カウントダウン・メルトダウン 上

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163761503

感想・レビュー・書評

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  • [戦場にて]戦後日本が直面した最大の危機とも言える福島原子力発電所事故。政府や東電、そしてホワイトハウスや在日米軍などの関係者を幅広く取材する中で浮かび上がってきた、当時の事故対応の真実を記す渾身の一冊です。著者は『通貨烈々』、『同盟漂流』などで知られる評論家・船橋洋一。2013年の大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。


    必読の作品かと。水素爆発やベント、注水やSPEEDIなど、テーマごとに各章が組み立てられているのですが、どこを取ってもその記述内容(言い換えれば当時の状況)に様々な意味で畏怖の念を覚えました。福島原発事故に関しては様々な書物が刊行されていますが、それらの中でも特にその質及び正確性の観点から本書の右に出るものは数少ないのではないでしょうか。終章における著者のメッセージはとんでもなく心に突き刺さるものがありました。


    また、在日米国大使館や米軍、ホワイトハウスなどの内幕を克明に描いたのは、その分野を得意とする船橋氏ならではないかと思います。予期せぬ形で試されることになった日米同盟が、原発事故という未知に対してどのように取り組んでいったのかなど、本当に読んでいて考えさせられることばかりでした。事象そのものが巨大すぎることを承知しつつも、この事故については勉強をしてもしすぎることはないと感じます。

    〜「有事のときのアメリカ、それはない。そのことを思い知った。いざというとき、アメリカは逃げる。軍属の安全をタテに逃げるだろう。日本の安全、アメリカが最後の頼り、それもない、それらはすべてフィクションだった」「アメリカがホコ、日本がタテ、といった役割分担、それは現実には起こらない。日本がホコにならない限り、アメリカは日本を助けに来ない」……(中略)……「同盟はそれが生み出す好感情がいかほどのものであっても、同盟自体には絶対の美徳はないからである」〜

    繰り返し熟読玩味したい☆5つ

    ※本レビューは上下巻をとおしてのものです。

  • カウントダウンの続きである。なんとかギリギリのところで核燃料を格納容器内にとどめたのだが、それに掛かりきりになっていたため疎かになっていた、放射能汚染水の処理に腐心することになる。高濃度汚染水が太平洋にダダ漏れになっており、想像を絶する量の放射能海洋汚染を生じさせることとなった。それを止める為に当初行われた対応は、現場の人間がこんな方法では絶対止められないと感じていたが、本社の上からの命令なので仕方なく実施した、給水ポリマーとおが屑と古新聞を注入することであった。しかもなお深刻な海洋汚染が継続している中、夜になったから帰りますという東電の対応に民主党細野剛志の命令で夜中水ガラスを投入することで、ようやく止める事ができた。まるで他人事である東電の事故対応に恐れ入る他はない。そして今福島の収拾を無視して再稼動が進む。

  • 【『民間事故調』でも語られなかった福島第一原発事故、真実の物語】「もうだめか」米軍横須賀基地から空母が離脱。首都に被害が及ぶことを想定、首相談話が準備された。日米要人300名余に徹底取材。

  • 上下とともに、一気に読んだ
    自衛隊法施行規則第三十九条
     事に臨んでは危険を顧みず、身を持って責務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえることを誓います

    危機管理では一番危険な状態に置かれている人をいかに早く見つけるかの勝負になる

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    「民間事故調」の調査を指揮した著者が被災地、官邸、米軍、ホワイトハウスと立体的な取材を継続。浮かびあがらせた「戦後最大の危機」の実相。

  • 民間事故調のとりまめ船橋洋一氏が事故調調査後も取材をつづけ
    まとめ上げた本。膨大な人数に対するインタビューをもとに当時何がおこったのかを調べ上げた本。特にその時何を考えどう行動したのか、また何が問題であったのかを取材した本である。まず第一に想定していなかったお粗末さにある。そして想定を許さなかった日本の政治風土にある。したがって現場で混乱したのは準備をしていなかったせいである。準備をしなかったのは東電もメーカーも政府もである。そこに災害が生じた。
    防災とは家庭であれ社会であれ、それがおこったらどうなるかをリアルに想像することができるかにかかっているのだ。

  • 危機去らず。

  • 福島原発事故、最初の一ヶ月間を、徹底的な調査に基づいて、様々な角度から再現、検証する力作。書いたのは朝日新聞の船橋洋一さんだが、彼の得意分野である米国、特に日米同盟の観点から福島の事故を捕らえており、新たな視座を得れて興味深い。

    紛れもなく3月11日からの一週間は戦後日本の最大の危機であったし、もうひとつ、日米同盟の最大の危機であったことがよくわかる。放射能汚染のリスク回避を厳格に取りたい海軍と日米同盟の決定的な亀裂を避けたい国務省との暗闘とを生々しく描かれている。

    この本はまたリーダーシップとは何なのかについても、この未曾有の危機を通じて鋭く描き出す。特に菅直人のリーダーシップについての評論は非常に共感する。

    曰く、
    『菅直人という危機時のリーダーシップは「最大の不幸であり、一番の僥倖であった」とでも表現するほかないのかもしれない。』

    また、この本で初めて、福島第二原発の増田所長の文字通りの偉業にも触れており、リーダーシップ考に深みを与えている。

    あの時、日本では何が起きていたのか、読んでみることをオススメします。

  • 東日本大震災で起きた、福島原発事故の模様が克明に描かれている。

    膨大な資料を元に、何百人もの関係者が、章ごとに局面がまとめられているため、必ずしも時系列には書かれていないが、筆者の圧倒的な筆力によって、緊張感のある筆致を追うまま、一気に読み進めてしまう。

    自体をきちんと把握したい場合には、本書から時系列のイベント表を作ったほうが良いのだろう。

    疲れた。下巻はまだ読めていない。

  •  元の職場の同僚の方の推薦で読んでみた本です。
     著者は、「一般財団法人日本再建イニシアティブ」の理事長でもある評論家船橋洋一氏。この一般財団法人日本再建イニシアティブがプロデュースした最初のビッグプロジェクトが「福島原発事故独立検証委員会」、いわゆる「民間事故調」でした。
     本書は、民間事故調を率いた船橋氏による未曾有の大惨事となった福島第一原子力発電所事故の実相を描いたノンフィクションです。
     極限状況下での政治家・官僚・東京電力の幹部・自衛隊員・アメリカ政府関係者等々の考え・言葉・行動がリアリティをもって記されています。
     しかし、官僚・東京電力・・・、あまりにも酷い現実です。一読の価値は十分あります。

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著者プロフィール

一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長。1944年北京生まれ。法学博士。東京大学教養学部卒業後、朝日新聞社入社。同社北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長等を経て、2007年から2010年12月まで朝日新聞社主筆。2011年9月に独立系シンクタンク「日本再建イニシアティブ」(RJIF)設立。福島第一原発事故を独自に検証する「福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)」を設立。『カウントダウン・メルトダウン』(文藝春秋)では大宅壮一ノンフィクション賞受賞。

「2021年 『こども地政学 なぜ地政学が必要なのかがわかる本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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