- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167915094
感想・レビュー・書評
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一回目に読んだときは単なる青春小説だと思っていたけど、二回目、徹夜して読んで良さに気づいた。
特に良いシーンは、瑛太郎が森崎さんに怒鳴るところ。それほど基達を大切にしているんだと思った。読書感想文とかにおすすめかもしれない。 -
高校の吹奏楽部を舞台に久しぶりにコーチとして来た瑛太郎とサックスとしての才能がある新入生・基が、全国大会へ出場しようと奔走する物語。
2人の視点を主軸に、理想と現実の中で頑張る高校生や卒業生達が爽やかに描かれています。
吹奏楽部というと、昔「笑ってこらえて」という番組で、シリーズとして特集されていたのを思い出します。
そこでは、大会に向けての活動、オーディション、先生による厳しい指導などが放送されていました。
放送では、ごく一部分しか放送されておらず、その後の人たちの人生を放送することはありません。
この作品では、名門高校がゆえに進路に揺れる高校生達の苦悩、卒業後の夢や挫折が、リアルに描かれていました。
メインは演奏シーンではなく、それに至るまでの過程を主にしています。なので、演奏シーンはあまり描かれていません。
学生時代、部活に打ち込んでいた人、特に運動部だった人には、色々思い出されるのではないかと思います。
好きなことに打ち込む情熱、選抜に選ばれるか選ばれないかという焦り、卒業後の進路による不安、勉強との両立、次々と蘇ってきました。
弱小になってしまった吹奏楽部がどこまで頑張れるのか。
1年生で部長になった基が、どう先輩と接し、担っていくのか。
コーチは、どのようにして指導していくのかが見所かと思います。
爽やかさが溢れる青春小説でした。 -
全国大会を目指す吹奏楽部のお話
公式のあらずじ
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かつては全国大会金賞、マスコミにも頻繁に取り上げられた、名門高校吹奏楽部。
幼馴染の基(もとき)と玲於奈(れおな)は入部したものの、現在の部にかつての栄光は見る影もない。
そこへ、黄金時代の部長だったレジェンド・瑛太郎がコーチとして戻ってきて、あろうことか3年生たちを差し置いて、1年の基を部長に指名する。
選抜オーディション、受験との両立。嫉妬とプライド渦巻く部で孤立する新入生男子の部長は果たして、全国大会開催地・名古屋国際へ行くことができるのかー―
かつての輝きを懐かしむすべての大人たち、
部活動に青春をささげるすべての中高生の胸に、
リアルな言葉が突き刺さる王道青春エンタメ小説!
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何であれ、ひたすら打ち込んだ経験は無駄にはならない、なんて言葉はありがちだけど、果たして本当にいい事だけなのか?
もしかしたら、その選択を後悔する事になる未来があるかもしれない
ただ、過去は変えられないけれども、その過去の解釈は今と今後の生き方で変えられるのでしょうね
必要な良い経験だったとするのか、それとも後悔するのかは人それぞれなんじゃなかろうかと
ブラック部活動問題
何かと騒がれがちな昨今
顧問が無理やりというイメージを抱きがちだけど、生徒が自発的にそうしているケースも同じように扱ってよいのかどうか
でも、自発的に思わざるを得ない雰囲気や環境ってあるし
生徒同士でそんな雰囲気を作り上げているケースもあるわけで、境界線が難しい
その自主性というのを、茶園のお姉さんのケースでブラック会社との共通点をほのめかしている
ブラック会社に対してなら労働基準法で決められたラインがあるけれども、部活は生徒の自主性に任されている面もあるので余計に厄介
さらに、学生の場合は部活だけではなく子供は将来を見据えた勉強と選択をしなければいけないし
様々なやらねばならないことに押しつぶされてはいないだろうか?
「将来のため」とは言うものの、充実した今も必要だと思うんですけどねー
作中でも
「今の高校生は大変だよ。部活だけやってても文句を言われ、勉強だけやってても文句を言われ、受験や就職で転けたら自己責任だ」
とか
「高校時代が一番輝いてた、なんて言う大人にはなるなよ」
なんてセリフが印象深い
何事にも一生懸命になっている学生の姿は本当に眩しい
大人としても、その気持ちはわかる
わかるんだけれども、どこか心配になってしまうのも確か
ストーリーのリアリティとして
全国大会に行く吹奏楽部ともなれば確かにこれくらいの練習量や熱が必要だなと思える
「屋上のウインドノーツ」の学校が東日本大会に出場したら「所詮は物語の都合のよいように……」と思っただろうけど、今回の高校が全国大会に出場しても納得できる
でも、キャラクターの描写が、皆吹奏楽の事を真剣に考えている人たちばかりで人間臭さを感じないし
そもそも、1年生が部長になってある程度のやっかみもあるけどそれでもちゃんと部活が成り立っているところがなんともありえなそうな感じ
でも、もし茶園のような実力と意識を持った子がいて、部活の近年の成績が低迷しているのだとしたらありえなくはないかもと、ギリギリのリアリティを攻めている感はある
ただ、オーディションの方式が「響け!ユーフォニアム」に発想を得ているなーとか
他の展開にしてもどっかで観たり読んだりしたことのある感じで、期待外れなところもある
でもまぁ、吹奏楽部という共通点があったら似たような展開になるのも仕方がないかもとも思える
そして、「拝啓、本が売れません」で提示された課題はクリアされているように感じた
ストーリーとしては感動の波状攻撃だし(解説のあさのあつこが妬むくらい)
コメディ要素として、「タンスの角に……」のフレーズが面白キーワードとして活躍してるし
キャラクターに関しても「屋上のウインドノーツ」に比べれば特徴が出ていたと思う
装丁も幅広い読者層にアクセスできるような感じになってる
けど、実際に売上的にどうだったんですかね?
私程度の読書量のユーザ視点ではこの作品を目にしたのは今回が初めてなんですよねー
やはり、面白い本だからといって売れるわけではないのだなーとも思ってしまった
そう言えば、今は全国大会の会場が普門館じゃなくなってるんですねー
私が気になってる吹奏楽部のお話はどうするんですかね?
あと、音楽のど素人の疑問として、課題曲の評価はわかるけど自由曲が新曲というのは、何をどんな基準で評価するんですかね?
正解がある楽譜ではないものを、評価できるもんなんですかい?と思ってしまう -
2022/5/3
千間学院高校の吹奏楽部は、かつて全国大会へ出場するほどの強豪校だったのだが、それから7年経って入学した茶園基きの頃には県大会出場すらままならないくらいに弱体化してしまっていた。
中学の時に吹奏楽部で全国大会を目指していた茶園も関東大会?に進むことができず、高校では進学を目指して、吹奏楽はやらないつもりでいたのだが、同じ学年には、中学時代に他校で競い合っていた堂林がいて、吹奏楽部には、2個上の幼馴染の玲於奈が部長を務めていて、何かと吹奏楽から逃れたい、やる気ないと思っていた。
そんな矢先、7年前に千間学院吹奏楽部が全国大会に出たときの部長である、瑛太郎がコーチとしてやってきた。
これをきっかけに茶園は吹奏楽部に入ることになり、部員と共に全国大会出場を目指して部活に取り組む青春の日々が始まる。
この本は、吹奏楽に全身全霊で取り組もうとする茶園基きを始めとした部員の立場と、自分の人生に迷いながら母校の吹奏楽部のコーチとしてきた瑛太郎の立場から考えた部活動という二つの側面があって、それがこの本の青春っぽさを加速させているように思います。
何かに一生懸命になることは大事だけど、その過程でどう考えるか、どういうプロセスを経て行ったらいいのか、周りの人はどう考えるか、納得させるにはどうしたらいいかなど、自分の道を進む際に考えなきゃ行けないこと、多くの人がぶつかるであろう壁の設定が絶妙にうまいなと思いました。