出版大崩壊 (文春新書)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 86
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166607983

感想・レビュー・書評

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  • 2011/10/6
    出版業界の内情がよく分かる。電子書籍にもかなり詳しく、自炊の話も出てくる。しっかし日本のマスコミ系業界はなんだか先行きが怪しいなあ。

  • 日本ではともかく凄い数の書籍、雑誌が毎日発刊されている(日本ではと書くのは外国の事情をしらないからであるが、他の国がおしなべて同じ状況であるとは思えない)しかも、昨今の電子書籍ブームである。
    私も外で読み本の電子化を図りたいところだが、今のところ新書、文庫に勝る携帯端末に出会えずにいるのである。
    本書は電子書籍が出版を破壊しつつある現状を元々出版社に籍を置き、その後電子出版ビジネスに手を染めた著者の体験を通した現在の出版界事情になっており、例によって内実話は面白いのである。
    電子書籍は巷間言われるようには売れていない。なぜなら電子メディアは無料というのがネット利用者の頭の中にあるからである。そう言われればその通りでしょう。
    このままいけば良質な本は作られなくなるといのが著者の主張であるわけだが、確かに著者が生きてきた大衆出版文化と言うようなものは崩壊するやもしれません。
    しかしそれは電子書籍のせいではなく、安易な(電子書籍で出版しても違いのでない)書籍を作り続けてきた出版業界に大いなる原因があるのではないかとおもうのである。
    出版、本づくりは崩壊することはなく生き残るでありましょう。本来の出版文化が滅びないうちはであるが。

  • 出版業界がそんなに悲惨なことになっているなんて知らなかった。私自身、本も新聞も電子版を買ってiPadで読む。だから、紙媒体市場から電子媒体にマーケットが移行するだけでしょ?と思っていたけど、広告ビジネスモデルや、著作権や、情報はタダの意識や、少子化問題など、いろいろと複雑らしい。

  • 電子書籍ブームによる出版業の衰退が叫ばれているので読んでみた作品。
    著者は電子書籍に懐疑的な立場を取る。
    そもそも今までのオフラインの書籍と電子書籍は異なる。しかし、グーグルやアップルが書籍や雑誌をデータベース化してしまえば、出版業は縮小していくだろう。では、これから本棚から本はなくなってしまうのだろうか。自分はなくならないと思う。なくならないと願う。書籍に比べて電子書籍はどこか「温かみ」のようなものがない気がする。書店で表紙に目を奪われ、中をパラパラとめくり、購入して自宅の本棚に並べる、という行為がなくなるのは非常に寂しい事のように思う。

  • 出版社に就職希望の者です。最近、専ら電子書籍、電子書籍と騒がれているので、電子書籍って一体何?出版界って電子書籍の影響で大不況なの?という疑問を持ち、また、業界の現状を把握する意味も含めて読んでみました。
    感想は...正直驚きました。出版界は結構やばいかもしれないですね。アマゾンやグーグルの脅威、中抜きによって出版社はもとい編集者、印刷会社、製本会社なども不要になってしまうんですね。再販制も適用外ということで価格破壊になってしまって...大変です。でも出版社希望は変わりませんが、ほかにもいろいろうけてみようかなんてことも考えさせられました。
    わからなかったことがわかったという点では、読んでよかったと思います。
    ただ、セルフパブリッシングの章でごみ扱いしているところが少し、気になりました。

  •  電子書籍の普及によって、本を取り巻くビジネスモデルはどうなっていくのか。
     元光文社の辣腕編集長が実務経験と人脈をもとに予測した本。

     結論から言うと「総崩れ」 著者も出版社も取次も製本会社も書店も、すべてが儲からない。儲かるのはプラットフォーム会社であるグーグルやアマゾンだけ。 
     
     電子出版が普及すれば、書店や取次が儲からなくなるのは考えなくてもわかるが、著者や出版社も儲からなくなるというのはどういうことか。これが非常に興味深い。

     すでにビジネスモデルが崩壊してしまった音楽業界とゲーム業界と比して説明している最終章「コンテンツ産業がたどった道」を読むとよくわかる。

     音楽業界を例にとると、楽曲はダウンロードが当たり前になり、レコード(CD)ショップが激減した。これによりアーティストから、作詞家、作曲家まで収入が激減した。ダウンロードは安価なため、収入減を補えない。音質にこだわらなければYoutubeで聴いて購入しない人も多いため、さらに収入が見込めない事態になっている。儲かっているのはアップルストアだけ。芸能プロダクションは、どこで儲けるかと言うと、コンサートやライブの収入、ノベルティグッズの販売、ファンクラブの会費などからだけ。

     要するにネットが普及したことにより何が起こったかというと、情報が「タダ」になったのだ。音楽業界も新聞業界も、(ここでは書かなかったけど)ゲーム業界も、これが原因で衰退している。

     ニュースは無料で読めるようになり新聞購読者が減った。音楽も無料で聴ける。違法ダウンロードに歯止めがかからない。
     儲からなくなると、製作する人間はどんどん離れていくから、人は育たず、記事や楽曲の質は当然悪くなる。

     これが本でも起こる。

     電子書籍で安価で本が読めるようになれば、まず書店、取次が潰れる。
     著者は儲かるんじゃないかと思うが、実は電子書籍市場が拡大すると、参入する素人作家が増えるため、ある程度実績のある中堅作家でも、それらの氾濫作品に埋没し、宣伝費をかけたり、動画や音楽など付加価値をつけたりしなくては目立たなくなる。そうすると必然的に製作費がかさみ、紙の本とかわらないくらい費用がかかる。でも電子書籍は安いというイメージが出来てしまってからは(たぶんできるだろう)、そんな値段では誰も買わなくなる。そして出版社は人件費を削り、著者は印税を削られる。後は音楽業界と同じ現象に陥る。

     時々はひとりで製作から出版まで全部やってベストセラーを出す作家も出るかもしれないが、そんなのはほんとにごく一部で、宝くじに当たるより率は低い。
     作家と言うのは編集者が育て、出版社がお金をかけて売り出しても、当るかどうかわからない職業だ。

     電子書籍は「ゴミと名作の区別がつかなくなる世界」だと著者は言う。

     このまま情報に対して相応の対価を払わないと、「玉石混淆」と言うより「累々石中稀に玉」という情報社会になるかもしれない。

     未来は暗い。
     


     

  • 作者、出版社、取次、書店の関係と制度がよくわかる内容になっています。電子書籍が旨みがない事もわかり面白い。

  • 著者が出した「本当はこわいソーシャルメディア」が読みやすかったので、さかのぼって読んでみた。

    元光文社の社員であって、コンテンツを作る側の状況・心情を知りながら、デジタルメディアにもそれなりに詳しい著者だけあって、今後展開されるだろう電子書籍が決して良い結果だけではなく、むしろコンテンツを作る人たちを絶滅させる可能性があることを指摘している。

    内容としては、元々出版不況といわれるように、人口減、活字離れが指摘される日本市場では、出版点数のみ多くて、1つの作品の寿命が短いところで、街の本屋も減ってきている現状がある。

    そのうえで、本を自炊によるデーター化、電子書籍によるネットでの共有化、もしくはコンテンツの無料化の流れがあるが、これはネット社会で課金制度がうまく働かないように、なかなか収益には結びつかない。電子書籍の良さはあるが、中抜きなどによってコンテンツを作る側を守っていくことも必要ではないか。CDなどの売り上げ減を考えると、付録で儲ける女性雑誌や握手券などの儲けるCDなど、+αで、コンテンツで儲けていない。

    新しい時代の仕組みづくりが考えられていると思う。大手出版社で出版が止められたのもある意味わかる。

    また、少し古いが2009年発行で、同じ文藝新書で「2011年 新聞・テレビ消滅」(佐々木俊尚著)も同様の本で参考になると思う。

  •  内容としては結構偏っているらしい。…が、言いたい事は何となくわかるような。古い制度を壊せず、読者目線で物を考えられず、形だけ新しい事(電子書籍とか)に参入しようったって中々うまくいくはずないよね。
     土地柄、権利問題などの海外と日本の絶望的な違い等、完全に理解は出来てないけど色々勉強になったような気がします。

     個人的に、日本において電子書籍は流行らないとかそういう次元じゃなくまだ端末レベルで客に出せるもんではないような気がしてならない…。

  • 佐々木俊尚「電子書籍の衝撃」と併せて読むと、立場の違いが鮮明になって面白い。こちらは既得権益側。が、アップルの音楽配信市場独占には両者とも厳しい。

    村上龍が会社を立ち上げた理由のひとつが、出版社サイドのIT知識のなさだったらしいが、気の効いた編集者なら自分で勉強するんじゃないかなぁ。

    電子書籍本のセルフパブリッシングの項では同人誌には触れていないことも発見のひとつ。レベルは玉石混交だが、裾野の広さ、ニーズという点で見逃せないと思う。

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著者プロフィール

1952年、神奈川県横浜市に生まれる。立教大学文学部を卒業後、光文社に入社。「光文社ペーパーバックス」を創刊し、編集長を務めた後、2010年からフリーランスになり、国際政治・経済・ビジネスの分野で取材・執筆活動を展開中。
著書には『出版大崩壊』『資産フライト』(以上、文春新書)、『本当は怖いソーシャルメディア』(小学館新書)、『「中国の夢」は100年たっても実現しない』(PHP研究所)、『円安亡国』(文春新書)、『地方創生の罠』(イースト新書)、『永久属国論』(さくら舎)、翻訳書に『ロシアン・ゴッドファーザー』(リム出版)などがある。

「2018年 『東京「近未来」年表』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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