- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198653767
作品紹介・あらすじ
斬新な江戸ハードボイルド時代長編!
一作ごとに進化し続ける青山文平の語り口に酔いしれる!
女への思いにかられながら、はぐれ者だった男が、一途に自分を刺した女の行方を求める。女を捜す方便として、四六見世という最底辺の女郎屋を営みながら、女が現れるのを待つという仕儀を薦めてくれたのは、路地番の頭・銀次だった。ビジネス成功譚の側面と、女への思いを貫く純愛を縦線として、物語はうねり、意外な展開をみせる魅力的な時代長篇。
主人公は、村の生活に染まれず、欠け落ちた江戸で、すでに四十を過ぎた。一季奉公のまま、江戸にも染まぬ男たちは当時、大勢居た。根岸にある小藩の屋敷で奉公中、ご老公のお手つき女中・芳の故郷への道連れを命ぜられる。…旅の途中、訳あって芳に刺されるが、一命を取りとりとめる。自分を殺したと思い込んで、行方の知れない芳を探すために、彼女が来る可能性のある江戸の場末・入江町で最低の女郎屋を営む。はぐれ者として生きてきた切見世暮らしの男が7軒の楼主となる。商売は繁盛し、厚綿の布団を貸す損料屋にも手を出し、成功を治めるがーー。
2020年に刊行された短編集『江戸染まぬ』所収の「江戸染まぬ」を長編化。
感想・レビュー・書評
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読楽2021年2月号〜5月号掲載のものに大幅に加筆修正し、2021年11月徳間書店刊。長編。最初の展開がわかりにくかったが、なんとか波に乗れて進めました。長すぎるような気もしますが、このテンポならこれくらいないと足りないのかも。ラストのまとめはありふれ感満載でした。
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語りの文体のせいかなかなか入って行けなかったのですが、ラスト近くにぐーっと引き込まれました。やっぱり青山文平さんです。読ませます。
2021年最後をいい感じに飾ったかな。 -
人生のどん詰まりに居たような男が、女郎屋の楼主となって、どんどんまっとうになって、「家族」とも呼べる人間関係を築いて、事業も軌道に乗せていく。王道のサクセスストーリーなんだけど、私は結局王道サクセスストーリーが好きだ!!!
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この春に生まれた川海老が泳いでいるのに、ようやく気づいた。 ー修羅場を経てジタバタした後、ふと目に入る小さな当たり前の日常 この瞬間って幸せ
いつ芳が登場するのかと思いながら読んだ。 -
あまりにも説明的と感じてしまい、ラストまで物語の中に入り込めなかった。
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わずか2週間前に出版された本なのに、読み始めてすぐ「これ、読んだ事が有る」。
調べたら出版社の解説に「2020年に刊行された短編集『江戸染まぬ』所収の「江戸染まぬ」を長編化。」と有りました。どおりでね・・。
主人公の「俺」は、村から逃げ出し、江戸の武家屋敷で一季奉公(一年雇用の下層の奉公人)の中年男。短編「江戸染まぬ」は密かに惚れていた女・お芳に、行き違いから俺が刺されるまでが描かれます。この作品は初めの40ページは、ほぼそのまま「江戸染まぬ」を使ってバックグラウンドとし、メインは奇跡的に助かった俺が「お前は人を殺していない」と伝えるためにお芳を探す姿が「俺」の一人称で語られます。
この語りが最初はちょっと読みづらい。しかし慣れてくると適度な緊張感を持って読めるようになります。
登場人物は多くはありませんが、みんな味が有ります。俺の命を助けた医者も良いですし、女郎になったとおもわれるお芳を探す「俺」を助けてくれる女郎屋が立ち並ぶ入江町の路地番の頭・銀次、お芳の同僚だったお信の二人の造形が見事です。
私は青山さんの描くストイック(過ぎる)武家物が好きで、ちょっと柔らかくなった昨年の『江戸染まぬ』にはなんだか色んな「?」が浮かんでしまいました。これは武家物では無いですが、全編に心地良い緊張感が貫かれ良い作品でした。 -
悔しいくらいの筋立て。
食いっぱぐれて江戸に流れた、もしくは田舎を捨てて。
そんな男が生きる気概もなくただただ、一季雇いの仲間奉公。
そんな日常の中で、武家の虚しさを絵にしたような、たった21歳御老公が存在する小さな地方の藩の抱屋敷。
そこで男児を生んだ女中を、田舎に返す命令が。
女中の「芳」は本気で嫡子で、御老公と愛し合っていた。
そこから、主人公の「俺」は、さまざまなことを深く考えるのだが。
題名そのまま、これ以上にないほど惚れるということがどんな思いなのか?
「俺」が、生きている実感を戻してくれた、芳に返す大恩を支えに人生が変わってゆく。
内容は読んで欲しい。素晴らしい愛の物語だ。