ツリーハウス

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 272
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  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163289502

感想・レビュー・書評

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  • 前半と後半でテーマががらりと変わった・・というか、途中から、筆者が難しいことを考えることに疲れたのかなと感じてしまった。前半は重い話で、読み進めるのに多少時間がかかったが、後半はすいすい読めた。いつもの角田光代って感じ。

  • ちょっと「永遠の0」を彷彿させるような内容。
    いや、ゼロ戦とかは関係ないです。
    どちらかというと、戦争から逃げて逃げて逃げまくった人たちのお話。
    何が同じって、やはり孫にあたる人物が、死んだ祖父の秘密を解き明かしていくところです。
    現在軸が進みながらも、過去のストーリーがちょこちょこ明かされる形式って面白いですね。
    雰囲気は暗くて重かったですが、名言がところどころにありました。
    生きる力をもらえます。

  • 久しぶりの角田光代。
    親子三代に渡ってのものがたり。
    ヤエの、逃げることに関するいろんなセリフがじんわりとくる。
    「でもね、どこにいったって、すごいことなんて待ってないんだ。(略) そうしてね、もう二度と同じところに帰ってこられない」
    逃げたことが恥ずかしかったけど、長春の広場の木を見て、逃げてよかったと。何をした人生でもないけれど、死なないでいた、生かされたことに礼をいおうとしたり。逃げることしか教えてやれず、子どもも孫も逃げてばかり、昔と今とでは逃げることの意味もちがうのにと笑ったり。

  • 根なし草のようなある家族の、ルーツを辿っていくストーリー。
    面白くて、思わず一気読み。
    満州とか、題材がもしかしたら苦手かも…と思っていたけど、そんなことはなく読みやすく惹き込まれてあっという間に読んでしまった。


    何をした人生でもない、人の役にもたたなかった、それでも死なないでいた、生かされたんです。

    この言葉で涙腺崩壊。
    逃げてよかったんだ、っていう言葉。
    重いけど、とても好きな小説のひとつになりました。

    本筋とは関係ない感想だと思いますが、この本を読んで、死ぬのが怖くなった。どうしてだろう。

  • 最後に祖母が孫に「自分達は抗う為に逃げた。生きる為に逃げた。だから逃げる事しか教えられなかった。」と言う。戦前から平成までを生きぬいたから言える重い言葉だと感じた。“逃げる”という言葉は現在はあまりいい意味では使われていない。しかし何かに向かう為に逃げるのと流されるままに逃げるのでは意味が全く違うと祖母(作者)は伝えたかったのではないかと感じた。
    根なし草、バラバラだと思っていた家族がしっかりと根を下ろして生きているという事を家族は確認できたのではないだろうか。
    始めて読んだ作家さんで予備知識のないまま読み始めたが面白かった。

  • 戦前中国に渡りそこで結婚して日本へ逃げてきた祖父母とその子ども、孫の家族の物語。逃げることの意味も歴史と共に変わっていくな。エンターテイメント性には欠ける気がするけど、壮大で丁寧な物語でした。

  • 心も行動もバラバラかと思えた家族。
    物語は主役の孫・良嗣が祖父の臨終に出くわしたところから始まります。そしてひょんなことから孫が未亡人となった祖母を叔父と共に思い出の中国へ連れて行くことになります。

    舞台はさっぱりしていてお互いに関心が見られない家族の「現代の日本」と、祖父・祖母達の出会った「戦中の満州」がテンポ良く交互に書かれています。読み進めると現代までの家族の過去の経過が出てきます。

    とても複雑な構成なのに、すんなり読めるのが角田さんの文才ありきのところだと思います。いつの時代にもスーッと入って行けるんです。

    ツリーハウスは、新宿西口で自宅兼営む中華料理屋の敷地内にあった大きな木にあったもの。他にもポンコツのバンが放置されていて、どちらも家族が逃げ場として使います。

    実際にあった学生運動、オウム真理教等も出てきて、その有名な事件に巻き込まれるところで、時代を把握しやすかったです。逃げる事で生き抜いてきた家族が、実はお互いを気にして思いやっていたあたりが無理なく共感できました。

    自分の近い祖先の歩んだ歴史すら分からないのは何だかつまらないな、と思えた作品でした。

  • タイトルは「木の上の根のない家」または「ツリー状の家系図」をイメージしているのでしょうか。。。読み応えのある大作でした。

  • 祖父母がどこから来たのか、祖父の死をきっかけに自分の家のルーツを探るために、祖母とともに中国へ――。というあらすじから想定していたのとは少し違う印象でした。確かに、ルーツは提示されているのですが、主人公である良嗣と祖母と叔父の中国旅行とは別に、祖父母の、両親の物語が並行して語られていき、決して良嗣がルーツを見つけ出していくわけではありません。
    これはこれで狙いがあるのでしょうし、気になっていることにはすべて答えがあるのですが、こういう形で知るのでいいんだっけ…となんだか釈然としない気分。
    最後に祖母ヨネが言っていたことでもありますが、時代とともに「逃げる」ことの意味が変わっていく中で、「子供たちに逃げることしか教えられなかった」と。かつてほど明確な「逃げるべきもの」がない今、確かに逃げは戦いではなく、本当にただの逃避になりかねなくて、平和というものをかみしめながらも、それを乗り越えていくのもまた簡単ではないよねと思ったり。

    ともあれ、満州から帰ってくるときの描写を、自分の子供と重ねてしまい、戦争ってこういうことなんだと、胸にザックリと刻み込まれた気分(終戦後でありますが)。

  • 満州にいくことで人生が開けると信じた男女が、時代の波に逆らい逃げ続けることで何とか生き延びて日本へ帰ってきた。
    現代はそんな男女が夫婦になり子育ても終え孫も成人するくらいの月日が経ち、今は食べ物を必死に探し、一日一日を生き延びることに夢中になるなんてことがない平和な時代。
    しかし、全ての家庭の床下には、戦争の記憶が埋まっている。
    そして、生きて帰ってきたことを申し訳なく思う気持ちは一生続く。
    戦争を体験した人が毎年減っていくことは仕方のないことだが、自分の祖先が戦争時代どんなふうに命を繋いでいったのかを考えさせられた作品だった。

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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