弥栄の烏 (文春文庫 あ 65-6)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167912727

作品紹介・あらすじ

累計130 万部の大ヒット和風ファンタジー第一部完結!松本清張賞史上最年少受賞のデビュー作『烏に単は似合わない』から一巻ごとに読者を魅了して成長してきたシリーズの第一部完結の第6巻。八咫烏の一族が支配する異世界・山内を舞台に繰り広げられる、お后選び・権力争い・外敵の進入。大地震に襲われた山内で、100年前に閉ざされていた禁門がついに開かれた。崩壊の予感が満ちる中、一族を統べる日嗣の御子・若宮は、失った記憶を取り戻すことができるのか。そして、人喰い猿との最終決戦に臨む参謀・雪哉のとった作戦とは――。一巻から周到に張り巡らされてきた伏線がすべて回収され、この世界の大いなる謎が驚愕とともに明かされるクライマックス。大人気キャラの受難、神秘の謎とどんでん返しに驚愕した後に、未知の感動が味わえる堂々完結の一冊。巻末には、先輩の大作家・夢枕漠さんとの熱い対談を収録!講談社コミック「烏に単は似合わない」第二巻も同時発売。

感想・レビュー・書評

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  • 第一部完結。『烏に単は似合わない』と『烏は主を選ばない』が対であったように、今作は『玉依姫』と対になっている。山神と烏と猿をめぐる一連の出来事を八咫烏の立場から知ることができる。金烏についてもさらに深く描かれており、若宮の統治はそうそう簡単にはいかないことが伺い知れる。山内の未来と共にどうなっていくのかがとても気になる。

    新たに大猿たちの過去や真実が明かされるのだが、それまで抱いていたある種敵のような感覚は無くなってしまった。運命に翻弄され長い年月を過ごしてきたことを思うと憎みきれない。山神も猿もこの結末になってしまったきっかけは、どこか人間が抱くような感情によると感じさせられるから尚更かもしれない。

    (個人的に)神に人間らしさを感じていた反面、雪哉に人間らしさを感じられなくなっていった。もちろんそれは様々な理由が重なっている。そして、終章の最後数ページを読んで、雪哉がそれまでに想像を絶するような覚悟と罪をひとり抱え込んでいたことで人間らしさを失っていったのだろうと思いが巡り、最後の場面でそれが少し消化できてギリギリのところで希望に繋がった(人間らしさを取り戻した)ように思えた。若宮の苦悩とはまた違った思いがあるのだろうが、どうかこれからも変わらぬ雪哉でいて欲しいと思う。第二部も楽しみだ。

  • 前巻『玉依姫』の裏側、山内に住む八咫烏視点でのお話。
    第一部の最終巻でもあります。

    全編通してずーっと不穏な雰囲気が漂っていて、読み進めるのがちょっとしんどかった〜。
    各エピソードに勢いがあって面白いのはすごく面白いんですけどね。

    それにしても、あのとき大怪我を負ったのはあの人で、そして、亡くなったのはあの人だったんですね…

    彼が亡くなったのはすごくショックでした。

    もともと好きなキャラクターだったっていうのもあるし、私はどうしても雪哉に感情移入して読んでしまうんですが、
    彼は雪哉の隠れた人間らしい優しさや甘さを「わかってるよ!」って言ってくれる唯一の人物だったんですよね…

    作中で、人外が人外であるためには認識してくれる人の存在と本人の自覚が必要ということが何回か書かれてましたが、
    雪哉が人間らしい良心を失わないためにも、わかってるよと言ってくれる彼の存在が絶対に必要だったんですよー!

    このあと、どんどん闇落ちしていく雪哉がもう心配で心配で…。

    最初の頃と比べてどんどん人間くさくなっていく若宮とは対照的でした。

    若宮は、
    「大将はいかにうまく人を殺すかが求められる存在」であると悩んでいましたが、実際にそれを参謀として実践していたのは雪哉なんですよね。

    若宮がわざとそう仕向けていたわけではなくても、もう少しそうせざるを得なかった雪哉の心に寄り添ってあげてほしかったなー、なんて。

    最後の最後でようやく少しだけ人間らしい心を取り戻せたものの、今後どうか再び雪哉に寄り添ってくれる人が出てきてくれますように。

    このまま第2部も読みたいけど、、この作家さんは(いい意味でも悪い意味でも)ものすごい勢いで予定調和を裏切ってくるので、ちょっと読むのが怖いよー!読みますけども。

  • 先月、単行本で読んだばかりですが、再度1巻から読み返してからの再読です。
    いろいろ忘れてしまっていた部分、読み流してしまっていた部分を整理してから読むことができたので、より物語を味わいながら読むことができました。
    それゆえか登場人物たちのつらさや苦しさが、より強く感じられて切なくなってしまいました。

    第一部の物語を覚えているうちに、第二部に取りかかりたいけれど、1年1冊の刊行ペースだから続きが気になってしまうかも…でも読みたくてうずうずするなぁ。
    20年後の物語、どんな展開になるのか楽しみです!

    巻末は著者と夢枕獏さんとの対談…こちらも豪華!
    夢枕さんの『陰陽師』シリーズを読みたくなりました。
    以前、友達にすすめられて最初の1冊だけ読んでいたのですが、それも随分前…改めて読んでみようかしら。

  • 第1部完結の『八咫烏』シリーズ第6巻。前作の『玉依姫』の話しを忘れていましたが、難なく無事に読み終えることが出来ました❗

    猿と八咫烏の最終決戦は、何とか止められなかったのか?ちょっとモヤモヤ感はありましたが、最終的には満足した作品でした♫

    特に『終章 こぼれ種』で浜木 綿と奈月彦が語り合うシーンで、悲観的な奈月彦を励ます浜木 綿の台詞に、勇気づけられます❗第2部も刊行予定なので、気長に待ちたいと思います♫

  • 八咫烏シリーズ第六弾、第一部完結は、猿と八咫烏の最終決戦!
    『玉依姫』のアナザーストーリーと、遥か過去の真実が衝撃。
    第一章 開門  第二章 断罪  第三章 治癒
    第四章 迷走  第五章 完遂  終章 こぼれ種
    用語解説、登場人物紹介、山内中央図有り。
    ・対談 阿部智里×夢枕獏・・・制作秘話の交流が楽しい(^^♪
    八咫烏側からの視線での『玉依姫』のアナザーストーリー。
    山内での大地震、若宮が山神に使える経緯と神域での出来事。
    山神と志帆の行動が山内にも影響を与えていた。
    過去の記憶の忘失に苛まれる若宮。
    山内を守るためには冷酷に作戦を組み、猿たちを殲滅する、雪哉。
    そして、猿たちの遥か過去からの山神や八咫烏への怨恨。
    この先の山内の、八咫烏の未来はどうなっていくのか?
    『空棺の烏』での勁草院時代の人物たちや、長束や路近、
    浜木綿や真赭の薄等、登場人物たちの行動や心の動きが、
    細やかに描かれていて、物語全体を引き締め、彩っています。
    雪哉の心情・・・仲間や部下を失った悲しみ。特に友を失った慟哭。
    だが山内を守るため、非情に指揮官としての行動に徹する。
    様々な死に接し心の闇に囚われるが、それを救ったのは生。
    生気溢れる姫宮の笑顔に接して、透明な涙を溢す彼の姿に、
    安堵しました。
    なによりも、女性たちの強さが際立っています。
    宗家の行く末を想い、真赭の薄に側室になれと進言する、浜木綿。
    自分の出来る事を模索しながら積極的に行動する、真赭の薄。
    だが、今後の山神との関係から予想される、山内の行く末。
    変容してきた神・・・大猿が取り戻したかった過去の在り様と
    同じく、山神や金烏も戻る事は出来ない。
    時の変遷に取り残されたような楽園にどんな変化が現れるのか。
    第二部は楽しみでもあり、怖いです。

  • 『玉依姫』の裏側でなにがあったかですね。(この作者はこうした表裏一体が好きなのかな?)

    雪哉が茂丸を失って荒む、荒む(-"-;A ...アセアセ

    山神とその神使である猿と烏。そして英雄。
    いろんなものを絡ませているのは個人的には楽しい。

    こうして第一部完読です。これから外伝ですね。

  • 戦いに勝つ努力をする前に戦わない努力をするべきでは。って今の全世界に言いたい事だと思った。

  • 八咫烏の一族が支配する異世界・山内を舞台に繰り広げられる、お后選び・権力争い・外敵の進入。大地震に襲われた山内で、100年前に閉ざされていた禁門がついに開かれた。
    崩壊の予感が満ちる中、一族を統べる日嗣の御子・若宮は、失った記憶を取り戻すことができるのか。そして、人喰い猿との最終決戦に臨む参謀・雪哉のとった作戦とは――。
    「文藝春秋BOOKS」より

    この巻は一つ前の玉依姫とセットで読むのがいいとどなたかが書かれていたけれど、納得.前の巻とセットのお話.なるほどなるほどとするすると読み進めてしまつた.

    いろいろと考えるところの多いシリーズだったなと思う.
    細かい感想は省くとして、漠然とこれまでの時代との決別と新しい時代が始まる予感を感じさせる内容だった.これを書いた作者が20代というのがその象徴のような感じがする.

    久しぶりに4冊一気読みとかしてしまつた(;´Д`)

  • 前作『玉依姫』と対になる、山内側の話。

    『玉依姫』ではわからなかった死者・重傷者が、好きなキャラクター2トップだった...。重傷者の方は「きっとあの人だろう」と予想はしてたけど、死者の方は予想つかなかっただけにショックが大きい。

    全体的に凄惨で暗いから、市柳が出てくると「元気そうで何より(笑)」と、ほっとする。「残念な先輩」扱いされてるけど、全然残念じゃないよ!笑

    1回目読んだ時は、先の展開が気になり過ぎて、とにかくがんがん読み進めてしまったけど、2回目は、各キャラクターの心情をじっくり咀嚼して読めた。大猿含め。

  • 裏表紙のあらすじに「八咫烏と大の最終決戦」とあったので、序盤に大猿が登場したときは「いきなり最終決戦開始?」と思ってヒヤリとしました。けれどその後は前作「玉依姫」と内容が重なってて、そちらの経緯と顛末が分かっているためか、ハラハラする緊張感を楽しめなかったかも。

    ただ、その緊張感が無かったとしても、真赭の薄が山神の世話に向かう際に見られる浜木綿との友情シーン、長束と奈月彦が大滝で会話する場面と、その直後の長束と路近のやりとりなど、それぞれのキャラの想いなどが伝わってくる名場面が目白押し。本作で見納めなのかと思うと、若干寂しい気持ちにもなりますが、なかなかにグッとくるポイントは多かったと思います。

    大猿との戦いに関しては烏側が圧勝しますが、大猿側の事情(=金烏が失っていた記憶)が分かり、いち読者としては素直に喜べず。歴史上、征服されて消滅した民族や一族を想起させられ、猿や烏というのはそれらの暗喩のように思えてきて、大猿達の末路がそれらと重なって切ない気持ちになります。

    また、雪哉についてよくわからなかった点が二つ。1つは博陸侯景樹が雪哉のために焚書を行ったということ。これは烏が大猿を殲滅したとき、それを行った者が罪の意識にさいなまれないよう、猿側の事情を事細かに記した文書を破棄したと解釈しているのですが、自信がなくてモヤモヤ気分。

    2つめはラストシーンで、姫宮を見て涙をながすところ。何故雪哉は涙したのかが分からなくてモヤモヤ…… 軍の参謀になってから戦いのことで頭がいっぱいになって、人間らしい感情や心を無意識に押し殺していたということなのかなぁ。全然わかんない(涙)

    と、モヤモヤしたところがありつつも、一時期京都に住んでいたことがあったので、見知った名所が出てきたところは感慨深かったです。賀茂御祖神社(下賀茂神社)と賀茂別雷神社(上賀茂神社)はちょくちょく訪れていましたし、下賀茂神社の近くに日吉神社があって、ここで猿(神猿)の石像を見ていたりしたので「俺、意外とこの世界(八咫烏シリーズの世界)の近くにいたんだ」と壮大な勘違いに浸れたのは、とても良かったです(バカですなー、私(笑))。

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著者プロフィール

1991年群馬県生まれ。2012年早稲田大学文化構想学部在学中、史上最年少の20歳で松本清張賞受賞。デビュー作から続く「八咫烏シリーズ」は、松崎夏未氏による漫画化、中台翻訳など進行中。19年『発現』(NHK出版)刊行。

「2023年 『烏は主を選ばない(4)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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