特捜部Q ―知りすぎたマルコ― ((ハヤカワ・ポケット・ミステリ))
- 早川書房 (2014年7月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (566ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150018856
感想・レビュー・書評
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2015/1 今回は読みやすい。これから人間模様はどうなっていくか楽しみだ。本作はマイルドなストーリーとしてガス抜きができたので、次作は今までみたいにチョット暗く少し陰湿さがあるストーリーを読みたいな。
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5冊目も、面白かったです。
あっちこっちで悪いやつらがうごめいていて
マルコ逃げてーってなります。
スピード感あり、今回も一気読みでした。 -
北欧の人気警察ミステリ「特捜部Q」シリーズの5巻目です。
相も変らぬ面白さですが、本作ではスリと物乞いを生業とするケチな犯罪グループから逃げ出した天才児マルコが人生を立て直そうと努力する姿が描かれており、ストーリーに明るさを加えています。
さて、前置きはこの位にして以下で粗筋をご紹介。
プロポーズを予定していた当日に恋人に振られ、理解ある上司がいきなり退職して代わりに忌み嫌っている相手が上司になったり・・・
と散々な生活を送っている特捜部Qリーダー、カール・マーク警部補。
そんな彼が今回挑むのは、ODAを隠れ蓑にした巨額国家予算の横領とその隠蔽殺人です。
行方不明人を探し求める一枚の張り紙を切っ掛けに事件調査に入り込む特捜部Q。
一方、隠蔽殺人を実行した犯罪グループからは天才児マルコが逃走。
マルコに追手が迫る中、両者のニアミスが続くが・・・
マルコの人生立て直しと特捜部Qの事件捜査。
そしてこの犯罪に関わった者達の間の駆け引き等、先が予想できない展開が続き、読み応え十分なミステリーです。
巻末あたりで若干冗長な印象も受けましたが、このシリーズのファンはもちろん、そうでない方も楽しめる内容ではないでしょうか。
読了後、満足感を抱ける娯楽小説をお探しの方などにお勧めします。 -
シリーズ5作目。
汚職事件を主軸に、それに絡んだ殺人事件に巻き込まれた15歳の少年マルコの逃走劇が見ものです。
特捜部の面々と事件当事者のそれぞれが交互に描かれ、やがて交差して解決へと向かう手法はいつも通り。
今回の事件当事者の主要人物であるマルコは、聡明で向学心や自立心旺盛ながら、幼い頃よりスリや物乞いを強いられてきた少年。
身の危険を感じ逃走する中、汚職事件の闇に飲み込まれていきます。
マルコを追いかける仲間やら殺し屋やらがとにかく危険な人物ばかりで、時に人の優しさに触れ、時に人に裏切られながらも知恵と勇気で逃げ惑うマルコに、読者は手に汗握り応援したくなります。
マルコがんばれ!
その一方で特捜部Qの面々は相変わらずでした。アサドは謎だし、ローサは意味不明だし、カールはイライラしてるしみんな大騒ぎ。
やはり、このとぼけた特捜部Qと重い事件とのギャップが良いです。
マルコの終盤の逃走劇や事件の収集の仕方には出来すぎ感がありますが、最後まで読者の希望通りスッキリ終わらせてくれるのもこのシリーズの良いところだと思います。
サイドストーリーも進展しており、今回マークスが引退してカールの宿敵であるビャアンが後任となりました。
ビャアンとアサドとの関係からアサドの過去が明らかになりつつあり、又ビャアンにも何かがありそうです。
一番気になったのが、イェスパが屋根裏にある開かない段ボールについて、カールがそんなものは知らないと言った場面。どうでもいい場面なのかもしれませんが、妙に暗示的に感じました。カールにも本人の知らない何かがまだまだありそう。
それにしてもミカは素晴らしい。ハリーの回復が今後過去の事件とカールにどう影響を及ぼすのが気になるところです。 -
のっけからカメルーンでの殺人事件が描かれる。そしてデンマークでは銀行頭取と外務官僚によるカメルーン開発援助プロジェクトに関わる不正が密やかに進行する。スケールの大きい事件ではあるのだが、いきなりステージは一転する。
イタリアから不法入国したジプシーのような犯罪一族の生態に作者のペンは向けられる。恐怖に虐げられながらスリや置き引きなどの犯罪に手を染める少年の一団が都市の中に散開している。彼らは脱出不能の悪のリンクに閉じ込められた人生を選ぶことのできない無力者立ちであるかに見える。その中でも腕利きで頭のいいマルコが、実は本書の主人公的存在である。
彼は、あることから見てはいけない組織の謀略の現場を目にしてしまい、夜の公園から独り脱出する。すぐに放たれる追跡者たちの群れ。マルコは逃走する。そう。本書は、たった一人の少年の逃走こそが最大の見せ場である。
特捜部Qの面々は、トリオの存在の上に、さらにひとり面倒なのが加わって、カール・マークは厄介な立場になりながら、徐々にマルコと、カメルーン失踪事件の真相へと、徐々に近づいてゆく。
読者だけがすべての経緯を知っており、はらはらしてゆくタイプのサスペンス。そこに子供が追われるというある古典的なモデルの活劇が主軸となる。これだけで面白さは保証されていると言えないだろうか。子供の失踪と言えば、映画で言えば『グロリア』、小説で言えばジョン・グリシャムの『依頼人』などが挙げられるが、どちらも強いオバサンに守られたいわばコンビものである。本書のマルコはその点あまりに孤独である。犯罪仲間の少年少女たちに心のつながりを求めるが、誰もが恐怖に支配されているために、マルコを裏切らざるを得ない。構造悪による子供たちの悲劇、なのである。
全体としてシンプルな作りだが、だからこそ手に汗握る活劇が散りばめられた、シリーズ屈指の快作であるように思える。このシリーズを一冊だけ読みたいという人に対してはぼくはどの作品でも自信を持ってお勧めすることができるのだがが、少年マルコの活躍ぶりを見ていると、特に世の女性に対しては、この作品を母性本能に訴えるという意味で一押しになるのかもしれない。
しかしアサドの猪突猛進ぶりと、ローセの母性本能、それらの個性とのらりくらり戦法で対決しつつ、奇妙な居候たちとの家庭問題にも頭を悩ませねばならないカール・マークの人生、いつもながらに嬉しく心強い特捜部Qとの再会が毎度嬉しい本当の意味でのシリーズらしいシリーズなのである。 -
叔父が率いる犯罪組織から逃げ出したマルコ。彼は知ってはいけないことを知ってしまい、追われる身となった。
少年でマルコと言えば母をたずねて三千里世代。もう最初からマルコへの肩入れが半端じゃない訳で。
逃亡、アクションが中心になったサスペンスで、推理要素は少ないけれど、ただひたすらマルコの無事を願ってましたよ、ええ。
個性的なQの面子も今回ばかりはマルコにしてやられたようで、ここまでの4作とはガラリと毛色の変わった少年の冒険譚を読んだ気分。
こういうの、結構好き。 -
ずっと読んでる特捜部Qシリーズ第5弾です。
今回はマルコという不法入国者の少年が見てはならないものを見てしまって逃げ続ける!という話が中心になってます。アクション多めでミステリ要素はちょっと薄いかな。物語のきっかけは国の予算横領をめぐるというスケールのデカさなのですが、カールたち特捜部Qの面々が巨悪にせまる!というわけでもないし、過去の事件の掘り起こしとしても前シリーズに比べると薄いし…
カールのプライベートについても少し進展がありますが、なんかあっさりしてました。モーナとどうなっても別にいいや、と思ってしまってごめんよカール…アサドの過去チラ見せも多少飽いてきました。
次はガツンとこってり特捜部Qを期待します。
下の感想にもありましたが、マルコの活躍はちょっとディケンズ風かもしれません。舞台がイギリスではなくデンマークですが。 -
特捜部Qシリーズ5作。安定のおもしろさ。アフリカ担当の真面目な官僚が帰国後消息を絶つ。背後には巨額の横領が絡んでいる。一方、叔父の率いるクラン(犯罪組織)から逃げ出したマルコは、事件を知るものとしてコペンハーゲンで追われる…。
相変わらずばたばたしながら事件を解決していくカール・ローセ・アサドたちが好きだ。そして今回登場のマルコ。15歳だけど賢くて、行動力があって、さびしがり?マルコの冒険物語としても読める。 -
少年マルコの逃亡劇。このネタ一本で引っ張る引っ張る。今回の事件はリアルタイムで進行していくので、過去作と比べてスピード感と緊迫感に満ちていたように思う。
アクション全開なのでミステリ色は薄め。そこが残念と言えば残念なのだが、にも関わらず最後まで面白く読めたのは、マルコのキャラが際立っていたからかな? カールとのすれ違いを繰り返すうち、どんどんマルコに感情移入してしまい、最後はオカンになった気でハラハラしながら見守っておりました。このマルコがホントにいい子なので、余計に悪役たちが人間のクズに見える。相変わらずヒール役を書くのは巧いよなあ。
Qにも変化はあり、アサドの謎がちらりと見えたりと、サイド・ストーリーも読み応えはあるのだが、肝心のカールは今回あまり活躍せず、マルコに全部さらわれた形になった。第五弾の主人公はマルコです、マルコ一色のストーリー。でも個人的には大満足。