- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150310196
感想・レビュー・書評
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21世紀後半、大災禍を生きのびた人類は社会の構成員一人一人の生命こそ社会にとって最も大切だということに気づく。人は成人すると体内から分子レベルで監視され、細胞の異常が見つかればすぐに修正され、街のデザインは精神衛生上良いもの、過激な映像はカットされ清潔かつ健全な「思いやり」のセカイとなっていた。
一見幸福感に満ちたかのような社会に3人の少女…ミァハ、トアン、キアンは聡明で純粋な目で見せかけの優しい社会とその欺瞞に気づき、自分は自分だけのものだという思いから社会に衝撃を与えようと、ある企てをするが…
ミステリーのような展開のため、普段あまりSFを読んでいなくても、ついつい先が気になり夢中になって読んでしまったが、十代の頃に読んでみたらきっと今以上に強い印象を受けたと思う。病気にならない、苦しみもいじめもない、死なない社会…死ねない社会…あらかじめ設計された「健全な世界」で生きて行くことが幸せなのか、心を持つ人間の生について、考えさせられる作品である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
3.8くらい。
途中まではすごく面白かったのになんだかオチが残念だった。題材や世界観、登場人物はすごくすき。queen、という呼び名もかっこいい。
でもさいごが……せめてもうちょっとひっぱってもよかったのでは。-
すごくわかる…!
途中までおもしろかったのに最後にむかうにつれ、あれあれって思う。
世界はすごく魅力的なのにね…すごくわかる…!
途中までおもしろかったのに最後にむかうにつれ、あれあれって思う。
世界はすごく魅力的なのにね…2013/07/20 -
2013/09/24
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生命が支配における最後の領域なんだということをこれだけのボリュームをもって展開できるのは、さすがだと思う。
小説としても文体としても、前作の『虐殺器官』からはずいぶんうまくなったと感じた。
ただ、後半を読む限り、思考実験の域を出られなかったという印象をぬぐえないというのが正直なところ。
伊藤に関してはどうしてもその後の本人の生き様が頭をよぎるので、文章だけを切り離して評価しにくいところがあって、それはある意味では伊藤らしいのかもしれないとも思うのだがずいぶんやりにくい。
個人的な好みをいうのであれば、生命を感じずに終末を迎える人間の恐怖というものがぜんぜん描かれていないのが不満だし、最後の章は蛇足だ。
ただ、それが死を目前にした状況によってなされていることだと思うと、胸に迫るものがあるのも確かだ。
書き換えるかもしれないが、今感想として出せるのはこのくらい。 -
面白く素晴らしくて、でも、どう表現してよいのか困ってしまう。
読めば解るから!と済ませてしまいたい。
とにかくじっくりと読んで欲しい。否、世界観故にじっくりと読まざるを得ないかも。
何度も言うけど、もう読めないのが惜しくて悔しくて仕方ない。 -
意識は、人間にとって生存上有利だから備わっているだけのもの。そして、そこには多少のバグが存在する。
ここまでは同意できるけど、宗教に対する認識が少し違う。宗教って、人がそのバグを認識した上でうまく付き合うために作り出した道具立てだと僕は思ってる。ここでは、「宗教は個を認識するための機能」だと。ちなみに仏教は全く逆のとらえ方。一切皆空。どうも確信に迫り切れてない書きっぷり。
ハーモニーと涅槃は似た境地かもしれない。それを外注するか内製化するかという違いは、確実にあるけど。
著者は34歳の時に、この物語を書き、肺ガンで亡くなった。僕はいま同じ34歳。感慨深いものがある。 -
純白のディストピア。
綿密に練り込まれていて重厚なはずなのにどこかふわふわとファンタジーっぽいのはなぜなんだろう…… -
命はすべからくかけがえのない社会的リソースという意識に支配された世界のお話。そのおぞましさは、慈母のファシズムって言葉に集約される。
問題を矮小化すると、宿題をやれと言われてやるのと、やろうと思ってやるときの違いというか、例え良いことで、結果が同じでも、選択の余地のない道徳世界は私もいやだなあ。同じ理由でこの話の結末も受け入れ難い。
が、プロットはシンプルかつスマートで、ラストまでのテンションも申し分ない。
緻密な世界観を立ち上がらせ、それをある種の諦念に支配されたメランコリックな文体と無機質なコーディングが装飾する、骨太なSFだったなー。
虐殺器官とどっちが好きかと言われると悩むけど、不気味さとか世界の描き方は虐殺器官の方が好きで、登場人物のトァンとかミァハとか、ネーミングがどうなんだと思わないではないけど、ハーモニーの方が主人公は魅力的だった。
思いやりに満ちたパステルカラーの社会の中で、真っ赤な制服に身を包んだクールな元女の子。死んじゃった親友のコピーでしかないのかと思いきや、なかなか自分がある感じで最後の方はかっこ良かった。
最初戸惑ったのだけど、クエスチョンマークが使われないのが独特だった。問いかけ文は「…」で締められていて、問いかけというより呟きみたいで、反響しない言葉による孤独さが際立つ。
個人的に、全書籍図書館のルビが「ボルヘス」と振ってあるのにグッときた。 -
故・伊藤計劃の長編第2作。「大災禍《ザ・メイルストロム》」という核兵器による大争乱を経て人口が半減し、生き残った人類の大半はWatchMeという健康管理ソフトを体内に入れて、すべての病気を駆逐することに成功した、というユートピア=ディストピアもの。丁度放映中の「Psycho-Pass」と内容がシンクロして面白かった。「ハーモニー」では人類の身体が常時監視されているが、「Psycho-Pass」では精神状態が常時監視されて、「犯罪係数」が上昇すると刑罰の対象になるという世界である。やはり、虚淵玄(「魔法少女まどか☆マギカ」「Psycho-Pass」脚本家)は伊藤計劃の影響をモロに受けているに違いない。「屍者の帝国」も早く読まなくちゃ。