- Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167240011
作品紹介・あらすじ
太平洋戦争における日本海軍の主力戦闘機であった零戦。外国機を凌駕するこの新鋭機開発に没頭した堀越二郎を中心とする若き技術者の足跡を描いたドキュメント。(佐貫亦男)
感想・レビュー・書評
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柳田邦男が書いた堀越二郎のドキュメント。
7試艦戦の失敗から9試単戦・96艦戦の成功、そこから無茶な要求に必死で答えた零戦と開発の物語が続く。
そして真珠湾奇襲攻撃で幕。
その後の零戦のドキュメントは『零戦燃ゆ』シリーズに続く。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
物語は著者である柳田さんが堀越二郎氏にインタビューする場面から始まる。
インタビュー時の堀越氏の年齢は72歳。
そもそも柳田さんが零戦に関心を抱いたきっかけは新聞の投稿川柳だった。
「ゼロ戦の心長髪族知らず」
では「ゼロ戦の心」とはいったい何なのか?
掲載紙である読売新聞紙上で、読者の投書による論争が始まったのだ。
飛行機の構造について何ひとつ知識を持たない私にもわかるように、とても丁寧に当時の様子が再現されていた。
まったく新しい発想による戦闘機の開発。
若き技術者たちが集まり、それぞれの得意分野において全力を尽くした結果が「零戦」という形をとったのだとわかる。
わずかな狂いも許されず、軍部からの要求はとても現実的とは思えないようなものばかり。
開発にかけられる時間も限られている中で、どのような飛行機を作っていくのか。
全体の形は?翼は?速度優先にするのか、強度優先にするのか。
「えっ、そこから?」と思うような本当にゼロからの出発だった。
零戦開発者として堀越氏の名前は有名だが、ひたすら計算に明けくれた者や何度も何度も設計図を書き直した者など、多くの人間の努力と苦労と工夫の結晶だったのだと、あらためて知ることができた。
試運転飛行での事故で失われていく機体。不具合を確かめようとして犠牲になった命。
もちろん戦闘機は戦争のための凶器だ。
それでも、堀越氏たちの海外に負けない性能を持った飛行機を日本人の手でという熱い思いが伝わってくる。
世界の最先端飛行機となった零戦も、他国の激しい技術開発に飲み込まれていく。
あまりにも有能すぎたために、軍部が新しい開発の時期を逸したこともポスト零戦の登場を遅らせた原因のひとつだろう。
規則が絶対と言われてた軍の担当官にも、堀越氏もいっさい臆することなく進言している。
技術者の誇りと自信があればこそ零戦は完成したのだろう・・・とも思う。
ひとつの工業製品が、まったく新しい発想を持つ人たちの手によって作り上げられていく過程が素晴らしかった。
技術後進国と言われている自分たちにも出来るのだ、やってやるのだという気概が、当時の人たちのようすから感じ取れる作品だった。 -
日本の底力…
匠のわざ…
日本の技術力が再認識されているが、後進国から這い上がろうとした、この時代の技術者達の熱意と努力があってこその現在。
零戦を反戦・愛国・悲劇等の見方ではなく、工業製品としての視点でみている点が印象的。 -
新書文庫
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堀越二郎の話。
「私の武器は、自分で考えることだけであった」『これで十分』とか『満点』ということをいうことは、まずなかった。『もうすこし』『ほかに何か』が、まるで口ぐせのようでした。毎日毎日がそうだったのです。」とかをみると才能もあったのだけど仕事への誠実さがすさまじい。だからこそ「「機体重量の十万分の一までは徹底的に管理する」」を行い革新的に軽量化に成功した零戦を開発できたのだろう。 -
淡々と、まっとうしたい。
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表紙の部分に、自民党の石破さんのコメントの帯がついていた
やっぱりこの人は武装派なのかと・・・ -
「飛行機の設計というと、なにか派手なドラマチックな仕事のように想像されるようですが、毎日やっていたことといえば、最初から最後まで、地味な仕事の連続でしたよ」という技術者の言葉を、そのまま誠実に体現した1冊。堀越二郎を中心とする技術者が零戦を設計・開発した経過が淡々と描かれている。堀越がのちに無念の気持ちを語った搭載エンジンの選択の(結果的)失敗云々や、戦後になって海軍航空関係者が反省した「島国根性的なセクト主義は、技術開発の弊害」という面は、いまだに日本に底流している問題と思う。
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面白かった。重厚な読みものだけど重たさを感じさせない書き口はすごいなと思う。零戦ってすごかったんだなー。当時の技術者はさぞかし誇りだったでしょう。