逝かない身体―ALS的日常を生きる (シリーズ ケアをひらく)

著者 :
  • 医学書院
4.29
  • (61)
  • (38)
  • (21)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 598
感想 : 77
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784260010030

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 12年間ALSのお母さんを介護し看取った女性の手記。
    これまではALS患者さん自身の手記を中心に読んで来て、そのほとんどが大変な病気の中でも前向きさ、明るさを感じられるものが多かったけれど、この川口さんの手記はいかにALSの介護がいかに大変なものかがリアルに伝わりました。困難な療養生活をいかに生きやすくなるかは、介護する側の覚悟と想いで変わる。
    ALSに関わらず、あらゆる介護に関わる人達に読んで欲しい一冊でした。

  •  神経難病ALSに罹患した母親の介護記録。著者の母は進行が早く、ALSの中でも、特に重篤な眼球すら動かせない状態に陥る。意識も感情も持ったまま、何の意思表示もできなくなるという、その病気の苛烈さに言葉を失う。呼吸も食事も排泄も当然装置にたより、ただそこで生きているだけの肉親の存在を、どう認めるか。
     病名はちがうが、おなじく神経難病の肉親を抱える者として、冷静には読んでいられない本だった。読んでいる際、何度も涙をこらえ、何度も答えをみつけた気がしたが、実際は、今後も何度も迷うことだろう。それでも、読んでよかったと思ってる。
     カバーは著者の母が亡くなった日の夕刻の写真だという。美しい。

  • 日本で暮らす母がALS(筋萎縮性側索硬化症)に・・・。当時著者は30代前半。イギリスでの駐在妻生活を捨てて、幼い子供を育てながら、妹ともに10年以上母親の介護を続けてきた女性による闘病の記録です。

    ずっと淡々と読み進められていたのに、終章に出てきた「いっぱいお世話かけてごめんね でもうれしかった ありがとう」という母親の遺書の言葉を読んだら涙が止まらなくなってしまいました。部屋で一人で号泣。

    この家族は母親に呼吸器を付けるか付けないかの決断を迫られた時に付けるほうを選んだのですが、そこから母親が死ぬまでの間ずっとその決断が正しかったのかを迷い続けます。ALSは悪化することはあっても良くなることはないので、呼吸器を付けることはある意味苦しみの日々を延長させることになるからです。自分たちは正しかったのか。仕事や家庭、色々なものも母親の介護の犠牲になってきたし。(妹は介護のために退職、著者は介護で別居生活を強いられたことも引き金になり離婚)四六時中目を離せない介護の大変さから呼吸器を外して母を殺そうかと思ったことすらあった。

    そういう著者家族の葛藤が、遺書の言葉を読んだらわっと自分の中に流れ込んできて涙が止まらなくなったのだと思います。命の終わりはどこにあるのか、本当に難しい問題だと思います。
    もし自分がもし同じ立場になったらどうするだろうという問いが、ぐるぐる頭の中を回っています。

  • とても体力が必要だったけど、時間をかけて読了。
    扱っている内容が重いのに、語り口と終わり方が爽やかでよかった。しかしたいへん考えさせられる内容が多くうまく言い表すことができない。
    最初に感じたのは当事者(患者の家族も含む)の葛藤と苦労、受容。たいへんなことだとは思っていたが、このようにリアルに書かれると百人百色ながら、ほとんどのひとが体験する(した)であろう介護、みとりの大変さを思わされる。回想形式でありながら、筆者が当時の揺れや正負問わない感情をしっかり書いているので臨場感を持ってよめた。
    大変な日々の中でも、患者の内面には豊かなものがあり、またささやかな幸せが家族にあること等を教えてもらえた。在宅介護あるいは生きることを選択することのよさと大変さをどちらとも伝えてくれていると感じる。筆者は母の死後にすばらしい選択をとれたと思えたのだろうが、これについては簡単に答えがでるものではないことが読んでいてひしひしと伝わってきた。
    難しい問題だから簡単には答えはでないし、それぞれの患者家族状況に適した選択があるのだということ。選らんだ以上それを受け入れるほかはないということ。
    ただ社会に生きる人間として、普段意識し得ない生活や病気があることを人に発信していくことや、よりよい選択ができるような選択肢・制度を整えるために動くことはしていくことができるかなと感じた。

  • GUEST 005/立命館 理事長・長田豊臣:スミスの本棚:ワールドビジネスサテライト:テレビ東京 http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/blog/smith/2010/05/post115084.html

  • 前半の状況はとても強くひかれ共感する。
    恐ろしいほどに現実であり、
    具体的過ぎて目を覆いたくなる。
    生命倫理を家族から見ると、
    感情的になってしまうので、後半は少し薄く感じた

  • ALSって知らなかった。当事者やその家族にならなかったら知らないことっていっぱいある。それは仕方のないこと。でも、そういうことってあるんだっていうことを知っておくべき。
    当事者や家族になっても、気持ちは固まらない。常に変化し続けるもの、身体の変化と共に。受け入れられること、受け入れられないこと、そして受け入れられないにも関わらずどんどん進んでいくこと、症状が。
    不毛といわれても、なぜって聞きたくなる。神様がもしいるのならどうして病気をこの世に創ったの?

  • うぅぅ、尊厳死に対して新たな一面を開いてはくれたものの、
    その考え方に沿うことは難しい。

    ただ、法制化してしまうことで、
    尊厳死を選ばない人に、
    生きることへの罪悪感を与えるかもしれないことはわかった。

    難しいなぁ~。

  • この本が時系列に書かれていない意味を考え無くてはならない。
    そこでは、同時進行で、あまりにも多くのことが起こり続けている。
    筆者の文体からか、時の流れを気にせずに読むことができる。
    すらすらと読んでいけるが、ふとこれがいつのことなのか考えると、
    時間が進んだり、戻ったりを繰り返している。
    描かれている重たい現実を、その描かれ方が如実に表しているように感じた。

    読んで、胸を打たれてしまった。この本について語る言葉を持たない。
    一つ。
    この本の奥付にはテキストデータの引換券がついている。
    こういう取り組みは、ケア/医学の分野にとどまらず、いろいろな場所に広がっていってほしいと思う。

  • 感謝。知らないことが体験できた。お金がなければ発症した後に生きていけないと考えていた。自宅介護はキット裕福な家庭であるのだろう?

    発症、進行の速さに驚く。
    描写、場面も心理も上手だと思う。
    介護は24時間、ボランティアでは勤まらない。それでも患者は幸福感、α波が出ている。人工呼吸器、自分では挿入管を選ばないだろう。生きる屍、それでも感情はある。介護はいつまで続くのか?⇒死を願っている?生命の尊さを本当に知る事になる。
    意思疎通ができなくなったときには、夫が決定権を持つことになる。障害者の家族の気持ちは普通の人には分からない。自分で決められないことで、ただ生きながらえることになった幸せ。

    標準的な介護 賞賛されても満足させることはない
    2章は部位別に解説しているようだ。これは実際に介護看護した、使用経験がないと分からないのではないかと思われる。使用当時の利点のみならず、執筆時点での最新情報も盛り込まれているようだ。
    同じにおいの幸せ。家族で同じ食事が取れるのはすばらしい。

    患者は鏡。良い結果が出たのは自分の考えていることが自分に返った結果である。
    3章はコミュニティーのつながりを作る話。
    身体が動かなくてもα波が出るということが理解できた気がした。
    葬儀
    今までの事を、ここで宗教に絡めてまとめるのかい?著者が今まで書いて事柄が、悟りを開くまでの修行のように思えてくる。

全77件中 31 - 40件を表示

著者プロフィール

NPO法人ALS/MND サポートセンターさくら会副理事長。
著書に『逝かない身体』(医学書院、第41 回大宅壮一ノンフィクション賞)、
『末期を超えて』(青土社)など。

「2021年 『見捨てられる<いのち>を考える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

川口有美子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×