- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309204789
感想・レビュー・書評
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またしても超名作!
ほんと泣ける!
しかしオレックが普通な感じで登場したのには戸惑った
結局ギフトはどうなったんだろう…
海辺の街の戦争 古書の番人 -
「西のはての年代記」三部作の二作目。
ル・グウィンが80歳近くなってから書き始めたシリーズで、若々しい知性とパワーに圧倒されます。
一作目から20年後、南の国アンサルの首都が舞台。
オルド人に侵略され、見る影のない荒廃した姿になったアンサル。
砂漠地帯で一神教を信じるオルド人は、武力に優れた民で、口承のみで文字を持たないのです。
アンサルの都は交通の要衝で、かっては大学や図書館でも有名でしたが、駐留するオルド人は文字は邪悪な魔物として、本をすべて水中に投じます。
ガルヴァ館に住む少女メマーは、オルド人の落とし子。
ガルヴァ館の娘だった母がオルド人の兵士に襲われて生んだ子で、もしゃもしゃの羊のようなオルド人の髪とアンサル人の黒い目を持っていました。
事情をよく理解していない幼い頃から隠された図書館に出入りし、「読み手」として「道の長」の教えを受けながら成長します。
お告げの家であるガルヴァ館はアンサル人の精神的な支柱だったのでした。
前作の2人がすっかり大人になって登場。
著名な存在となっているオレックとグライはオルド人にも一目置かれ、民人の尊敬を集め、反乱の指導者に担ぎ上げられそうになりながら、慎重に場を選んでいきます。
一途なものを秘めたメマーはまだ男の子のようでさばさばした良い子だし、才能溢れるオレックとりりしいグライの夫婦が素敵。
緊迫した情勢の中でも次第に、親のないメマーと彼ら(それにハーフライオン!)が仲良くなっていくのは切ない幸福感があります。
一作目の「ギフト」では家に伝わる超能力が問題でした。
家を継ぐようなギフトではない才能のあるオレックが詩の語り手として自らの人生を見い出した今、民族全体が抑圧された状態で育った17歳のメマーは、お告げの家の役割を知るのです。
アイルランドや古代ローマを合わせたような構造の世界ですが、お告げ(ヴォイス)のファンタジックな意味合いはル・グウィンならでは~圧巻です。
前作の民話的でもあり荘重でもある雰囲気とはまた違って、社会が変わっていく活気と希望があり、グウィンにしてはわかりやすい方の作品といえるでしょう。
オルド人も一枚岩ではなく、アンサル側にも考えを異にする色々な人がいる…
安易な押しつけや暴力への根強い「NO!」の意志が感じられます。 -
主人公メマーの強さに涙
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現代も本や知識は大切にされている。でも、どのような本なのか?、どのような知識なのか?、は大きく違っている。
本も知識も多すぎるので、本当に必要な本も知識も見つけられない。 -
ル=グウィンはやはり素晴らしい。敵対する民族が共に生きていくために大事なこと、お互いを知ること、敬意を持つこと、そんなことかな。受け継いでいくことについても、一世代受け継がれなかったら次の世代はそんなことがあったことさえ知らない。たくさんのことを考えさせられました。
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「西のはての年代記」最高の作品だと思います。静かに進む物語の雰囲気、アンサルの町ももちろんですが、誇りを保ちつつも相手を受け入れる力を持つ二人、道の長とイオラスが好きです。
自分がわからないものを恐れたり憎んだりするのではなく、まずは知ろうとすること。その手助けとなるのが、言葉や本の役割なのだ、と思わせてくれる一冊です。 -
本、言語が伝えていくものはいずれ古めいてくるが、上書きはされない。
受け継がれていくって、大事なことだと思った。物語にしたって音楽にしたって。思想だって、そう。
どこを向いて生きていかなきゃならないかは、人それぞれ。
目を閉ざす時期があってもいい。
オレックとグライが落ち着いて力強い大人になっていて、いいなぁ。
やっぱり色々な経験が人間を深くしてくんだな。