華竜の宮(下) (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
4.10
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本棚登録 : 727
感想 : 81
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  • Amazon.co.jp ・本 (458ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150310868

感想・レビュー・書評

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  • 同じく、次作の深紅の碑文を読んで、文庫本かで再読。碑文の時にも思ったが、本作では碑文で詳しく語られる人類の主としての記録を伝えるべき建造された宇宙船や、ホットプルームに至るまでの人類の葛藤等はあっさりと語られるにすぎなかったことを再認識。ただし、碑文を読んでいるときには忘れてしまっていたことを思い出すことができ、両作品ともに続けて読めば更に、この世界観に浸ることができるだろう。碑文の際にも記載したが、ぜひ、同じ世界観で取りこぼしてるエピソードを含め、次回作を上梓願いたい。

  • 新たな地球規模の危機。
    皆、それぞれのいる場所で出来る役割を果たして行く。
    外交官の青澄をメインに話は進むが、私が心惹かれたのはツェン・タイフォン。
    体制の中にいて、高官である兄、海上民や部下を守り、海に生きる。
    相棒であった人口知能のマキが、遠く離れた場所から言う最後の言葉が、すべてだと思う。
    「彼らは全力で生きた。それで充分じゃないか」

  • 久々の読書で、すごい大作に出会ってしまった。
    圧倒的に壮大な世界観。実現しない世界を、読者の頭の中に、こんなにも鮮やかに再現させられるなんて。想像力が掻立てられる文章につられて、どんどんページを捲ってしまう。

    この世界を取り巻く環境やシステムが大きく変わっても、変わらない人間達、政治。
    自分の信念を信じて、より良い世界の実現のために、時にぼろぼろになりながら、真摯に闘う主人公の生き方に胸が熱くなった。
    「彼らは全力で生きた。それで充分じゃないか。」

  • 突拍子もないといえばないけれど、それがSFですよね。想像力、構成力に脱帽です。綺麗な終わり方。

  • 地球の環境変化を前に、青澄はどのような決断をするのか。

    身体を環境に変化させる、というのは、イカになった某マツモト氏を思い出させたのだけれども、人類はそうした選択をするのだろうか。
    世界観もしっかりしているし、文章も読みやすいのだけれども、青澄が読者に対しても一線引いているようで、どうにも入り込めなかった。

  • 海底隆起により多くの陸地が水没した25世紀。
    人類は辛くもこの未曾有の危機を乗り越え、残された僅かな土地と海上都市で高度な情報社会を維持する陸上民と、〈魚船〉と呼ばれる生物船を駆り生活する海上民とに別れた。
    青澄誠司は日本の外交官として様々な組織と共存のため交渉を重ねてきた。しかし、政府官僚や各国家連合の諍いや思惑が複雑に絡み合い困難にしていた。
    そんな折、この星が再び環境激変を起こす予兆を察した機関があり、ある極秘計画を発案するがー

    世界観が特殊で入り込むまでは読みづらく感じましたが、慣れてからは一気に引き込まれました!
    陸上民は海上民に対して上からなんだね-
    ルーシィとか人としてのかたちを持たない生物への進化(?)を一方的、勝手に発案するのとか恐いわ…

    汎ア海上警備隊の皆には…涙
    主要なキャラクターは皆そうですが、信念がある生き方が格好よくて、でも全てが思うようには行かないのが歯がゆい。

    人と人、パートナーとの結びつきも色々でそれぞれ胸にきました。

    宇宙への計画が潰されず実現したのは良かった-
    やっぱり宇宙にはロマンが夢があるよね!

    この著者、私の中では『ショコラティエの勲章』なんかのスイーツ系のイメージが強かったのですが、SFも素敵で、他のも読んでみたくなりました☆

  • 下巻はストーリー展開が早くて面白かった。頑張って上巻読んだ甲斐があった。

  • 上田早夕里「華竜の宮」読了。ツキソメのデータの件も含めて、物語全体がすべて計算され尽くされたうえで出来上がった作品ではないだろうと思う。まったく個人的な趣味としては、解説にもあるように魚舟と獣舟という設定が納得できず、ファンタジー的な雰囲気が少し得意ではなかった。

    しかし、厳しい未来という世界観の中で、外交官を主人公にした「交渉による」悪あがきの姿に心を打たれた。特に、キーパーソンの皆が凄まじく真面目でありながら、利害も考え方も違うという状況で交わされる会話の一つ一つの説得力。

    エンターテイメントとしては、ツェン・タイフォンの男気溢れる生き方に涙した。一方で影の薄い兄のリーについても、非常であり、熱血漢の弟とは手段は違えど、目的を共有している姿に納得した。また、青澄の上司である冷血な桝岡と外務大臣との交渉のシーンの迫力は、意外性を含めて興奮した!

    主語を主人公の青澄ではなく、アシスタント知性体にしていたのも、エピローグにまできてひどく効いてくる。コピー可能で死をも恐れない存在であるソフトウェアを語り部にすることで、人間の営みが客観的に見える。し、ラストの青澄とのちょっとした再開シーンだけで、なんか満足してしまいました。

    SF的な設定でありながらも、その本質は人類をかけた人々による「外交」のお話であるという本書。ここまで本気で言葉のやりとりを扱った小説は「ジェネラル・ルージュ凱旋」くらいしか読んだことがない。そして、規模感がSF的に大きいので、フィクションとしてはより面白い。文句なしに、傑作です。

  • 面白かった。

    こにくらしい登場人物が、ストーリーの展開で、その、私がこにくらしく感じる規範のままカッコよくてしびれた。


    途中、ショックで鬱ったが、アシスタント知性体がファティマみたいでな、泣けた。





    作者がユアンの魚舟を綺麗にしたのは何でかな。

    青澄がNの理由は何かな。

    タイフォンのパートナーの真意は何かな。あるとしてだけど。

    青澄ずいぶん胃を悪くしてたがそれでおわらなくて良かった。

  • アメリカや中国のこと悪く書きすぎで、日本のこと良く書きすぎという気がしないでもなかったですが、著者の人類に対する愛情と信頼を感じられる作品でした。人類が滅亡に瀕したとき、本当に全世界が協力して危機に立ち向かうことができるのか、少々疑問な気もしますが、そうであって欲しいなと思いました。
    ラストにアシスタント知性体のマキが言った一言にグッときました。
    何も成果を出せなくても全力で生きること、それだけで充分じゃないか。そうそう仰る通り。

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。2003年『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、デビュー。11年『華竜の宮』で第32回日本SF大賞を受賞。18年『破滅の王』で第159回直木賞の候補となる。SF以外のジャンルも執筆し、幅広い創作活動を行っている。『魚舟・獣舟』『リリエンタールの末裔』『深紅の碑文』『薫香のカナピウム』『夢みる葦笛』『ヘーゼルの密書』『播磨国妖綺譚』など著書多数。

「2022年 『リラと戦禍の風』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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