- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784299013620
作品紹介・あらすじ
コレラ、ペスト、エボラ、コロナ……
人類を襲い続ける万余の感染症の謎を、作家はミステリーで解き明かし、癒してきた。
それは未来永劫続く人類の営みなのだ。――海堂尊(作家・医学博士)
パンデミックの恐怖が「謎」を生む――
今だからこそ読みたい、古今東西の傑作ミステリー8編!
古来より、人類は何度となく感染症の脅威に直面してきた。ミステリーの世界でも、始祖ポオの時代から、それは常に馴染み深いものとして身近に存在している。果たして「理知の文学」であるミステリーは、疫病をいかに描いてきたのか。新型コロナウイルスの流行する今だからこそ広く読んでほしい、コナン・ドイルから西村京太郎まで、古今東西の「感染症」にまつわる傑作短編アンソロジー。
エドガー・アラン・ポオ「赤死病の仮面」
国中に悪疫の蔓延るなか催された壮大な仮面舞踏会に、突如現れた仮面の男の正体とは?
アーサー・コナン・ドイル「瀕死の探偵」
感染症に侵されたという錯乱状態のホームズを前に、駆けつけた友人のワトスンは――。
フリーマン「悪疫の伝播者」
老猫院の寄付箱に入っていた不思議な品物。名探偵ゾーンダイクが科学捜査で謎に迫る。
マーキー「空室」
万博で沸くパリの旅館に宿泊したアメリカ人母娘。だが忽如として母親が消失してしまう。
西村京太郎「南神威島」
無医島に赴任してきた青年医師を待ち受ける奇妙な風習。やがて島に伝染病が発生し……。
皆川博子「疫病船」
平凡な母娘間で起きた殺人未遂事件に影を落とす、とある復員船を見舞った悲劇とは?
梓崎優「叫び」
疫病の蔓延する集落で発生する連続殺人。全滅必至の状況で、なぜわざわざ人を殺すのか。
水生大海「二週間後の未来」
新型ウイルスの流行で頓挫した殺人計画。あなたはステイホーム中にプランを練り直す。
感想・レビュー・書評
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千街晶之・編『伝染る恐怖 感染ミステリー傑作選』宝島社文庫。
感染症に関連する古今東西の傑作ミステリー8編を集めたアンソロジー。恐らく現在進行形の新型コロナウイルス感染禍を受けての刊行だろう。
春節前の中国の武漢で突如現れた新型コロナウイルス感染症は瞬く間に世界に広がり、世界経済を疲弊させ、各国政府の不甲斐なさとWHOの無力を知らしめることになった。YouTubeで新型コロナウイルスに感染した中国人が突如倒れる姿を目にした時は衝撃的だった。そんな感染症がまさか平和な日本でこれだけ流行するなど誰も考えなかっただろう。
感染症の恐怖は今も昔も変わらない。多くの作家が感染症を題材に様々な作品を描いている。小説ではなく、劇画であるが『ゴルゴ13』シリーズに、ウイルスに感染したゴルゴがタイヤの遠心力を利用して血清を作るという話が記憶に残っている。
エドガー・アラン・ポオ『赤死病の仮面』。ミステリーではなく、ホラー小説である。国中に流行り始めた赤死病。プロスペロ公は城を完全封鎖し、その中で享楽の日々を過ごす。城内の7つの部屋で催される壮大な仮面舞踏会に突如現れた異形の仮面の男。最後に明らかになる男の正体。
アーサー・コナン・ドイル『瀕死の探偵』。読んでいくうちに遠い昔に読んだ記憶のある短編であることに気付く。シャーロック・ホームズ・シリーズの1編。スマトラ伝来の感染症に侵され、生死の境目をさ迷うホームズの元を訪れたワトソン。ホームズがワトソンに依頼したのは、ある人物を連れて来ることだった。
フリーマン『悪疫の伝播者』。ソーンダイク博士シリーズの1編。江戸川乱歩の短編みたいな雰囲気の作品。老猫院の寄付箱に入っていた不思議な品物の謎にソーンダイク博士が迫る。
マーキー『空室』。経歴不詳の作家による短編ミステリー。エドガー・アラン・ポオ、アーサー・コナン・ドイル、フリーマンの短編よりも切れ味があり、面白い。万博で沸くパリの旅館に宿泊したアメリカ人母娘。だが、忽如として母親が失踪してしまうが、旅館の関係者も運転手も母親の姿など見なかったと言い張る。
西村京太郎『南神威島』。西村京太郎にこのような短編があったとは。女性問題で都会から逃れるように無医島に赴任してきた青年医師を待ち受ける奇妙な風習。そして、島で流行り出した感染症。
皆川博子『疫病船』。実の娘による母親の殺人未遂事件の背後にあった過去の悲劇とは。
梓崎優『叫び』。この手のミステリーは好みではない。エボラと思われる感染症が蔓延するアマゾンの集落で発生した連続殺人。犯人の目的は想像すら出来ぬものだった。
水生大海『二週間後の未来』。社内恋愛の相手が取引先の社長令嬢と婚約したことを知り、毒殺を企てた女性は新型コロナウイルスの流行により殺人計画を練り直すことに。
本体価格900円
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ホラーなのかミステリなのかわからないけど、色々な作家の話が読めて良かった。
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【収録作品】「赤死病の仮面」エドガー・アラン・ポー 訳/松村達雄/「瀕死の探偵」アーサー・コナン・ドイル 訳/深町眞理子/「悪疫の伝播者」R.オースティン・フリーマン 訳/佐藤祥三/「空室」C.H.マーキー 訳/伴大矩/「南神威島」西村京太郎/「疫病船」皆川博子/「叫び」梓崎優/「二週間後の未来」水生大海
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名前は知ってるけど読んだことはない作家さんが多くて、一気に読めるお得感がありました。
海外のミステリは、あまり合わないのか、ちょっとペースダウンしましたが、コナンくんの好きなホームズってこういう人だったのかと。
まさかのタイミングでホームズが読めてよかったです。
個人的には水生大海さんの『二週間後の未来』がおもしろかったです。
新型ウイルスの流行でリモートワークになり、計画していた殺人が実行不可能になるという話。
まさにここ数年の日本ですよね。
オンライン会議とか自宅でできる副業とか、リモートトラブルとか。
なんだかとてもリアルで、ぞくっときました。 -
古今東西の感染症を扱ったミステリ8選。
初めて読んだ作家もあって、それはそれで興味深かったが、ドイルの『瀕死の探偵』とかベタだし、ポーの『赤死病の仮面』って、ミステリですか? という突っ込み所はあったかなぁ。 -
COVID-19への対応で大揺れの世の中で、感染症とかかわりのあるミステリーの佳作7編を収録したもの。水生大海氏の「二週間後の未来」は、2020年に書かれたもので、大変リアル。西村京太郎氏の「南神威島」が特に面白かった。
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マーキー「空室」、アーサー・コナン・ドイル「瀕死の探偵」、皆川博子「疫病船」の順で心に残った作品。戦災や疫病など緊急事態の中で人はどうなるのか?どのように考え行動するのか、それこそ、その時にその人の人間性がわかるのではないか。どの短編でも葛藤が描かれている。
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エドガー・アラン・ポーから2020年までの感染症を扱ったミステリー集。
西村京太郎『南神威島』が印象深かった。 -
アラン・ポオの作品、初めて読んだかも?怖かったな。
ホームズは相変わらずぶっ飛んでいて面白い。
「二週間後の未来」。コロナ禍の現況とシンクロしていて、没入感があった。不気味な展開。
解説に載っている感染症関連のミステリーがどれも面白そうで、テンションがあがった。