影の子 (ハヤカワ・ミステリ1931)

  • 早川書房
3.27
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150019310

作品紹介・あらすじ

1975年。東ベルリンの〈壁〉に接した墓地で少女の死体が発見された。事件の捜査を命じられた刑事警察の女性班長カーリン・ミュラー中尉は、知らず知らずのうちに国家の闇に迫っていく。冷戦時代の東ドイツを舞台にし、高く評価された歴史ミステリの傑作登場!

感想・レビュー・書評

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  • 1975年の東ドイツを舞台にしたミステリー。日本では、ペヤングソース焼きそばが発売され、米国ではマイクロソフトが設立されたころだ。その時代にはベルリンの壁があり、東ドイツでは社会主義体制に反対する(という疑いが持たれる)人々を弾圧し、拷問し、処刑していた。少女の死体が見つかった事件で捜査をすることになったカーリン・ミュラーは複雑な立場にある。夫が反体制派の嫌疑をかけられ、カーリンも部下の副官と浮気をしている。どちらも東ドイツでは重大な犯罪となる。一方で、少しずれた時間軸で進行する話があり、殺害された少女たちの物語が進行する。こちらも悲惨な話だ。体制に振り回されて人生を狂わされる。二つの時間軸が統合され、犯人は暴かれ終幕となる。その後はストーリーとしては面白くなるが、何とも後味が悪い。1975年というのは、2019年から見て、昔の話し始めではあるが、まだ歴史上の話にはならない。ちょっと前に、改めて東ドイツが存在していたことを改めて考えることとなった。

    社会主義というのは、個人よりも国家が優先される体制のようだ。つまり、国家を維持するためであれば、個人を犠牲にできる。個人は尊重されるのではなく、国家を維持するための部品に過ぎないのだろう。

  • 1970年代の東西に分断されたドイツ。東ベルリンの刑事ミュラー。少女が殺された事件の捜査を開始するけれど圧力、疑念、不信が渦巻いていて誰かが誰かを常に監視し裏切りがあり何が正しくて正しくないのかがわからない。常に緊張した空気の中での捜査で異様な空気もある。この時代の大きなものに支配された理不尽なもの、生活が描かれている。事件の裏にあるもの、事件に関わった人が見るドイツの真実。そのどれもが残酷で悲しい。とても読み応えのある作品でこの先も翻訳されていくと嬉しい。

  • 70年代の東ベルリン(ドイツ民主共和国)。
    実在のシュタージ(国家保安省)の中佐と、刑事警察の女性中尉が
    殺人事件をめぐって互いに探り合う。
    ベルリンの壁が存在し、社会主義国である東ドイツを描いた歴史ミステリ。
    冷戦時代、東ドイツはもちろんのこと、
    ポーランド、チェコスロバキア、ハンガリーなどは
    社会主義国であり、
    91年のソ連崩壊までは、いわゆるソ連の衛星国だった。
    つまり、まだ30年くらい前、一世代前のことなんだと、
    今さながら思う。
    ウクライナ侵略が起こっている現在、
    社会主義国特有の闇が、生々しく感じられる。

  • 悪くない

  • 出だしは良かってんけどな、尻すぼみかな。

  • ベルリンの壁が東西を厳しく二分していた時代、奇妙な状況で発見された少女の遺体。発端の謎は魅力的だし、東側の再教育施設からの脱出行にはハラハラさせられた。でも「真相」が納得いかんわ~。無理矢理不思議な状況をつくった感じ。ラストの救いのなさにもがっくり。

  • 東西ドイツ時代を設定にしているということに興味を引かれて読んでみた。
    内容は謀略の嵐で、誰も信用出来ず、今日あることが明日は激変しているかも知れないという、そんな環境で事件の真相を追うために奮闘する警察官の姿が描かれている。
    現代ですら様々な謀略や陰謀に振り回され埋もれていく人がいるのだから、当時の社会主義、共産主義の国ならもっとだろう。
    明らかに白であっても権力が黒だといえば黒になるし、その権力者ですら明日は権力があるかどうかは分からない。
    救いはないしゴタゴタしてるし、キャラクターたちも感情移入出来ないし、全体的には好みではなかった。

  • はじめはなかなか読み進められなくて、時間がかかったけど、半分くらいから物語の先が気になって面白くなりました。社会主義の国の怖さや孤独感や、お互いの疑心暗鬼な不信感みたいな負のイメージがずっと支配してたストーリーだった。
    最後まで、えっ、というラストで、これが社会主義国家⁉︎という思いで読み終わった。

  • ★3.0
    1975年、冷戦下の東ドイツ。殺人事件が起こっているにも関わらず、結論ありきの捜査を指導されることに薄ら寒くなるばかり。そして、臭い物に蓋をするだけでなく、密告や捏造も当たり前の社会がただただ恐ろしい。夫や妻、同僚や友人すらも疑わしいのなら、一体何を信じれば良いのか。そんな中、殺人捜査班班長・カーリンが奮闘するものの、救われないラストに暗澹とした気持ちに。また、全体的にはそれなりに纏まってはいるけれど、イルマへの助言や教会での活動家との接触等、ゴットフリートの行動がいまいちよく分からなかった。

  • 冷戦下の東ドイツのベルリンの壁付近で若い女性の無惨な死体が見つかる。不可解な事に、西側から東側に壁を乗り越えて入ろうとして撃たれたらしい。この事件を担当する人民警察の女性刑事ミュラーは、事件の背後に不穏な空気を感じながらも、死体の身元をつきとめ謎を解こうとする。一方でミュラーは部下との不倫を夫に疑われ、夫婦仲はこじれる一方。この夫にも何か秘密があるらしい。事件の謎は捜査が進むにつれ明らかになっていくが、常に秘密警察シュタージの暗躍が社会に深く浸透していて、誰が敵で誰が味方か、1番信用できるはずの家族や恋人でさえ疑わねばならない。事件よりもそちらの方が恐ろしかった。

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