ツリーハウス

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163289502

感想・レビュー・書評

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  • 主人公はフリーターの青年。
    中華料理店を営む実家で暮らしている。
    家族の誰もが出かけて、家に彼一人のある日、祖父が突然なくなる。

    自分の家族はどうも他の家族とは違うらしい。
    叔父はずっとニートだし、久々に祖父の葬式で会った姉は妊娠している。
    そしてそれを家族は理由も訊かず受け入れる。
    いなくなったらいなくなったで受け入れる。

    祖父の死をきっかけに主人公は自分や家族のルーツ、根っこのようなものを知りたいと思うようになり、祖父と祖母が出会った地、大連へ祖母、叔父と共におもむく-。

    「私はいつも逃げてばかり」
    そう言うと、知人の女性から
    「逃げたらいけないの?」
    と言われ、とても新鮮な思いをした事をこの本を読んで思い出しました。

    この本では「逃げる」という言葉がよく出てきます。
    故郷から逃げ、逃げた先の異国からも逃げた祖父母。
    そしてその子供であり、主人公の父親は自分の夢から逃げた。
    叔父は世の中から逃げた。

    だけど逃げるという事は生きる手段のひとつではないか?
    彼らは形になるものをいくつも遺しているのだから。
    逃げてばかりでなく、踏んばった時期もあったのだから。
    そんな事を思いました。

  •  勤めている会社の社長が「自分は満州からの引き上げ組だ!」と良く言うので、その時代のことを知りたいとは思っていたものの、先延ばし・先延ばしにしていたので、文庫化されると読む作家の角田さんが丁度良い時に出して下さった!(笑)と、拍手。
     「逃げる」ということについて考えさせられるおはなしでした。

  • これ好きです。
    読みながらいろんなことを考えた。

    最後になるかもしれない、おばあちゃんの旅。
    息子と孫と連れだって。
    回想シーンとともにゆっくり船が進む感じ。

    わたしから生まれた子だもの、自分の持っているものの中しか教えられない。
    それ以上のことを、どうして偉そうに言えよう。
    読み終わり、深く恥じた。

  • 面白かった。
    以外に身近にいる人の人生ってのは壮絶なのでは?とふと思わせてくれる小説でした。


    余談ですが、うちのじいちゃんが亡くなった時に某世界企業の社長さんが来てた。

    何の関係かな?と聞いてみたら先代の社長の運転手を、長い間やっていた事をはじめて知った。

    知らない事だらけだなと改めておもいました。

  • とても面白く、引き込まれて読んだ。時代に翻弄され、流され、あがく人々の物語は、心に迫る物がある。

    ただ、なんというか、物語の構成として、中国に旅行に行くことの必然性というか、そういうのが薄いよね?過去話は孫に語った内容というわけじゃなくて、唐突に挿入されるだけだしさ。会いたかった人に会えなかったのは「逃げたら戻りたくても戻れない」ということで、カタルシスが得られないのはそういうものなんだろうから、それは別にいいんだけど。良嗣に視点を合わせて読み始めるから、過去話が始まると、これは良嗣は知らない情報なんだぞーと頭の別の引き出しに入れて、現在に戻ってきたらまた良嗣目線に戻って…がちょっと面倒だった。

  • すばらしかった。
    色々な昭和が蘇り、色々な事を考えた。

    壮大な物語はなにも特別な家庭にだけあるものではなくて
    普通の家族環境でも、みんなみんななんかある、ということを改めて思う。

    個人的には自殺したモトが一番かわいそうで・・・・経済成長時一番生きにくいタイプだったんだろうと思う。

  • 普通の家族、普通の家庭、普通の人生。
    そんな言い方で、ひとりひとりのめきていることをかたづけることはできないんだなあ。
    あらためて、自分のこと、自分の周りの人、そして、ちょっとだけ知っている人のことも考える。
    一読をお勧めしたい。

  • あとさきのことなど考えず、生きて今日一日を終えるために建てた家。
    そこで、時代の大きな流れに飲み込まれながらも、それぞれの世代が生き続けていく。
    期待したものとは違う、地味で貧乏くさい生活に戸惑い、しかし次第にそれを受け入れながら。

    明るい未来や華々しい成功の物語は展開しない。大々的な人生の目標や意義などもはっきりとは示されない。
    それでも、生きて、生かされて、生き抜いていく希望と勇気がわいてくる本だった。

  • 新宿で中華料理店を営む一家の、戦時中、高度成長期、現代・・と親子三代にわたる家族の物語。
    最初は「いまいち?」と思っていたけど、じわじわとページをめくるのが止まらなくなる1冊でした。

    一般的な家族とはちょっと違うし、不器用で流されてばかりいる家族だけど(けっこう波乱万丈)、そこが憎めない。
    それぞれの時代の暗い出来事が家族に不幸をもたらすことがあるけれど、どんな状況でも「逃げてもいいから生きることが大事」と心に響いた本でした。

  • 角田さん、こういうのは初めて読んだ。
    最初ちょっと疲れたけど、途中からぐんぐん読ませる。

    ヤエが関係ない食堂の人に語るところとか、
    太ちゃんの過去がわかってきて見直していく感じ、よかった。

    逃げるってこと、それが正しいときもあるってこと、救われると同時になんかグサッとくる。

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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