- Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163904733
作品紹介・あらすじ
晴太郎が恋をした!? 江戸の菓子所「藍千堂」シリーズ第2弾穏やかで実直、菓子づくりのことばかり考えている兄・晴太郎が惚れたのは、訳ありの女画師だった。店を守るため、弟・幸次郎は兄を止めるのだが――。煉羊羹に柏餅、金平糖など、晴太郎が工夫を凝らして丁寧に作り上げる季節のお菓子も色を添える、江戸人情小説。
感想・レビュー・書評
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シリーズ新刊が出たらしいので、その前に復習を兼ねて再読しようとしたら間違えて第二作を読んでしまった。第一作も借りているので読まねば。
父の死後、叔父に店を追い出された晴太郎・幸次郎兄弟。かつて世話になった茂市を頼り、三人で上菓子屋〈藍千堂〉を盛り立てていく。
『菓子作りしか能のない』晴太郎と『根っからの職人気質』の茂市、しっかり者で『算盤勘定や商い』はおまかせの幸次郎の三人のバランスは良い。
お店のラインナップも上菓子だけでなく四文菓子と言われる手ごろなものまで色々。
確か第一作は実家であり追い出された後は叔父が切り盛りする『百瀬屋』に何かと意地悪される話だったように記憶しているが、今回は晴太郎の恋の話。
これまで菓子一筋だったらしい晴太郎が29歳にして初めて恋をしたのはシングルマザーの佐菜。一人娘さちは6歳の可愛いさかりで晴太郎にも懐いている。見た目にはお似合いの二人なのだが、佐菜は訳ありの女性で周囲は反対するのだが、一度こうと決めた晴太郎は引かない。
初読の時はそれほど気にならなかったのだが、読み返すと晴太郎の自己中心的でゴリ押しな印象が残ってしまう。
佐菜・さち母子には罪はないし、晴太郎が恋するのも分かるのだがその為に周囲を巻き込んで不幸にして良いという理由はない。特に茂市は晴太郎・幸次郎兄弟が頼ってきたときに店主の座を晴太郎に譲ってまでして二人を助けてくれたのだ。その〈藍千堂〉を潰してしまうことになってしまったら。
幸次郎や定町廻り同心・岡に慎重にしろと言われて一度は受け入れた晴太郎だが、一度火が付いた恋心は止まらない。そして佐菜も晴太郎らに迷惑を掛けられないと突っ走ろうとする。
幸次郎から見れば胃が痛くなるような、ハラハラさせられっぱなしの兄なのだろう。だが一見冷たそうで現実主義な幸次郎は、晴太郎を一番理解し甘やかしている人間でもある。
結果的には大団円となるのだが、上手く行きすぎな感じも否めない。だが晴太郎・幸次郎の亡き両親のなれそめや彼らが繋いでくれた縁が分かり、それが今回晴太郎を助けてくれたのだと思えば受け入れられる。
同心・岡、父の友人・伊勢屋総左衛門、医師で常連客・久利庵、旗本・松沢家の人々、おろく一家…晴太郎・幸次郎兄弟にはたくさんの味方がいることを知った作品でもあった。
※シリーズ作品一覧
★はレビュー投稿あり
①「甘いもんでもおひとつ」
②「晴れの日には」★
③「あなたのためなら」★ -
自分の思いは届かない。辛かったけれど、清々しくもあったのが、不思議だった。
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初出 2011年、16年「オール讀物」の2話と、それに続く書き下ろし3話で、2016年に単行本化されたシリーズ第2作。
叱った日に長男が事故死したことで屈託を抱える足袋職人が七回忌の法要の菓子を茂市に注文に来るが、晴太郎が茂市のものだった店の主になっていることに難癖をつけて二人に競わせる。晴太郎は亡くなった長男の好みを調べて足袋職人の屈託を解く。
菓子馬鹿の晴太郎の恋がストーリーの中心。
贔屓にしてくれる旗本松沢家の初節句の祝いの柏餅を、晴太郎が出向いて大量に作ることになり、手伝いに来ていた絵師で子連れの佐奈に出会って惹かれるが、事情を知っている若奥方も、同心の岡も猛反対する。
その岡が逼塞させられたのは奉行所を実質的に牛耳る悪徳年番与力に逆らったからだが、以前上菓子屋を裏工作に使って見捨てた年番与力が次の菓子屋を探していて、しかも佐奈の前の夫だった。佐奈は娘を奪われないように町中で隠れるように生きてきたが、晴太郎とのことで嗅ぎつけられる。
晴太郎は娘は自分の子だと言うのを元御殿医の町医者が助け、年番与力の悪事が露見して失脚して事なきを得、晴太郎は本当に娘の父親になる。
ラストシーンは泣かされるが、こういう人情話が好き。
ついでに和菓子好きの身には菓子の工夫がたまらない。 -
お匙殿といわれてた久利庵先生が大好きな茂市の羊羹は、どんな味なのか食べてみたいです。晴太郎、幸次郎の二親おしのと清右衛門を傍で見守り続け、自分の味をつくった羊羹です。あっさりとしながらコクのある美味しい水羊羹を想像しました。
ホッコリするいいお話でした。お正月に読むのに良かった。 -
いやー、面白い。
しつこくないし、くどくない。
読んだあとに嫌なものが残らない。
続き出ないかなぁ。 -
シリーズものとは知らず