虎よ、虎よ! (ハヤカワ文庫 SF ヘ 1-2)

  • 早川書房
3.65
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  • Amazon.co.jp ・本 (446ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150116347

作品紹介・あらすじ

ジョウントと呼ばれるテレポーテイションにより、世界は大きく変貌した。一瞬のうちに、人びとが自由にどこへでも行けるようになったとき、それは富と窃盗、収奪と劫略、怖るべき惑星間戦争をもたらしたのだ!この物情騒然たる25世紀を背景として、顔に異様な虎の刺青をされた野生の男ガリヴァー・フォイルの、無限の時空をまたにかけた絢爛たる"ヴォーガ"復讐の物語が、ここに始まる…鬼才が放つ不朽の名作。

感想・レビュー・書評

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  • オールタイム・ベスト常連、のみならず、某海外ドラマで犯人がいつもつぶやく「Tiger, Tiger, burning bright...」というセリフがこの作品からと知ったため。ドラマで引用されるので、どんな名作なんだろう、と期待して読んだが、良くも悪くも想像とは大きく異なった。

    名作。
    確かに名作かもしれない。
    が、あまりに破天荒。
    ストーリーだけではなく、タイポグラフィーでも表現を変えるとは、小説表現の枠を超えた作品。
    個人的には、こういった「奇をてらった」表現はあまり好きではなく、”ある制約の中でどう表すのか”というのが大切だと思っているのだが、時代を考えると好意的に捉えても良いのかもしれない。

    すべてが大仰で演劇を観ているかのようなセリフまわし、舞台は宇宙だし超能力はあるしSFというジャンルなんだろうけれど、SFであることはあまり重要ではない。
    復讐譚ではあるが主人公は同情するにはあまりにも粗野で身勝手で、その他の登場人物も100%善人と考えられる人はほぼいない。
    まあとにかくめちゃくちゃ。

    それでもこんなに評価が高く読み続けられるのは、やはりそれだけでは終わっていないからなのだと思う。主人公のキャラクターを表すかのように次から次へとストーリーは展開し、読者は知らず引き込まれ、気がつくとクライマックス。大きな秘密が明るみにでる。

    と、もっともらしいことを書いているが、実は、なんというか、自分はこの作品について語るには、経験も知見も浅いような気がしてならない。
    再読後、改めて感想は残すことにしよう。

  • 最高!でした。
    表紙が良い。寺田克也さんのイラストが凄くマッチしてる。
    内容は1950年代に書かれたとは思えない。
    古さを感じなかった。むしろ最近書かれた?とも思った。
    でも、寺田克也さんのイラストのイメージで読んだから良かったような気もする。
    超能力もの良いな。

  • 豪華絢爛SF復讐活劇。アニメ「巌窟王」の原作モデル(原作としたかったけれども、許可が取れなかったので、この作品が描かれるヒントとなったデュマの方を原作とした、と言うのは周知の事実)と言うことで、読んでみました。
    まず精神感応力がテレポーテーションの原理となり、誰でも自由に空間移動ができるようになった未来、と言う説明から始まり、テレキネシス、そして精神感応による最終兵器、と言うギミックを散りばめ、かつ、キャラクター造詣も、女性男性みんな一筋縄ではいかない魅力。オリヴィエはさしずめエデ姫のヴィジュアルで、ヤン・ヨーヴィル大尉は、銀英伝の同名の軍師を思わず思い浮かべました。この作品の方が、銀英伝よりは先に作られていますが。
    すんごい読ませるなぁー、と思いながら、ラストは復讐の代償とキリスト的贖罪と言うか原罪へ帰結していって、クライマックスは派手です。これくらい派手に持っていく力量すごい。
    解説を読んだら、この小説を書く前に、「スーパーマン」や「キャプテン・マーベル」と言ったアメリカンコミックのシナリオを書いていたということで、そりゃあ、視覚的に魅せてくれるはずだ、と納得しました。
    特に第2部で、大金を手に入れた後の、贅を尽くしたサーカス団でひと騒動するシーンは、ユーモアと夢に満ち満ちていて楽しかった。長い話だけれども、序盤から終盤まで、七色に変化する読み応えたっぷりの銀河絵巻。
    50年前に書かれたとは思えない、色褪せない傑作を、どうぞ思い思いのノイタミナヴィジュアルで読んでほしい作品。
    面白かった!!

  • ローカス誌が選ぶ20世紀SF小説オールタイムベスト第9位の、古典的名作。

    書かれた時代が1950年代ということを考えれば、ジョウント(テレポーテーション)や「加速装置」の斬新さは認められるべきで、スケールも壮大。

    また、途中の復讐劇までは、設定がテンポ良く切り替わり飽きずに読み進めることができる。ただし、ジョウントの設定がまったく生かせてない。

    ジョウントいる?と思ったけど、最終局面ではジョウントが重要な意味を持ってくるといった流れ。

    総じて書くと物語としては良くできているんだけど、訳が古く、全くこなれていないので、乗ってきたところでいちいち水を差され、物語に深く入り込めなかった。

    特に、会話文では翻訳者は本当に物語の流れを考えて訳したのかと思うぐらいで、いちいち頭の中に「?」を感じながら読まなければならなかった。

    出版が2008年となっているので油断してたけど、実際の翻訳は1978年のものとほとんど変わってないと思う。新装版を出版年月として出すのは良くないですね。

    加えて、登場人物の思考の変遷が全く理解できない。もともと、SF小説に人物の細かい心理描写を期待するものではないかもしれないけど。

    いずれにせよ、新訳が出たらまた読んでみたい。

  • 条件付きだが望む場所へのテレポートを可能とする「ジョウント」や、サイボーグ009の元ネタと思われる「加速装置」など、後のSF作品に多大な影響を与えた本作。壮大なスペースオペラとしてはもちろん、巌窟王を元ネタにしているだけあり、復讐譚としても非常に魅力的なストーリーで読み応え抜群でした。

    ただ、復讐の動機がちょっと弱いかなと思ったのと、オリヴィアに惹かれる流れがあまりにも唐突だったことなど、その他にも「え?なんで?」と思う展開が多く、少し残念な点もありました。この辺りは半世紀前の作品ということで、そういうものと割り切ったほうがいいのかもしれませんが。

  • 昔のSF。子供の頃にジュニア版で読んでいた本たちはこんなのだったかも。評価が高いのは分かるが、いまいちノリきれず。ドラマチックというよりも大袈裟と感じられてしまうからかな。

  • 第三長編▲「ジョウント」と呼ばれるテレポーテイションにより大きく変貌した世界。無限の時空をまたにかけた絢爛たる復讐の物語▼ワイドスクリーン・バロックでオールタイムベストSFの一冊。舞台は2022年に反重力装置がある世界線、時は25世紀、黄金時代であり内惑星連合と外衛星同盟が相争う「信仰無き」世界です。無謀で大胆な姿がアメコミ的で、モチーフの『モンテ・クリスト伯』如く、粗野な若者が冒険の中で英知を獲得していく姿がカッコ良い。やらかす主人公、追う敵役やヒロインズが魅力的で、復讐の果てに知る真実…(1956年)

  • 最強のSFの一つ。これが50年代に書かれた事は奇跡だろう。実験的かつ王道。

  • 筋はスペオペだが最後の時間的収束が肝
    需要見合わないだろうけど新しい訳文で読みたい

  • SF的な要素とミステリー要素、そして作者からの根源的なメッセージを含んだ、紛れもない古典SF(というより古典海外文学)の名作だった。


    とある宇宙船にて記憶を失った状態で目覚めたガリヴァー・フォイル。救難信号を出したものの受理されることはなく、彼は復讐に燃えることになる。
    この導入部分のシンプルさが、まず良い。

    救難信号を無視したのは誰だったのか。その真相を探る行程はミステリー小説さながら。

    一方で、SF小説としても、もちろん大いに楽しめた。
    25世紀の宇宙では”ジョウント”と呼ばれるテレポートが一般的となっており、一般市民やホームレスでさえ、テレポートをすることが普通になっている。
    そしてテレポートのみならずテレパス能力や赤外線を観る能力なども登場するので、SFファンとしては心をくすぐられた。
    内衛生連合(地球、金星、水星など)と外衛星連合(木星、土星、及びそれらの衛星)が敵性関係にある、という更なるマクロ的な世界観も良い。

    あとは、細かい点だけど、何気ない社会的な描写も良かった。
    例えば、富裕層の間ではジョウントが”ダサい”とされ、自動車のような旧来の移動手段が富の象徴となっている、等。
    テレポート社会のリアルさを強固にしているという点で、非常に良かった。

    そして何より、ガリーが"時空間ジョウント"を発現させるシーンはSF史に残る名場面だった。

    終盤には「人間とは、社会とはどうあるべきか」というメッセージが投げかけられる。単なる空想物語で終わらないのも、この作品が長く読み継がれるポイントの1つなのかもしれない。

    ただ、女性があまりにヒステリックに描かれていて、そこは少し時代を感じてしまった。

  • トニックウォーター味の空気に、軽快なハンマー音が見える! 思わず出来損ないのオマージュもどき短編を書いてしまったくらい、衝撃を受けた作品。読めばきっと貴方も酩酊します。現実からずっと遠くへ瞬間移動(ジョウント)したい貴方へ

  • 確かにモンテクリスト伯をオマージュ?したもの。どことなく、ふわりとモンテクリスト伯の感じが漂ってきた。ただ、最後あたりがちょっとごちゃごちゃし過ぎているような気もしないではない。
    ただ、SFであるのに、何故か文面から伝わってくる現代チックというかそんな雰囲気は好きだった。

  • 「私は常にパターンとリズムとテンポに憑かれている」とあとがきで著者であるベスターの一言が紹介されている通り、物語全体が疾走感に溢れていて、どんどん展開していく。そして主人公であるガリー・フォイルの鬼のような力強さがそこにプラスされ、文書の行と行の隙間から凄まじい情景が浮かび上がるような錯覚にとらわれてしまう。まさにまさにSFの名作の名に相応しい魅力溢れる大作だと感じたが、惜しい点として、翻訳のせいかところどころに滑稽なセリフや言い回しなどがあり、感情移入の妨げになることも多かった。

  • SFの形をとった爽快な復讐譚であるとみなして読み始めた。しかし、物語を読み進めるに連れて次第に主人公フォイルの壮絶な復讐の念についていけなくなりそうだったが、巧妙な文章とテンポに魅せられ栞を挟むこと無く頁を捲る手をすすめ、ついには全感覚的な読書体験として結末を読み終えた。多少疑問を膚で感じる部分はあるが、読みやすくも独特な文体で表現されるそのスケールと息もつかせぬ展開をもたらすアイデアには感服せざるを得ない。全感覚で迫力を味わう読書体験、是非ご一読を。

  • 正直に言うと二部の始まりでギブアップ寸前になり他の方の終盤での伏線回収が良かったとのレビューに励まされて何とか読了まで迎えることが出来た。レビューを書いた方にまず感謝したい。

    ひたすらに訳がよろしくない。が、それは脇において冷静に振り返ると物語としてはギミックや伏線、黒幕、ラストの展開等要所要所はお手本のようにキッチリしており誤読感がいい。1950年代に書かれ現在もリスペクトされていることには納得できる。歯に仕込んだスイッチを押すと加速装置で無敵状態になるチートはいきなり過ぎて置いてきぼりを喰らったが好きな人にはたまらないだろうし、想い人が実は復讐を誓った黒幕でしたとか一歩間違えば世界を滅ぼす物質を世界にバラ撒いてその行く末は人類に一任するとか主人公が永劫回帰して序盤の自分の名付け場所に戻って来るとか他にも挙げられるのはいくつもある展開が目白押しでこれらを終盤に一気に詰め込んでいるから良い意味でたまらない。とりわけ未来の主人公が時空間移動して過去の自分のところに来て手助けするのは思わずニヤけた。ぶっちゃけ分かっていた、物語の所々で主人公に似たやつが現れた時点で分からないわけがないが、話が進んで改めて主人公視点でそれをやられるとドーパミンが出る。私この展開好き(パーンってなるのは男の子だからだろうか。

    最後まで読んで良かったと思う。が、他の人に勧めるまでにはいかない最大の障壁が日本語訳なのはどうにかならないのか。訳者には申し訳ないが2008年に再出版したときに見直すべきだったと、出版社に言いたい。SF作品に需要を見込めなかったのかもしれないが過去の名作と名を打つのなら誰にでも読みやすいようにするのも出版の役割ではないかと。今からでも良いので是非改訳をお願いしたい。その時はもう一度読んでみたい。

  • 主人公ガリヴァー・フォイルの復讐譚。フォイルの圧倒的な生命力と無茶苦茶で猪突猛進で大胆不敵な様がシンプルに格好良いし何だか憎めない。ピカレスクロマンという感じ…。
    最後の最後で現在にも通ずるメッセージがあり、作者のやりたいこと、伝えたいことは理解できた。
    シンプルに面白いです。キャラクターも魅力的!

  • 本書を伊藤典夫は「アメリカSFの最高の到達点」と断じた。本書と『分解…』2作のみでSFマガジンアンケート作家ベスト10に入った超絶の金字塔。所謂“Widescreen Baroque”、宇宙時代のモンテ・クリスト伯といった出だしが“一般的”小説と異なり話はどんどん大きくなり、収束不能と思え残り頁も少なくなってから思わぬ伏線回収。結末で「そう来るか」との嘆息は、プロローグで25世紀の危機をインナープラネッツ社を含む人類が乗り切ったことを示唆していたのに想到すると俄然楽しく、頼もしくなる。これ程のピンチを…!

  • うーんって感じ。多分その当時のSFの不文律(宇宙旅行とアクションそしてドラマ)を踏まえて、新鮮で面白い作品だったんだろうなと思う。共感覚のシーンは草野心平の詩みたいだなぁと感じた。

  • パケ買い

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