもあるんだよね。常々、思っているんだが戦争に
    良いも悪いもない。それは、国が人を殺すことだから。

    改憲が叫ばれるようになって久しい。日本国憲法は「平和憲法」
    とも言われて来た。それを変えようとしている。否、変えたいと
    強く願っている人たちがいる。

    平和であっちゃいけないんだろうかと思う時がある。「平和ボケ」
    と言われようと、平和であることは重要なことなんじゃないかな。

    例えば日本がどこかの戦争や紛争に参加したとしよう。私自身が
    そこで戦う訳じゃないんだが、そこで失われる命に無関心では
    いられないと思うんだよね。

    日本では武器輸出三原則が見直された。海外に供与される日本の
    武器が誰かを殺傷する。考えただけで嫌だわ。

  • 現在の国際情勢と平和主義(及び非平和主義)に関する現状を詳述し、民主的に非暴力か暴力かを選択する情報を提供したいという筆者の姿勢には完全に賛同するし、その意図はよく伝わってくる。

    が、たぶん筆者が考えている以上に、この内容は難しい。参政権は18歳に引き下げられたが、これを読める高3生はほとんどいないだろうし、当然大学生にとっても状況はそう大きく変わらない。

    本書の目的への共感と、丁寧な仕事への感服が大きいだけに、もっと優しい言葉で、もっと万人に向けたものを、と望まずにはいられない。

  • S319.8-チユ-2207 300282217

  • 平和主義・・・
    暴力ではなく非暴力によって問題解決をはかろうとする姿勢のこと・・・
    暴力に対して暴力で応答しない・・・
    他国から侵略を受けても武力に武力で応戦しない!あくまでも外交努力や非軍事的措置で解決するんだ!
    うむ・・・

    これに対して・・・
    他国から攻め込まれたらどうするんだ!?
    応戦しないんか!?好き勝手されても何もしないで降参するんか?!攻め込まれたらやり返すだろ!
    と平和主義をお花畑ヤロー扱いして批判する人々・・・
    暴力に対して暴力で問題解決することを辞さない、こういう考えの人々を非平和主義というんだそうな・・・
    本書では、正戦論、現実主義、人道介入主義が対象とされている・・・
    うむ・・・

    で、非平和主義者から平和主義者に対する究極の質問があります・・・
    平和平和言うのは良いけど、愛する人が襲われたらどうするの?
    何もしないの?放っておける?助けないの?戦うでしょ?ホレホレ?
    やっぱり戦うんじゃん?何が非暴力だよー。
    というよくある批判のヤツね・・・
    著者はそれについてこう答える・・・
    平和主義にはいろんなタイプがある・・・
    強度(無条件なのか条件付なのか)や範囲(私的や公的にどうか)といった面から平和主義は細分化されるが、大きく分けると・・・
    どんな場合でも、断じて非暴力を貫く絶対平和主義と・・・
    場合によっては・・・と例外は認める平和優先主義に分かれる・・・
    そのように平和主義といったっていろいろあるんだから平和主義の人はそんな質問で悩むことないよ、としている・・・
    うーむ・・・
    読んでると何だか歯切れが悪いように感じます・・・
    ちゃんと答えになっているか微妙なような・・・
    そもそも、平和優先主義って何?
    それって、前述のような非平和主義と何が違うの?
    戦争やりたがっているような極一部のクレイジーなヤバい人以外・・・
    つまりほとんどの人は平和優先主義じゃないの?
    正戦論者であれ、現実主義者であれ、人道介入主義者であれ、全速力で暴力(武力)だけによる解決に走らないよね?
    外交努力もするし、非軍事的措置もするし・・・
    しないの?するよね?してるよね?
    場合によっては暴力による解決も辞さないってだけで・・・
    場合によっては暴力による解決も辞さないってことは平和優先主義と非平和主義ってほとんど同じですよね?
    絶対平和主義の方と戦争やりたがるクレイジーなヤバい人以外は、それぞれ【場合によっては】の条件が違うだけでみんな平和優先主義じゃないですかね?
    読んでいて、著者は無理に分けようとしてる感じがしてならない・・・
    あ、いや、逆にだからこそ感情論に陥らず、みんなでもっと議論をしようよってことなのかな?
    うーむ・・・

    上の点については疑問があるものの、その他は結構良くてですね・・・
    自分がどの主義、観点に拠ってものを考えるのか?の良いパンフレットになっております・・・
    平和主義の論拠として、義務論『ダメなものはダメ』と帰結主義『結果的に損ならダメ』の考え方・・・
    正戦論の考え方と正戦論者に対してのツッコミ・・・
    ・双方ともに正義を振りかざすのに、自衛/侵略を正しく判別できるのか?
    現実主義の考え方と現実主義者へのツッコミ・・・
    ・定番の安全保障のジレンマ
    逆に現実主義から平和主義へのツッコミ・・・
    ・ヒトラー止められなかったじゃん
    人道介入主義の考え方と人道介入主義者へのツッコミ・・・
    ・現行の国際法に照らして、違法とは言わないけど、結構超法規的な措置だよね?
    ・そうは言っても結局暴力は暴力を生むよね?
    ・そもそも紛争当事者に武器を持たせないようにするべきじゃない?まずは武器売りつけないでよ?
    といった内容になっておりまして、現代の国際関係に関する政治哲学の概要をザッと確認できるという点で良書だと思います・・・

    平和主義者と非平和主義者って、お互いにあーだこーだ言い合うんですよね・・・
    結構な溝がある・・・
    その溝が埋まらない・・・
    そこで著者・・・
    「重要な点は、平和主義者と非平和主義者が、単なる好き嫌いの次元を超えて、その理由を相互に説明できる議論の土俵を共有することである。」
    健全で妥当な議論によってその溝を埋めるための一助に、という一冊でもある・・・
    オススメです・・・

  • あらゆる場面で、それぞれの立場により許容される暴力の介入、というのはまさに本書でも紹介されているM.サンデルの話…つまり正義を巡る問題であって、そう考えると一応戦後はある程度平和主義の傾向を前提としながら国際関係が変化していったのかもしれません。しかし、終盤でも懸念されているように明らかに好戦的な傾向というのが今もまさに生まれつつあり、これが民主主義の果てなのかどうかはさておき、あとはこの議論はその中身が重要であって、落とし所、帰結は難しいというのも大事な見識と思います。

  • 平和主義を「絶対平和主義」と「平和優先主義(紛争解決のための武力行使を否定しないが極力平和的な解決を模索する)
    」に区分けして、平和優先主義を採用する論拠と展望を政治哲学的に考察した内容。


    抽象的な議論になりがちな平和主義を理論と具体例を通して異なる角度と視座から検討している。
    無条件/条件付き、私的/公的、といった強度と範囲から検討する。義務論(殺人は道徳的に許されない)と帰結主義(戦争の費用対効果)の側面からも考察する。
    次に平和主義を正戦論、現実主義、人道的介入の非平和主義の立場から比較検討していく。双方の主張を考察しているが、ここだけ読んでもためになる内容。戦争と平和をめぐる議論の論点と誤解がきれいにまとまっている。
    こうした作業を通じて平和主義の多様な考えを類型化する。その上で評価し、平和主義のありうる姿(平和優先主義の立場を取ること)を浮き彫りにする。


    特に興味を惹いたのが人道介入主義の論理構成。これはそれほど強力ではないことが分かって大きな収穫だった。ここでは救命を要請する「善行原理」と殺人を禁止する「無危害原理が」が衝突するジレンマを抱えている。それだけでなく(ここが重要)善行原理に忠実なことそれ自体が遵法精神と必ずしも相容れないことがわかる。国際社会に国連に代わる上位の権威が存在しない。もし国連が機能しない、国際法を守れない状況があるならどうなるか。上位権威がない以上、介入国の良心の正しさと介入の正統性(正当性)を誰が判定するのか。
    実定法の裏付けがないなかで軍事介入することの代償は、法の支配という観点からみると大きい。
    人道的介入を紛争解決の唯一の手段と考えないこと。平和主義に相応しい代案もあるという主張は非常に示唆に富む。

    感情やレッテル貼りに寄らず、冷静に戦争と平和について考えたい人にお薦めな本。

  • 本書は平和主義と非平和主義の主張を順に取り上げ、吟味していき、最終的に何故平和主義がいいのか、という構成。平和主義と聞くと戦争絶対反対という考え方だけだと思っていたが、平和主義と一言に言っても多様であり、世の中にはこんな考えの人もいるんだなと素直にそう思った。自分の考え方はどうなのか自問自答する必要がありそうだ。やはり、相手を頭ごなしに拒絶するのはよくない。

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著者プロフィール

松元 雅和(マツモト マサカズ)[第4章]
1978年生。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程修了。博士(法学)。日本大学法学部教授。主要業績:『公共の利益とは何か──公と私をつなぐ政治学』(日本経済評論社、2021年)、『人口問題の正義論』(共編著、世界思想社、2019年)、『正義論』(共著、法律文化社、2019年)。

「2024年 『普遍主義の可能性/不可能性』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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