- Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122041783
感想・レビュー・書評
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綺麗で透明な毒を持つ物語です。
本来、毒とは浄化するべきものなのかもしれません。危険な毒は人々に死を与えることもありますから。それでも真っ白で純粋なものだけが尊ばれ大切にされる世界の中で、毒は滅びることなく人々の心の中でひっそりと息づいているのです。
運命の鎖で繋がれたような短編集でした。
それぞれの物語の中に一粒の毒の種が埋め込まれ、その種が芽を出し花を咲かせ、また種を落とす……そうやって毒の連鎖が連なっていきました。
小川洋子さんの作品には、硝子の欠片のような冷たくて美しい毒が、静寂な文脈の間に潜んでいます。この毒はいつの間にか、物語の中から弦を伸ばし読者の心に甘い蜜を垂らしていきます。そうして魅惑的な毒の虜になってしまったら最後、小川洋子さんの紡ぐ物語から離れることが出来なくなるのです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ひとつの単語でおわらせない。細分化して、美しい文章にして、うっとりする。残酷なこと残忍な事を美しく表現するから妙にぞくぞくする。
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みんな静かに狂って、私も少しずつ狂っていった。
乗り物酔いなのか、文字酔いなのか、奇妙さからの目眩なのか、頭がぐるぐるぐるぐるして、もうなんだかわからなかったけど、頁を捲るたびに私の中で何かが擦り減っていって、同時に何かが膨れていった。すごいな、と思う。言葉でこんなに冷たい気持ちにさせられるなんて。ぐちゃぐちゃにしてぽいっと突き放された感じ。でも、全然嫌じゃない。 -
タイトルがまず美しくて不穏で大好き。小川さんの物語を眠る前に読んでいるとなんだか素敵な夜を過ごしている気分になれる。
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連作短編集なのですが、
タイトルからも想像されるように、
全体を通して常に不穏な空気が漂っています。
でも、単に忌まわしいばかりでなく、
そこに悲哀のようなものも感じられます。
生きるということは、
つらく悲しいことの方が
圧倒的に多いということを知っているから、
境遇は違っても
それぞれのお話に共感できるのでしょうね。
べそかきアルルカンの詩的日常
http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
べそかきアルルカンの“スケッチブックを小脇に抱え”
http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a
べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2 -
【歪んだ一本道を逆立ちしながら戻る】
新年明けて1冊目は小川洋子さんの本にしようと決めていた。
小川さんの作品は真冬、日陰で凍りついたままでいつまでも溶けない水溜まりのようだ。踏みつけて綺麗に割ることも出来ない。泥だらけで美しくもない、だけど気になってしまう。靴先を入れたくなる。見逃せない。そして、気づくと消えてしまう。
2019年はまた、本を読める1年にする。小川洋子さんの作品もたくさん読んでいきたい。 -
全ての話がつながっているオムニバス形式の短編小説。
短編小説は次の小説に行くまで、ちょっとめんどくさいなーとなりがちだが全てつながっているので、次はどんな繋がりがあるんだろう?とワクワクしながら読めた。
私は眠の精が一番好きだった。穏やかで、優しくてとっても切ない物語だった。
やはり小川洋子の文学は婉曲表現が多くてとっても楽しい。感情を描写で表すのが上手い。私では到底思い付かない表現が沢山あって常に新たな発見だ。 -
「トマトと満月」が一番好きだった
と言ってもほとんどが繋がっているので何とも言えませんが
個人的には小説家の女の人が興味深かったです
連れ子と2年過ごし、老婆のアパート?で暮らし
「キリンの首が長いのが理不尽」という話は、本当はどっちが言ったのか
不思議に絡み合う面白い本だった
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短編集が一つ一つどこかのお話と繋がっているので、伏線が散りばめられていて読んでいてとても面白いけど、読み終わったあとはただひたすらに気持ち悪さが残る1冊です。
書いてある言葉の一言一言に重みがあると感じました。