ツリーハウス

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163289502

感想・レビュー・書評

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  • 2022.3.30読了
    三世代に渡るクロニクルということで、登場人物が多く、今誰の話を読んでいるのかわからなくなり、家系図を書いて読んだ。
    祖母の、逃げることしか教えられなかったという言葉が刺さる。
    逃げる人、逃げられなかった人、それぞれがどちらにしても苦しみ、それでも家族は生きて血を繋いでいく。
    この作品では、満州からの引き揚げについて触れられているが、その部分を読むのが自分には一番辛かった。
    今改めて、戦争に対しての警鐘として本作を振り返る。

  • 満州移民の時代から現代までの親子三世代を描いた家族小説。

    死にたくないために社会から逃げてきた祖父母、逃げることしか教えられなかった息子達、その規律のない環境に逃げることも戦うことの意味も分からなくなった孫世代。

    家族の根っことは何か?

    生きるために必要なものは何か?

    現代人の理不尽な生き方・主張に対する批判。

    緻密な時代背景に裏打ちされた登場人物の感情描写。

    只々深いの一言。

    良い意味で、どういうスタンスで読んでいいか迷った作品でした。

    またいつか再読したいです。

  • 戦争後の日本は、何も無かった。誰もが無我夢中で今をこの一日を生き抜くのに必死だった。
    3世代に渡る壮絶な一族の物語。
    祖父祖母のように、逃げて逃げてここまで生きてきた人たち。その反面で私たち世代は、逃げも戦おうともせずに流れていく方向に流れようとする。誰も普通なんて知らないし誰にも普通なんて決めらんない。自分がやると決めたことが普通じゃなくてもやるんだ。中途半端にその場にとどまんな。後悔なんてしないことなんてない、そんなこと考えたってどうすることもできないんだ。過去を見る前に今をみな。
    祖母のお説教が読後も響いてきた。

  • 戦前から現代まで続く藤代家の家族の物語。
    壮大な昭和史でもありました。

    戦中の満州での話、戦後の東京での話、そして現代、祖母のルーツを探る旧満州の旅。

    人に歴史あり、
    家族に歴史あり、
    そして、日本に歴史あり。

    翡翠飯店は、何も無い所に根を張り育ってきたツリーハウスだったのでしょう。

    誰に心を寄せることなく、傍観者の如く読み進めましたが、素晴らしい話だったと思います。
    出逢って良かったです。

  • 過去と現在が並行して進んで、最後に今この瞬間でバチーン合流して、いいよ光代いいよ。どこかに行けば今よりいい何かがあると信じてしまう感覚、みんなあるんだろうなぁ。

  • 祖父の死をきっかけに自分の家族のルーツを探そうと、祖母と叔父と満州へ行く話。三代に渡る家族の歴史が 描かれていて読みごたえがある。

  • ちっとも美しくない一家の人間臭さ、生きざまにとても感動した。
    終盤はとくに気持ちが入り、ヤエの言葉に涙が溢れました。

    「人生はちゃんと帳尻が合うようにできてる。」
    「もし、なんてないんだよ。後悔したってそれ以外はないんだよ、何も。」

    前向きな気持ちにさせてくれる小説でした。

  • 角田光代さん、またまたなんとも読み応えのある本を書いたな!というのが第一印象。
    結構分厚いけど読みながら、なんだかその時代を生きてるような気分になった。
    正直どの主人公にもあまり共感はできない。苛立ちさえ覚えることもあった。
    それでも読み始めると、なかなか止まらない。

    翡翠飯店という小さな中華料理屋の三世代を描いた作品で祖父の死をきっかけに
    孫の良嗣は何の干渉もしない自分の"根無し"家族のルーツに興味を覚える。
    そこから、現代、戦時、経済成長期の頃と藤代家とともに物語りは時代を行き来する。

    この孫が自分の家族のルーツ探しに出た時に、
    もしかしたらものすごい過去があるのかもしれない、と何処かミステリー小説気分で読み始めた。
    でも正直あまり浮き沈みもない。淡々と描かれる藤代家の三世代の様子。
    それなのに、なんだかわからないけれど目が離せない。
    読んでいくうちにまさにこの家族がこうなった歴史というのが見えてくるから面白い。
    血はやはり争えないな、と。

    祖父母の時代、父母が生きた時代、そして現代。
    時代はまるで違う。
    それなのに彼らの生きてきた道を辿ると、
    まるで何も変わってなかったんじゃないかとさえ思ってしまう。
    生きて、子が生まれ、そこから繋がっていく。
    たとえ"ただ生きてきた"だけに見えても、それさえしないと歴史はできていかない。

    根無し草でも、ツリーハウスのように多少グラグラしても
    それでもそこに確かにある"家族"というもの。

  • 女性の視点で家族の歴史が語られるのは多いけど、これは男性の視点だったので新鮮だった!内容も面白かった。

  • 本書はいきなり祖父の死から始まる。バラバラの家族、根なし草のような叔父と子どもたち(主人公を含む)、多くを語らない無愛想な祖母。
    なんなんだこの家族は、と思ってしまうが、祖父母からの歴史をなぞるうちに、いつの間にかそれぞれの登場がいとおしくなる、そんな話。
    わりと好きです。

    ドラマ化しないかな〜。
    最近、角田さんの作品が映画化・ドラマ化しているので、今後に期待♪

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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