希望が死んだ夜に (文春文庫 あ 78-1)

著者 :
  • 文藝春秋
4.16
  • (280)
  • (289)
  • (124)
  • (14)
  • (4)
本棚登録 : 3305
感想 : 222
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167913649

作品紹介・あらすじ

希望が死んだ夜みたいに真っ暗なこの国で――面白い作家が、凄い作家になる瞬間がある。本書を読んだとき、天祢涼は凄い作家になったと、感嘆した。――細谷正充(文芸評論家)彼女を死に至らしめたのは社会なのではないか?社会派×青春×ミステリーの見事な融合。本書に出合えてよかった。――ベル(文学 YouTuber)神奈川県川崎市で、14歳の女子中学生・冬野ネガが、同級生の春日井のぞみを殺害した容疑で逮捕された。少女は犯行を認めたが、その動機は一切語らない。何故、のぞみは殺されたのか? 二人の刑事が捜査を開始すると、意外な事実が浮かび上がって――。現代社会が抱える闇を描いた、社会派青春ミステリー。解説・細谷正充

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ネガちゃんは、学校でののぞみの立ち位置を分かっているから学校内では決してコンタクトを取らないし、秘密は絶対に漏らさない。母親やのぞみの顔色を察して、臨機応変に対応出来る優しい子。
    警察サイドの事情聴取では、そんなネガちゃんに背中を叩かれフルートのレッスンを申し込んできたのぞみとネガちゃんのやり取りを見た先生が「ああいうのを親友って言うのでしょうね」と残すほど短期間で2人絆は強く固いものになっていた。
    だからこそ、もし最期に2人でお菓子パーティーが出来ていたのなら、のぞみの様子がおかしい事に気づけたのではないか。のぞみも芯が強そうに見えてフルートの発表を投げ出そうとした事があるから、話してる内に怖気付いて辞めていたかもしれない。読み終えてそんなやるせなさに襲われいる。犯人である長谷部さんの動機に納得しきれていないのは、小説を読んでいて弱いと思ったからなのか、それともせめて2人で逝って欲しかったという願望からなのか分からなくなるほど、今はひたすらに悲しい。

  • セリフが臭め
    真犯人も意外性なし、動機も弱い

  • 同じ中学に通うネガとのぞみ。
    のぞみを殺害したと自供して逮捕されたネガ。
    同級生という以外に接点のなさそうな2人の本当の関係がわかっていき、そして本当のことが明らかになる。

    なんてつらい、かなしい話だ。
    私はもう40のおばさんだけど、中学高校時代の友達と一緒に過ごしたわくわく感を、ふたりの関係性が明らかになる中で感じていた。
    本を読みながら、私もネガと同様に希望を感じでいたんだ。
    そして、そこからの落差を私も味わった。
    どん底にいつづけることより、希望を知ったあとに、その希望が失われたときのほうがつらい。
    誰かに希望を味わわせてしまったことは、罪なのだろうか。

    貧困と、行き渡らない社会保障。不都合なことはなかったことにしようとする大人達。
    希望が失われたこの世界で、わずかな希望をたぐりよせようとしていた少女たち。
    のぞみの死は、避けられないものだったんだろうか。私はそうは思わない。
    のぞみがネガとお菓子食べながらおしゃべりできていたら、ネガの顔を見ることができていたら、思いとどまれた可能性が高いと、私は思う。
    死ぬのが怖いから仕方なく惰性で生きている感覚、私も分からなくはない。惰性の生の中で、ちょっと笑えることとか、少し元気が出ることがあって、そんな些細なことに多くの人は生かされている。
    そういう1日1日が積み重なるなかで、楽しいと思えるものや、大切だと思えるものに出会え、生きる目的がみつけられる。私の人生はそうだった。
    だから、私はのぞみを殺した犯人を許せない。どうせ死ぬつもりだったなら…なんて動機にならない。憎い。
    もしのぞみの計画通りに運んでいて、ネガとお菓子食べながらおしゃべりしていたら、のぞみは生きていたと私は思う。私はそう思いたいのだ。

    このシリーズ、本当に好きなんだけど、つらいなぁ。

  • タイトルが読み終えた後、ずしんと来ました。
    個々の事情があるのに、安易にアフリカの子供を例に出す大人にはなりたくないなと感じました。

    「でも、正しいことが正義とはかぎらないんだ。」
    「母にだけ苦労をかけて、自分は努力する余裕があったのだ。」

  •  天袮涼さんの作品とは初めての出会いでした。読み手を惹きつける展開や結論のまとめは読み応えがありました。解説の言葉を借りると、上手いから凄い作家になった転機の一冊なのですね。
     幼い子供たちが犠牲になる卑劣な事件が続いた時期がありました。天袮さんはそんな社会の雰囲気を敏感に感じて考えてくれたのでしょうか。背景は様々ながら色々を諦めねばならない登場人物たち。貧困との戦い。抜け出したい渇望と阻むプライドが幼子に消せない傷を作る。悲しい結末を冤罪から救った"想像"が侮蔑から賞賛に変わる時、残された者の責任を明るくする。

  • 意外な伏線、タイトル回収だったけど結末は微妙に腑に落ちなかった。

  • 真相が二転三転する中で、関係者おのおのの心情がきりきりと胸を締め付けてくる作品でした。

    被害者が綴った遺書で、「希望が死んだ夜みたいに真っ暗なこの国」。
    子どもの口から出たとはとても思いたくない言葉で、息が止まりました。

    長谷部さんが自分自身を穿った言葉や、草薙先輩の本心が透けてしまったひと言。
    挙げればキリがありませんが、フィクションだからこそ胸を打つ言葉選びだったと思います。
    現代を生きる大人として、胸に留め置きたい1冊でした。

  • 真相が一筋縄ではいかなくて、最後に驚いた。
    少女たちの覚悟が力強くて、自分の能天気さを思い知らされる。
    そして、貧困という社会問題についてもっと深刻に向き合わなければならないと感じる。

  • タイトルの意味が刺さる内容だった。子供のときには分からない、大人になると分かる、たくさんあるけど、分かるほど社会・世論・周りの目で不自由になって自ら分からないでいた時分と矛盾したことばっかりやるようになる。理想と現実を突きつけられる。大人になるにつれて、希望に疎くなって自ら絶望を引き込んでいる。

  • かなり良かったです。
    あまり期待せずに読みました。青春ミステリみたいな、軽い感じかな?と。いい意味で裏切られました。テーマが貧困なので、面白い小説とは言ってはいけないのかもしれませんが。少女たちの、その年代だからこその焦燥感、無力感も胸に迫るものがありましたし、ミステリとしても引き込まれ一気読みでした。
    おすすめです。

全222件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1978年生まれ。メフィスト賞を受賞し、2010年『キョウカンカク』で講談社ノベルスからデビュー。近年は『希望が死んだ夜に』(文春文庫)、『あの子の殺人計画』(文藝春秋)と本格ミステリ的なトリックを駆使し社会的なテーマに取り組む作品を繰り出し、活躍の幅を広げている。

「2021年 『Ghost ぼくの初恋が消えるまで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

天祢涼の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×