- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309206783
感想・レビュー・書評
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2022年、フランスにイスラム政権が誕生した…という小説なのだけど、フランスにイスラム政権が誕生したらどうなるかという描写より印象に残ったのは、主人公のしょうもなさ、、。
イスラームの超越神が強いというよりも、主人公の、淡白なような調子のいいような恋愛観。この主人公は教養ある大学教授で文学を教えているんだけども、そういうのも別にイスラームの超越神というより性的な関心の前では特に意味がないということが言いたいのかなと思った。
この本でイスラームは自由と対比される服従の体現となっている。禁欲に挫折する主人公。服従により得る「幸せ」というか資本主義的な努力をなにもしない一夫多妻的な「幸せ」を享受することの楽さ・流されやすさというのがこの本のひとつのテーマだったのかな。上記のような教養あるけどしょうもない主人公の視点を中心に、高尚を装ったすごく俗人的な発想な角度で受け取るイスラム教だと思った。
とりあえず、全体に通底するしょうもないかんじ。でも、高尚っぽさを装ってるかんじ。ホント、昔、高校生のときに、おなじウェルベックの「素粒子」を読んで感じたのが思い出された。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
もうね、ウエルベックを語るときに資本主義とかイスラムとか言うのナシね。ウエルベック?読んだよ。書かれている内容については性描写しか覚えていない。以上。
というコミュニケーションでいいのではないか。と思わされた。ユイスマンスもそうだが、ルソーから受け継がれる退屈や不安、虚無に対して引きこもるという高貴な態度は、社会との折り合いのために外に出るしか無くなる。そうなると見出されるのは宗教的な服従や隷属で、そこに救いを見出すかどうかが改宗のポイントなのだが、その整合性が延々と語られる本文はさすがに繊細な配慮で書かれている印象ですが、引きこもる、宗教に走るのとは別の可能性を見出したいところ。話題性とか悪意という意味では、イスラムへの改宗の場面は面白いところなのかも知れません(そういう意味では読むまでもないのですが)。 -
『地図と領土』に続き読了。
ほとんど情熱を失っているユイスマン専門家のフランソワ
その研究の完了とともにもはや知的生活への未練なく
人生への心地よい諦念とともにイスラム化を受け入れる。
テーマとしては社会性は高くページターナーであるが、少し単線的で
個人的には『地図と領土』の方がポリフォニックな感があり好きかも。
そういえばさかしま未だ読んでなかったな。 -
ウェルベックの服従はイスラムへの西洋的な固定観念にまみれている部分が多く、ヘイトに近いような嫌悪感をもよおす作品だった。どう読んでもイスラム政権が与党になったフランスはディストピアとして描かれているし、常に表れている男性的すぎる視点もいささか虚しい。読み物としてはとても面白いけれど…
ただ、途中に出てくる”人間と市民の権利の宣言”の引用は好きだ。
”政府が人民の権利を疎外する場合には、叛乱は、人民とどの市民についても、もっとも神聖なる権利でありもっとも欠かせない義務である” -
アラビア語において、イスラーム(服従)とサラーム(平和)は同じ語源から生まれた言葉であるという事実は印象的だ。絶対者への帰依は性にも政にも絡む話だが、本書の予言はイスラム教だけでなくキリスト教と民主主義が両立する現代西洋への批判も言外に込められているように思えてくる。しかしながらそうしたポリティカルな装いの裏に淀む、知識人層を中心とした人間の歪みを描くのがウェルベックの真骨頂であり、そうした意味では帯や解説で政治的文脈を強調する日本の売り出し方はウェルベックの皮肉対象として見事に成立してしまっている。
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ウェルベック「服従」http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309206783/ … 読んだ。なんだこれコメディ?男って本当バカ。なんでこれが話題なの、いや話題作や受賞作を読むわたしが悪いか。みんなバラード読んでないのかなあ。バラードのほうが社会的にも心理的にも現実味があるしおもしろいぜ(つづく
まあイスラム云々はおいといて(あれはただの比喩でしょ)経済充足VS知的欲求ならまあアリかもだけどそんな社会はいずれ崩壊する(あ、それが目的か)でも女性が知力剥奪され召使と娼婦以外禁止、そんなことが現代の欧米で実現するかあ?ま一番実現しそうなのは日本だという興味はあるな(おわり
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「服従」は装幀がいい、絡め取られる感じが出てる。実は衝動買いの原因は殆どジャケ買い的な。ただ訳がかなり。。うーん。PCの電池切れとかアルコール抜きビールとか戦時中的な訳語が出てきたりプライヴェートとか日本語上バ行表記スタンダードな単語にヴ多様で目障りだったり。初訳本の素人なの?
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「服従」へ判っているふうなコメント多いけどあれはだから耄碌ジジイ(団塊世代、またはシンタロウ種族)の妄想コメディだってば。コメディと言って差し支えあるならフォビアに言い換える。ゲラゲラ笑って読むのが大人の嗜みよ♡ -
いわゆる「知識人」の間でも本作はあまり評判がいいとはいえない。けれども、本作と一対一で向き合ったとき、その勇気を擁護せざるをえない。
もっとも、本作を支えているのは、ミシェル・ウエルベックの小説すべての主人公が抱えている「孤独」である。彼らが世界と一対一で向き合ったとき、ひとつの可能世界が見えてくる。それは「妄想」にも似ているけれど、ひとつの論理的帰結である。本作の裏側に悪意はない。書く側は真剣だ。でなければ、フランスでイスラーム系大統領が誕生するまでのプロセスをあれほど執拗に書き込むだろうか。
ヒトラーの妄想をも思い出す? 然り。けれども、政治や歴史においては否定されるべき妄想も、芸術は少なくとも、擁護すべきとはいえないまでも、妄想の最後の避難所を用意しておくべきだ。本作のもつ過激さがある限り、芸術は養われる。 -
2022年仏大統領選。投票所テロや報道管制の中、極右国民戦線のマリーヌ・ルペンを破り、穏健イスラーム政権が誕生する。シャルリー・エブド事件当日に発売された新たなる予言の書。
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帯いらない。製本があまいのが残念、ページがきれいに奥までひらけない。(ウエルベック関係ない)
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