新しい星

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163914688

感想・レビュー・書評

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  • 大学生時代、合気道部で出会った四人。あれから年月が経ち、それぞれ様々な道のりを歩んできた。
    お互いバラバラな生活を送っていたが、四人の中の一人・茅乃が乳癌になったのを機に四人が再び出会うことになる。
    それぞれが何かを失いながらも、前へ再生しようと奔走する物語。


    第166回直木賞候補作。
    全8話の物語ですが、全て繋がっています。大学時代の同級生4人の群像劇でしたが、それぞれが抱える苦悩に共感もしましたし、ジワジワとくるものがありました。

    子供を失ったことによる喪失感、ひきこもり、がんによる闘病、遠距離生活などそれぞれが負の要素を抱えています。
    最初は、一人でもがいていましたが、再会を機に静かに固体が溶けるかのようにゆっくりと再生していきます。
    その描写は静かな感動がありました。

    やっぱり仲間って良いなぁと感じさせてくれました。一人では解決できなくても、周囲には誰かがいる。誰かが助けてくれる。
    実際に助けてくれるかわかりませんが、そういった人がいるんだという気持ちがあるだけでも、気持ちに余裕ができます。独りから二人、三人へと再会していくシーンは、読んでいてジーンとしてしまいました。
    一気にブワッと感動がくるのではなく、段々と静かにしっとりと感動がくるので、余韻を存分に味わうことができました。

    みんな幸せになってほしいと思いましたが、悲劇が訪れます。でも、その後どう自分が向き合っていくのか。
    喪失を経験しながらも、「普通」へと再生していくのはツラいですが、生きなければなりません。
    ずっと悲しむのではなく、その人を讃える。

    みんなそれぞれ何かしらを背負いながらも生きています。
    「何か」を失った時、もう一度この作品を読んでみようと思いました。

  • 大人になったからこそ「普通」が恐ろしく人の目が怖くなってくる。
    4人とも曖昧な何なのかわからない普通と自分の置かれた状況とのギャップの中にいる。
    そのギャップは一人では決して耐えられず、人と分け合うから耐えることが出来る。
    どうあがいても救いようのない状況でもかすかな希望はあって、拒まれないことはつながりになる。
    そんなにわかり合っている4人でさえ分け合えないものもある。
    そして相手のことを分かった気になるけれど、そんな傲慢なことはなく分かりたいひとこそ永遠に分かることはない。だから知りたくて、会いたいになる。会いたいに勝る願いはない。
    だからいなくなっても茅乃は青子、卓馬、玄也を救ってくれる。消えても存在していて、会いたいと願いながら思い出すことで救われる。
    そしてその3人が茅乃が叶えられなかった菜緒に対する約束をきっと本当にする。
    できない約束は切ないけれど、その祈りはとても愛おしい。
    ラストの玄也と菜緒の墓前のシーンが印象的だった。

  • 人間の心の弱さに寄り添い、親友同士で温めあうようなすごく繊細な物語でした

    こんな友人が居たらいいな

    私のお友達に合気道やっている人がいるけど、その人がこの本を読んだら、もっと深く意味が分かるかも

  • ある一定の年代にとってはなかなか堪えるのではないだろうか
    わたしも当然ながら「今」というこの瞬間に、戸惑い、怯む

  • 人生につまずきを抱えた4人の登場人物の群像劇。それと同時に家族と喪失の話でもある。エピソード毎に語り手が入れ替わる連作短編集のような構成。彼らが少しだけ前を向けるようになるまでの過程、特に会社勤めしていたものの心を壊して引きこもりになった玄也の物語が染みた。明確にコロナ禍を舞台にしたことで時代性も帯びている。

  • 4人の大人のお話。8話の短編集だけど、8話が繋がっていて、4人の大人のリアルな悩みや葛藤が描かれています。
    最後の2話からは涙が止まらなかった〜(泣)
    このお話を読んで、友達に会いたくなったし、人にはその人の悩みや苦しみがあるんだなと思って、みんな頑張ってるんだなーって思いました。
    仕事を始めた全大人に読んでいただきたい。

  • #新しい星
    #彩瀬まる

    読了。
    タイトルに思いを馳せる2。

    色々な人生の形。
    誰かにとっての終わりは、
    誰かにとっての始まり、続き。

    日常の延長。
    それでも生きていく人間の逞しさが
    自然に描かれてた。

    やっぱ彩瀬さんの小説好き〜 

    #読書 #本好きな人と繋がりたい #読書記録

  • すごく良いお話。
    みんなそれぞれにしんどいんだよな、ってなる。
    でも、みんなそれぞれで、普遍的だからこそ、やがて曖昧になってしまうような物語。

  • 大きな悲しみの波の中でも、少しずつ喜びや生きることへの希望を持たせてくれる温かみのある内容だった。発売当初からずっと読みたいと思っていたので期待が大きかったが、その期待を裏切らない作品で、いつまでも取っておきたい一冊になった。

    8つの話は4人の男女をフォーカスしている。大学時代の合気道部で仲間だった4人は卒業後それぞれの人生を歩み、各々が異なる悩みを抱えて生きている。
    表題の「新しい星」は生まれて間もない我が子を亡くした青子について。
    「海のかけら」は仕事でのトラウマにより引きこもりになってしまった安堂について。
    「蝶々ふわり」は乳癌の治療後、自分の体の在り方に悩む茅乃について。
    「温まるロボット」はコロナによって家族と離れ離れで暮らす卓馬について。
    4人とも悩みを抱えていて現状から抜け出せないでいるところで、お互いがその場から一歩踏み出すことを支えてくれる。恋愛に発展することもなく、程よい距離感で、無防備な姿を見せ合える仲というのが読んでいてとても羨ましく思えた。

  • 登場人物はみんな何かを失っている。
    でもその何かをすべて失った訳ではない。
    失って、でも少しの希望は残っていて、その希望を少しずつ、胸に拾い集めていくような、そんな温かいお話だった。

    大学の元合気道部の4人は、4人のうちの1人である茅乃の病気を機に、10年後合気道の集まりに参加することになる。青子は子ども2ヶ月で失い、玄也は上司のパワハラで心を失い、卓馬はコロナで家族を失った。そんな4人が少しずつ少しずつ、再生していくお話。

    特に好きなシーンは、入院中の茅乃を青子が抱きしめ声をかけるシーン。
    「大好きだ。会えて本当に嬉しい。」
    そんな言葉を大切な人にちゃんと伝えられる青子はとてもすごくて、とても胸を打たれた。残念なことに、青子が茅乃に会うことができたのはこれが最後になってしまった。
    そんな茅乃を亡くし、1人途方に暮れる娘菜緒に玄也がかけた言葉が2つ目の好きなシーン。
    「学校でも、家でも、大人になってからでも、なにか困ったとか、手を貸してほしいことがあったら言ってください。どうしたら菜緒さんが楽になるだろうって、一緒に考えます。俺ができることは俺が、俺ができないことでも、俺より…俺とは、違うタイプの生き方をしてきた大人が、あと二人いるから。きっと誰かは、役に立てると思う。迷わないで、なんでも言って」
    この言葉をかけられて菜緒が救われたことはもちろん、玄也自身も救われたのではないかなぁと思った!!

    やはり彩瀬先生のお話は、とても温かい。
    またいつか自分が彼らと同年代になったときに、
    必ず読み直したい1冊!!

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著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。16年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、17年『くちなし』で直木賞候補、19年『森があふれる』で織田作之助賞候補に。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『川のほとりで羽化するぼくら』『新しい星』『かんむり』など。

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