マイノリティ・リポート: ディック作品集 (ハヤカワ文庫 SF テ 1-13)
- 早川書房 (1999年6月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (321ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150112783
感想・レビュー・書評
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映画マイノリティ・リポートの原作を含む短篇集。
とにかく、発想がすごいの一言。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
マジョリティ、多数に少数が淘汰される。これは実験などでも当然の事柄で、0.02%の例外は「ミス」と処理されがちで、多数派の結果を元に分析される。
例えば私たちオタク・腐女子はマイノリティである。これは自覚しなければならない事実だが、だからといってないがしろにされるべきであろうか?
SFとしてのエンターテイメントの中に、民主主義的多数決に一石を投じる作品であると感じた。 -
間違えなく最高傑作集
最高におもしろかった。さすがはディック。
トム・クルーズの映画「マイノリティ・リポート」のほかアーノルド・シュワルツネッガーの映画「トータル・リコール」の原作も入っている。
でも最高作は「水蜘蛛計画」だ。(理由は後述)
傑作集は別にあるが、本作こそ真の傑作集だと思うな。
作品は以下の通り。
マイノリティ・リポート
力が入っている。映画とは異なるラストが新鮮(むしろ映画のラストが原作と異なるという表現が正しいのだが)。
2 out of 3 の概念で、3人の予知能力者のうち2人のリポートを正しいと認め、残るリポートを「マイノリティ・リポート」と呼ぶのだが、そのマイノリティに真実がある場合がある。
多重宇宙論に立てば未来は刻一刻と変化するので、まさにどちらがマイノリティになるのかは予断を許さない。
最終判断は人間が行うのだが、果たしてそれは常に正しい判断となるのかどうか。そんな感じのエンディングは余韻が残ってしっとりと心に残る。
ジェイムズ・P・クロウ
マイノリティに続く傑作。映画化の話もあるらしい。かなり意訳or飛躍しないと難しいだろうなぁ。
ロボットが人類を支配する地球。タイムマシンを用いて地球最高の地位に登りつけた唯一の人類が発した言葉は「ロボットたちは地球から出て行け」だった。
ロボット無しで人類はやっていけるのだろうか? このラストもマイノリティに似ている。
世界をわが手に
このアイデアはディック作品にたびたび出てくる。昇華し損なったアイデアかもしれない。その意味でイマイチかな。
水蜘蛛計画
設定がおもしろい。止まらなくなった宇宙船を止めるために、20世紀の予知能力者の力を借りようとする未来人。
過去に戻って連れてきた予知能力者は、ポール・アンダースンだった。
ということは止まらない宇宙船とはまさに「タウ・ゼロ」そのものだろうな。ユーモア抜群だ。
もちろん、アシモフもブラッドベリもハインラインもディック自身も(名前だけだが)登場する。
ストーリーは別にしてユーモアあふれる楽しい読み物だった。
安定社会
輪廻を手段としてロボット支配社会への道を描いているが、「世界をわが手に」のアイデアの焼き直しの感じで新鮮味がない。
火星潜入
こちらも同様。小さなカプセルに都市全体を詰め込むというアイデアは、3作共通なんだが、そのアイデアをストーリーにうまく昇華しきれていない。
技に頼ってしまって、小説としておもしろくないといったところか。特にこのミステリーっぽい作品は最初からあら筋がわかってしまうという欠点もある。
追憶売ります
ご存じトータル・リコールの原作。主人公は、希望する記憶を買って手術を受けようとしたとたんに希望する記憶が現実のものであったことに気付く。どっちが本物かわからないという感覚はディックならでは。
さらに記憶を整理しようとすると、最下層からより恐ろしい真実の記憶が出てきたといったあたりのエンディングは映画よりすっきりしてわかりやすい。 -
マイノリティ・リポート、トータルリコール共に好きな映画で原作者が同じ人だと知って読んでみたいと思い手に取った。驚いた事にマイノリティ・リポートは1956年に生まれトータルリコールリコールは1966年に書かれている。実に67年前、57年前に書かれた原作があのような現代的な映画に生まれ変わった事に驚いた。マイノリティ・リポートの中のプレコグの描かれ方がかなり印象的だったけども、原作では案外あっさり描かれているんだなと感じた。どちらの映画も原作を元によりエンタメな作り込みをされており、その違いが知れて満足だった
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夏のディック強化月間。例年読んでいるハインラインと角川ホラーは在庫切れ間近である。
トム・クルーズ主演で映画化された表題作では、預言者の予言にしたがって防犯に努める組織で、「長官が殺人を起こす」という予言が出た。これは誰かの陰謀なのか…。
そこで陰謀論に終わらせないのがディックの短編の良いところで、二転三転というところが醍醐味であろう。『火星潜入』などは、最終的に面白いのだけど、展開が来るまでちょっとだるい。本書には、ちょっとほのぼのしたものから、殺伐としたものまでバラエティに富んでいる。
内容としてはちょっと悪ノリがすぎるところがある『水蜘蛛作戦』は、SF大会に未来人が乗り込んで、作家を誘拐する話。ヴォクト、ブラッドベリ、アシモフなどの巨匠が実名で登場するので、発表当初は一部でバカウケだったんだろうなあ。
新潮社『模造記憶』にも収録されていた『追憶売ります(トータル・リコール)』は、内容を忘れていたが途中で思い出した(そういう話でもある)。やっぱり名作。映画は見たけど、最後の目玉が飛び出すトラウマシーン以外ほぼ忘却の彼方である。
やっぱり、ディックは短編がおすすめである。長編にも名作はあるが、ハズレが多い上に、ハズレ作品はことごとく読みにくくてなあ。 -
驚くほど読みやすくて面白い。個人的には表題作、「水蜘蛛計画」、「追憶売ります」が好み。改めてディックの才能を認識した。誰にでもお勧めできる一冊。
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短編の方がよりスリリング。SFだけどサスペンス要素があって引き込まれる。
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ハードSFの作家だと思っていたが、この短編集は読みやすい。ミステリーのような感覚でも読めるし、人種問題など考えさせられる話もある。かと思えば、現実と空想の境目が曖昧になっていくふしぎな話も。
一篇一篇は長くないので、時間があまったときにでも。 -
マイノリティ・リポート―ディック作品集 (ハヤカワ文庫SF)