まじめなわたしの不まじめな愛情

著者 :
  • 徳間書店
3.21
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198625764

作品紹介・あらすじ

笑うなら笑ってください。三十代も後半で、なんの取り柄もない私に突然舞い降りた幸運な出会い。著名なCMディレクターから、映画の脚本を書いてくれないかと言われた。ルックスが良くて情熱的な彼の依頼に有頂天になる私。あっという間に恋に落ち彼と同棲を始めるが、それは地獄への入り口だった。彼は、薬物依存症でDVだった。クスリに溺れた男に暴力をふるわれながら、次第に常軌を逸していく私。そんなとき、別の女が現れ濃密な彼との恋愛にヒビが入り始めて…。人には見せられない感情を、隠すことなく正面から紡ぎだす。長篇書下し。

感想・レビュー・書評

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  •  最近気に入っている新進女流作家の、長編第4作。30代末・バツイチ同士の男女を主人公にした、苦くて痛い恋愛小説である。

     女はフリーライター。男は大手広告代理店のCMディレクターだが、仕事上の挫折がきっかけで薬物中毒に陥っている。
     男を薬物中毒から救いたいという気持ちから始まった2人の同棲生活は、ほどなく共依存の泥沼に陥っていく。互いを高め合う恋愛ならぬ、「低め合う」恋愛。ドロドロの関係を容赦なく描きながらも、重苦しさはあまりなく、読み出したら止まらないエンタテインメントになっている。

     第1作『ベイビーシャワー』や第2作『すべては海になる』でもそうだったが、山田あかねの小説は、恋愛小説でありながら、恋愛というものを少しも美しく描かない。
     「恋愛なんて、しないに越したことはない熱病のようなもの。それでも、私たちは恋愛せずにはおれない困った生きものなのだ」
     ……とでも言いたげに、恋愛が描かれている。恋の甘さ・楽しさよりも、苦しさ・どうしようもなさに力点が置かれているのだ。

     そして、恋愛における打算や駆け引きの描写が、ものすごくリアル。だからこそ、恋愛のおぞましさまでも活写してしまう。フツーの恋愛小説がアナログテレビだとしたら、山田あかねの小説はデジタルハイビジョンのように、ヒロインの小じわの一本一本、毛穴の汚れまで鮮明に映し出す――そんな趣があるのだ。

     かつて、丸山健二は次のように書いた。
     
    《三十歳を過ぎてしまうと、如何なる男女の交際もすでに恋愛などと呼べる代物ではないのです。どんなに言葉で飾ってみても、薄汚い、おぞましい関係なのです。(中略)
     いい年をした大人の男がそうまでしてその男女関係を美化せずにはいられないのか、ということまで書き、そうでもしなければならないほど己れの人生が惨めなものである、ということまでずばりと書いてこそ本当の恋愛小説なのです(『まだ見ぬ書き手へ』)》

     山田あかねの小説は、丸山健二のそれとは対極にあるといってよいほど異なっているが、それでも、ここには丸山の言う「本当の恋愛小説」がある。
     恋愛というものにまだ夢を抱いている若者には理解できない、大人の恋愛小説だ。

  • 見事に共依存カップルだった。薬物依存の男、下部と出会ってしまったフリーライターのしずか。「まじめなわたし」だから「彼を救える」と思う大きな勘違い。「これが愛だ」と思いこんでしまう共依存の罠。しずかは自分を求めて欲しいのだ。求められることで自分の存在意義を見付けたい。そんなしずかを突き落とすギリギリのラインで試すかのような下部。「ふまじめな愛情」がしずかの感性を狂わせる。引き裂いて、全てを壊してしまいたい衝動に走る愛。それも愛の形のひとつ。しずかが今、身を置いている場所に愛があって欲しいと願う。

  • フリーライターの蒼井しずかは38歳で、
    仕事関係で知り合った下辺勉は薬物依存症だった。

    下辺の薬物依存を自分が看病して克服させるのだと
    彼の家に住みつき生活していくなかで

    いつしか克服させるどころか、下辺の巧みな嘘と弱さと人や薬に対する執着に
    しずか自身が彼に依存して、仕事もおろそかになり、離れられなくなっていた。

    まじめなわたしの、って、元々が別にまじめでもない気が?

    男と酒に依存するのは、つらいね~。

    柳田さんの最後にしずかに言い放った言葉がなんか
    かっこよかった)^o^(

  • 同棲を始めた男が薬物依存症でDV男だった。
    男の病気や女性関係などを女性の立場から描いたもの。

    山田あかねさんの作品はどれも好きなんですが、
    この小説はあまり共感出来ず…

    多少重め。そして読了後スッキリしない。

  • こぇえええ。

    2010.04.23

  • 30代後半で取り柄もない私が、著名でルックスのいいCMディレクターから映画の脚本を依頼された。すぐに恋に落ち同棲を始めたが、彼は薬物依存症でDVだった-。心が裸にされる衝撃の恋愛模様を描いた書き下ろし長篇。

  • まじめになると
    ほーかいだー

  •  いつだって、恋愛沙汰はばかなことで。
     ばかなことばっかり追いかけてしまう私は
     主人公の、距離をとりたくっても
     離れられない感じに感情移入

     恋愛の修羅場の
     現実がとまったみたいな感じに胸が重くなる

     自分が依存していて、こわくなっても、
     悪い夢をみているみたいに
     ホラー映画をみているみたいに

     客観な自分がいても
     そこから離れられない感じとかね

     だめ男好きにはぐっとくる一冊です

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著者プロフィール

東京都生まれ。テレビディレクター、作家、映画監督。フジテレビジョンの番組『ザ・ノンフィクション』のディレクターとして「生きがい 千匹の猫と寝る女」「会社と家族にサヨナラ~ニートの先の幸せ」「犬と猫の向こう側」などを手がける。2015年、監督、製作、脚本を手がけた映画『犬に名前をつける日』が公開。また、同名のノンフィクション『犬に名前をつける日』(キノブックス刊)を刊行。保護犬のハルとナツと暮らす。

「2018年 『犬と猫の向こう側』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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