朽ちないサクラ (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198943233

感想・レビュー・書評

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  • 米崎県警の広報公聴課にかかってくる電話は、苦情電話ばかり。
    それも、ストーカー事件を放置したせいだ。
    と、ここまでで、女子大生がストーカーに殺された事件を思い出す。
    不祥事をリークしたのは誰だ、そんな警察組織内の疑心暗鬼から物語は進んでいくのだが、主人公は警察官ではない。
    一般職員の女性、森口泉だ。
    物語は次第に不穏さを増し、刑事課、警備課、広報公聴課を巻き込み、「組織」を問う。

    組織とは、働くものを守る側面も強いが、一方で自由を奪う側面もある。
    そして、組織は裏切りを許さない。
    長く続く組織であればあるほど内部の問題は根を深く張る。
    何を守るために組織はあるのだろう?
    誰を助けるために仕事をするのだろう?
    やればやるほど、汚いところも、おかしなところも見える。
    清濁併せ吞む、それが正しいことかはわからないが、中にいなければ、見えないこともあろう。

    泉の出した答えが正しいかは分からない。
    物語は、美しく終えても、実際は難しいだろう。
    親友を亡くし、上司と離れても、彼女が成し遂げたいこととは、引いては組織を守る事になるだろう。
    それは国民や、自分自身を裏切るということではなく、全く逆の意味で。

  • 県警で働く事務職員の泉は、親友を失った事件の真相に辿り着いたが、事件の裏で動いていた重要人物を捕まえることができなかった。

    人の命が簡単に奪われる、という印象を抱いたスーリーだった。
    真犯人は意外と近くに潜んでいる。そういうオチが推理小説あるあるだが、この話でも全くその通り!
    あ〜この人だけは味方であってほしいな〜と願っても、しっかりと裏切られてしまった。


    次は泉が警察官になって、正義の名の下で悪を裁く…そんな物語が読んでみたいです。
    次に期待!

  • 読書備忘録654号。
    ★★★★☆。
    GW帰神中の読書は図書館に頼れない。
    透明な螺旋に続いて、BOOK-OFF本。この作品は帰京してから図書館に行けばすぐに借りれると思いましたがついつい買ってしまった。笑

    結果、月下のサクラより面白かった。笑
    米崎県警事務職だった森口泉が刑事になることを決意するストーリーが熱くて良いですね。ただ、そのきっかけとなった事件が公安が裏で絵図を描いた、公安警察を守る為のシナリオだった!という点は、なんとも言えない悪い後味でした。

    米崎県警への苦情で外線電話が鳴り続ける。
    県下で発生したストーカー殺人事件。なんとストーカー被害者とその両親が何度も被害届を出していたにも関わらず、それが受理されず、結果殺人事件に発展してしまったというのだ。しかも被害届の受理が遅れたのは慰安旅行に行っていたからだというのだから救いがない。しかし、なぜ慰安旅行がマスコミに漏れたのか?
    米崎県警広報広聴課の森口泉は焦った。
    泉は、親友で米崎新聞の記者である津村千佳と飲みの席で、慰安旅行に行っていた平井中央署生活安全課の刑事で同期の磯川から貰ったお土産を、ついうっかり千佳に見せてしまっていたのだ。
    千佳には口止めしたのに、翌日の新聞に載ってしまった。千佳が約束を破ったのだと思い、泉は千佳を責めるが、千佳は自分ではないと言い切る。
    真犯人を見つけて泉の誤解を解く!と言った千佳は、なんと数日後に刺殺されてしまった!
    千佳は何を嗅ぎ付けて、結果殺されたのか?泉は磯川の協力を得て独自に調べ始める。そして、磯川の課の課長と不倫関係にあった契約社員の女子事務員にたどり着く。不倫関係をリセットするために女子事務員の契約を更新しなかった、それを恨んだ女子事務員が慰安旅行の情報をマスコミにリークした、と。千佳もそれを嗅ぎ付け、調べていたはずだ。
    泉は退職して実家に戻っていた女子事務員に話を聞こうとしたが、なんとその事務員は自殺してしまった・・・。
    ストーカー事件、千佳の殺害、女子事務員の自殺の背後にカルト集団の存在が明らかになってくる。そして、更にその背後に公安(サクラ)の影が・・・。

    国民の命を守る警察。国の形を守りその結果が国民を守るという図式の公安警察。守る対象が異なり、一切捜査協力関係を築くことがない2つの警察組織。
    国家を守る為には、多少の市民の犠牲も厭わない公安警察の闇。偶然公安が追っている事件に関わってしまったら、事故として処理される!怖い怖い!

    月下のサクラより公安の闇色が強く出ており、エンターテイメント性が高かったです。
    まだまだシリーズは続きそうなので続編を楽しみに待つことにしましょう。

  • どんな世界にも闇はある。それが人により作られた組織である以上例外なく。皆が同じ方角へ進む中、幾つかの分子が違う方向へ進もうとする。が、結局行き先は同じって事なんだ、きっと。

  • 大好きな作家さんの1人。
    途中までは楽しく読めて、この先どうなる!?どうなる!?とワクワクしていた。いよいよ真相に触れる!という少し前の時点で何となく展開が読めてしまった。結末は、やはりそうか。といった感じで、ちょっと予定調和?な印象が拭えなかった。
    ほかの作品がすごい面白いものが多かっただけに、少し残念。

  • ストーカー殺人事件の被害者は家族と共に何度も警察に訴えていた。
    しかし、悲劇は起きた。
    そこには警察の怠慢としか思えないような事実。
    警察広報職員の泉はその事実に関することを、親友の新聞記者に話してしまう。
    「絶対に報道しない」という彼女の言葉を信じていたのだが、スクープ記事が出てしまう。
    親友に裏切られたと思う泉。
    しかし彼女はスクープ記事は自分ではないと言う。
    その証拠をつかむと言っていた矢先、親友が遺体で発見される。
    親友の言葉を信じなかった自分を責めながら、真実を追う泉。
    そして、たどり着いた真実の残酷さ…

    ”サクラ”の意味を知って、そういうことか…と。

  • 釈然としない終わり方
    大どんでん返しを期待してたけど残念
    刑事警察と公安警察、すとーかー殺人とカルト宗教

  • ストーカー被害届を受理しないで慰安旅行に行った警察署が非難されるが、果たして真相はどうか、の話。主人公の泉のその後が気になるので、続編も読んでみよう。
    やはり、柚月裕子の登場人物は魅力があるな。


  • 親友が自分への裏切りの烙印を消すと言って、謎の死を遂げる。自分が親友を信じられなかったばかりに、泉は警察事務員だか、事件に向かって行く。
    警察内部の知らなかった事実。ひとつひとつ真相に近づいていく。
    その真相を知った時、泉のとった行動は。柚月先生の作品はいつも物語にどんどん引き込まれて行く。
    それぞれ人物の心理描写が凄い。不条理な世の中、必ずしもスッキリとしない展開。でも主人公の泉の行動、決断には応援したくなる。

  • 3.5というところか。

    言葉の端々で展開が読めてしまうところが少々残念。そして、黒幕をにおわせておきながら、その黒幕が明かされるまでも少し長く感じた。結局、白日のもとに晒されないところが、「朽ちない」に繋がっているのかなと推測した。

    重厚さは無く、割とサラッと読めるものであった。帯やあらすじを見る限りもっと重たいものかと覚悟して読んだのだが、重い作品が続いていた私にはとてもちょうど良かった。
    途中、「カルト教団」の存在に逃げてしまわないようにと祈りながら読んでいた。なるほど、公安を持ち出すには必要な存在だったというわけだ。動機不明、意味不明に展開していかなくて安心した。
    とは言え作中の公安には賛同はできない。

    シリーズとして続いているようなので、その足がかり、踏み台になっているとしたら、期待は膨らむ。

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柚月裕子の作品

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